5‐6
「そうだ、ケイくん」
「なあに?」
鈴は指切りという意味で小指を出しながら「結の恋の邪魔だけはしないでね、約束よ」と言う。
ケイは鈴の小指を不思議そうにみて首を傾げながら「それはなあに?」と聞く。
ケイたちの生活には指切りというものがないのだ。
「これは指切りっていって、約束を守るための儀式みたいなものなのよ」
ケイも小指を出し、鈴と指切りをする。
「そうなんだね。約束をするときにやる儀式か、OK。覚えたよ。鈴ちゃん、ありがと」
ケイはありがとうという気持ちを込め、結母の頬にキスとハグをする。
(ケイくんにとってキスもハグも普通なんだ。って、そんなことより手伝ってよ。
でもおかあさんとも仲良くはなってほしいから……このままにしておこう。
それより私は愛を込めたお弁当作り! 頑張らなくちゃ!)
結は鼻歌を歌いながらお弁当作りをしていると、ケイがニコニコしながら横に立つ。
「結、楽しそうだね」
「え? そうかな?」
「だってニコニコして鼻歌を歌っているよ」
「え? 歌ってた?」
「ん? そっか。自然にね。そっか、そっか。うん、うん。」
ケイもメロディを口ずさむ。
「ケイくんこそ、楽しそうだね」
「だって大好きな結が楽しそうなんだよ。そんな君を見ていたら僕だって楽しくなっちゃうよ」
ケイはキラキラの笑顔を見せる。
(そういうのは反則だ。そんな笑顔でそんなセリフ……誰だって……って違~う!)
「ケイくんはそういう恥ずかしいことを簡単に言うからこっちが恥ずかしくなるよ」
結は少し恥ずかしそうに上目遣いでケイを見る。
ケイは褒め言葉が嬉しくニヤニヤしながら結の頭を優しく撫でる。
「可愛い、可愛い。なんて愛おしいんだ」
ケイはケイなりに一生懸命に大人しくしていたが、結の可愛さに負け結に抱き着こうとする。
結は慣れたのか、すまし顔でケイがハグしようとするのを華麗に避ける。
「あれ?」
「も~。いいから準備、準備!」
「は~い」




