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(おぼろ雲が広がる空。
聞こえてくるのはカチャカチャというキーボードを打つ音。
感じる香りは……何か茹でているような匂い?
そう……ここは。
教室の中。
今は授業の真っ最中!
みんな静かにホワイトボードに書かれた授業の内容をペンタブを使ったりキーボードを使ったりしてタブレットに書き込んでいる。
この授業が終わればお昼休み。
それにしても……この匂いは何だろう?)
教室の窓は少し開いており、何かを茹でているような匂いと白い湯気のようなモクモクしたものが視界に入ってくる。
(カフェテリアは別館だし、理科系の実験を外でやっているとか? それとも中庭で調理実習? にしては声とか聞こえてこないし。う~ん。なんだろう? 気になるな)
キーンコーンカーンコーン。
授業のチャイムが鳴りお昼休みの時間となる。
チャイムが鳴り終わった瞬間、ケイは教室の窓を開け中庭にいる用務員のおじさんに手を振りながら声をかける。
「おじさ~ん!」
(おじさん? って誰? ケイくんは何を?)
「おお! ケイ! 出来ているよ! ホッカホカのが」
(ん? なんの話だろう?)
「ありがとう! 今行くね」と窓を閉めたケイは、ニコニコしながら結の席の前に立ち「行くよ!」と結の腕をつかみ、強引に連れ出す。
「ちょ、ちょっと」
結の視界に日和が入り、手を伸ばし助けを求めるが日和は微笑みながら手を振る。
「日和! ちっがーう!」
結は他の二人に助けをと光優と陽に目線を送るが、光優はニヤニヤしながら頑張れと口パクしながら手を振り、陽は結を一度見るが興味がないようで背中を向ける。
(みんな、冷たいよ~)




