5‐11
「あ~アイス美味しかった! 陽くんありがとね」と結はニカっと笑いピースをすると陽もピースを返す。
「う~ん。そろそろ、あの二人呼びに行く? それとも無視して先に食べちゃおっか?」
結は立ち上がり守と光優がいる方に振り返ると。
バフッ。結は振り返った瞬間、後ろに立っていた守の胸に顔をうずめてしまう。
結が愛情表現で顔をうずめてきたと勘違いした守は結を強く抱きしめる。
「ごにょごにょごにょ」
結は守に力強く抱きしめられ声が出せないでいる。
「姫はみんながいるのに大胆だな。でもそんなところも可愛いよ、俺のお姫様」
守は結をギュッとしたまま結の頭にキスをする。
「ごにょごにょごにょ」
結は苦しくて手をバタバタとさせている。
「なんだい? そんなに嬉しいの? 仕方ないな。もっと強く抱きしめてほしいんだね?」
守は更に結を強く抱きしめる。
「マモ」と結の状況を理解した陽は守の手を掴む。と同時にケイは「僕の結に触れるな」と守を突き飛ばし、結を腕の中に包み込む。
「いって~な。お前、誰だよ」と守は立ち上がりケイを殴りかかろうとするが、光優が両手を広げケイと守の間に入り込む。
「はい、そこまで」
光優は守の拳を受け止めギュッと握り、手を下ろさせる。
「先ずは紹介ね。守、その金髪の彼は先週俺らのクラスに転校してきた、女性に優しい紳士のケイくん。で、ケイくん、結を姫だと思い込んでいるキモイ赤髪野郎は隣のクラスの守。今から楽しいお花見をするんだよ。二人ともそんな顔しない、喧嘩もなし。ってことで、はい。仲直りの握手。なんならハグでもいいけど」
光優は睨み合っているケイと守に高圧的な視線を送る。
ケイと守は状況を理解したのか、睨み合いを止め無表情でお互いの顔を見合わせる。
「さっきは突き飛ばして悪かった。変質者と勘違いしてしまって」
ケイは結を片腕で抱きかかえながら、もう片手を守の前に差し出す。
「俺もやりすぎた、姫……ごめん」
守はケイと熱く固い握手をする。
二人の友情を祝福するかのように大きな風が吹き、桜の花びらが舞い踊る。
(なんか色々あったけど楽しいお花見になった。今日まで当り前のように一緒にいる仲良しのグループに新しいメンバーが加わる。それがこの先にどんな変化があるのか想像もできないけれど、みんながいつも通りに笑っているそんな当たり前が続けばいいなと思った。)




