3‐8
「あ~ん。パパ」と甘い声でピーターの腕をギュッとするエマ。
ピーターはエマの頭にキスをし、優しく撫でる。
エマからは大人の色気がなくなり甘えん坊の子供のように、デレデレになった猫にでもなったかのようにゴロゴロと懐き可愛らしくなっている。
「久しぶりだね、エマ、ケイ。そしてはじめまして、結ちゃん。僕はピーター。結ちゃんの父親だよ」
キラキラの眩しい歯と笑顔を見せるピーター。
「は、はじめまして。結です。よろしくお願いします」
結は前屈をするかのように深々とお辞儀をする。
「よろしくね、結ちゃん」
(やはり、義理父! ケイくんと双子のように似ているもんね!)
「そうそう! 話は戻るけど。楽しいのも、賑やかなのもいいよ。でも煩いとか、人様に迷惑になるようなことは……僕は好きじゃないな」
ピーターはニコニコしながらケイとエマを見る。
ケイはピーターの顔を見ずに無表情の低い声で「気を付けます」と言う。
「ごめんなさい……パパ」
エマは涙を流しながらピーターの腕を強く握りしめる。
「わかればいいんだよ」
ピーターはエマの頭をポンポンと優しく撫でる。
「でも聞いて、パパ」
「なんだい?」
「ケイったら、なんか私に冷たいのよ」
「そんなことないだろう」と言いながらケイの様子を窺うピーター。
「今だって、結を抱きしめているでしょ」
「兄妹が仲良しなんてステキじゃないか。エマはヤキモチを焼いているのかい」
「違うわ、なんか私と結の扱いが違いすぎるのよ」
「そりゃあ、結ちゃんはケイの王子様だから、特別扱いにもなるさ」
「父さん、その話は……」
さっきまでポーカーフェイスを保っていたケイの表情が曇り始める。
(私がケイさんの王子様? どういうこと?)
「あ~例の……。なら納得したわ」
(エマさんも何か知っている?)
結が「あの……何の話ですか?」と三人の顔をキョロキョロと窺うが、ケイは顔を背け、エマとピーターは無言で微笑んでいる。
「結は気にしなくていいんだよ! それより海に行こう! ね!」
ケイはいつもの優しい笑顔になったかと思うと、強引に結の腕をつかみ部屋から出ていく。
「え、ちょっと待って」




