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引っ越し先は、海は見えるが海岸からは少し離れている大きな家々が建ち並ぶエリア。ゲートがあり、警備員さんが常駐している住民しか入れないエリア。
(日本にこんなところがあるなんて)
このエリアは電線が地下に埋められ、道路脇には桜並木か銀杏の木がトンネルのように囲んでいる。
ジャンプしても中を見ることが出来ないくらいの高さのある塀の家、建物より大きな庭がある家、何台も車が置けそうな車庫がある家、プールやバスケットのゴールやアスレチックが置かれている家などが並ぶ。いわゆる豪邸といわれる家々が立ち並ぶ場所。
結はアパート暮らししかしたことがなく、自分の部屋を持ったことがないため、口がパカーンとアホのように開け、キョロキョロと色んな家をチラリと覗く。
(住所は……ここらへんかな?)
スマホのナビに案内され新居周辺に辿り着き、母から送られてきた新居の写真を確認する。
(あ、あれかな?)
大きな庭に大きな二階建ての家。
家は白をベースにした外装でライトアップがされている。
(とりあえず、インターホンを押してみよう。)
インターホンを押すとメロディが流れてくる。
(ん? ピンポーンじゃないの?)
「はい?」と男の人の声が聞こえてくる。
(お母さんの再婚相手さん? なんかドキドキしてきた!)
「えっと、今日からお世話になります。佐藤です」
「あ~はい! 待っていたよ! ゲートを開けてドアのところまで来てくれる?」
「はい、わかりました」
門を開け、玄関に向かっているとジャグジーとプールらしきものが見えてくる。
こんな豪邸もプールもドラマや映画などでしかみたことがない。
夢でも見ているのかと思い、結は自分の頬を抓ってみると痛みを感じる。
(うん。やっぱりこれは現実なんだ……)
ドアの前に着き待っていると、ドタドタと走ってくる音が聞こえ、ドアを勢いよくあける住人。大きなドアの迫力で驚き、尻もちをつく結。