~Parasailing~
「ねぇ、結。あれみて! 夕日だよ。きっと下から見る景色とここでみる景色は違う気がするね」
「言われてみれば、見る角度で景色って変わるものね」
二人が見ている景色は。
昼の真っ青な青色と夕方のオレンジ色のグラデーションが重なり合う空。
月がそっと静かに輝きだし、宵の明星が我先にと一番に輝きだす空。
地平線に太陽が反射して普段現れることのない影の太陽がまるで背伸びをしているかのように一直線上に並び、光の道が現れる。
この景色は結たちがいる場所からしか見えない景色。船がある場所からは正面に山が聳え立っているので夕日の光のカケラがみえるかなというくらいの景色になっている。
今見ている景色は二人だけしか見ていない特別の景色なのだ。
「僕ね、思うんだ。同じ景色でも一緒に見る相手によってみえる景色は違ってみえるかもしれないって。だから僕にとって結と今一緒にいてみている景色は今まで見たどの景色よりもステキに見えるし、ずっとこのまま時間が止まっちゃえばいいなって思うくらい、最高の時間だったりするんだよ。結、一緒にいてくれてありがとう」
「こちらこそだよ。今までみたことがない景色をみせてくれて、ありがとう、ケイさん」
ケイの眩しいくらいのキラキラした笑顔につられ、結も満面の笑みを返す。
(ケイくんの笑顔もそういう恥ずかしいセリフを言っちゃうところも嫌いじゃないけど、やっぱり照れちゃうよ。)
(ケイくんの言うように景色って一人で見るのと、誰かとみるのでは違うかもしれないって思った。夕日なんていつもみてるし、意識なんかしたことはない。ただ当たり前のようにある景色の景色の一つだと思っていた。でもよく考えたら思い出になるような景色には必ず誰かが居たり、その場所を鮮明に覚えていたりする。言葉もそうだけど印象に残るくらいの景色、思い出って色んな形で自分の記憶や未来に関わっているようなそんな気がした。家族が増えて世界が一変した。今までの生活も時間の流れももちろん嫌いじゃないけれど、今まで経験できなかった、見ることが出来なかった世界をみられるかもしれないということがすごく楽しみだなって思った。)




