7-4
(目の前に見える景色は海と星空。
聞こえてくるのは波の音と風の音。
感じる香りは沈丁花の木々の香り。
そう……ここは。
海近くにある公園。
来月になると薔薇の公園になる、そんな場所。)
結はここで何をしているかというと……。
「結ちゃん……あ、あの……好きです。私の彼氏になってください!」
結はクラスの女子から告白を受けているところである。
結は昔から異性より同性にモテる傾向がある。
女子から告白される時は必ず「好きです。私の彼氏になってください」というセリフを言われる。
結としては男性のように振舞ってはいないし、だからといって女子力は欠片もないので女子っぽいかと言われるとそこも難しいところだ。結は来るもの拒まず去るもの追わずという性格で自分から人に近づくということはあまりない。陽という例外を除いては。
しかし、寄って来たものには優しく接し、距離も相手がどんなに近づこうが拒絶をしない。そんな結は男女ともに勘違いをされることが多い。人間都合のよい者で……拒絶しなければ受け入れているとか肯定されていると勘違いをし、最後には自分に好意があるとまでいってしまう者もいる。
当の結は、好意がある訳ではなく普通に接しているし、相手に興味があるかというとそれもなく、拒絶したり否定したりしないのは人には個性があるので十人十色だから誰のことも否定したり拒絶をしないだけである。だから肯定もしていないことになる。
「鈴木さん。ありがとう。気持ちはとても嬉しいよ。でも私、好きな人がいるんだ」
結はニコッと微笑む。
鈴木さんは小さく頷き、結にハグをしてから走っていってしまう。




