6‐10
「ず~る~い~! ケイくん、アタシにもあ~んして。あ~ん」
星は目を閉じ口を大きく開けて待っている。
「はい! あ~ん」
ケイは星におかずを運ぶ。
星はモグモグと食べて「きゃは! ケイくんの愛を感じる~」と幸せそうに微笑む。
「あのさ、それは俺が作ったお弁当なんですけど? なんかおかしくね?」と守はツッコミを入れるが星は完全無視をする。
「ありがとう、ケイくん! 今度はアタシから! あ~ん」と星はケイが作ったおかずをケイに食べさせる。
ケイはモグモグと食べて「ありがとう、星」と微笑む。
星がやりたかったことは要するにケイのお弁当を食べたいというより、食べさせごっこな訳でお弁当の中身は気にならないということである。
折角、ケイと守が早起きして作ったお弁当なので味わってほしものです。
「あん! もう! ケイくんのお嫁さんになって、毎日美味しいご飯を作りた~い」
星はケイの腕にギューっと抱き着く。
「お前さ、料理とかしたことないだろうよ」と守は呆れた様子を見せ、星は「料理なんてやればできるもん!」と守を睨みつける。
守はワザとらしくため息をつき「それより、こんな公共の場でそういうのやめろよな」と言うと、星は「なんの話?」と返す。
「お前のそのケイに押し付けている脂肪の塊のことだよ」
「きゃ! マモのエッチ! キッモイ! 嫌い。プンっだ」
星は胸にケイの腕をギュッと挟み込んでいるのだが、ケイは結がお弁当を食べている姿をガン見しているため何とも思っていないのである。
「え? 俺が悪いの? なんか違くね」
守は誰かにフォローをしてほしくキョロキョロと和周りを見渡すが全員に見事に見て見ぬふりをしている。
星と守のこういう小さな喧嘩はいつものことで巻き込まれると大概は巻き込まれ事故のようになるのでみんな関わろうとしないのだ。
「なんでいつも無視すんのさ。な~コウ~」
守は静かに食事をしていた光優の肩に絡みつく。
「マモ、ウザい。今、飯食ってるんだけど」
「美味しそうだな。ヒナの愛妻弁当か」
守は肩に絡んだまま、光優が食べているお弁当のおかずを一つ取り食べる。
「おい、誤解を招くようなことを言うなよ」
「だって、ヒナとコウのお弁当はいつも同じ中身じゃん。うん、ヒナは料理上手だよな」




