2-7
コンコン。
結母は結の部屋をノックして、ドアをそっと開ける。
「結、開けるわよ」
結母がドアを開けると、そこには同じポーズで丸くなっている結とケイがいた。
「あらあら、仲良しさんね」
結母は息の合った行動をしている! と勘違いをし微笑ましく二人を見つめる。
結はスッと立ち上がり「違うの! 全然仲良しなんかじゃないから!」と声を荒げる。
「あらあら。結、お兄ちゃんをいじめちゃダメでしょう」
(え? どういうこと?)
ケイは体育座りのまま顔を上げ涙をポロポロと流している。
(え? え? どういうこと? 何が起きているの?)
結はわけがわからず、ケイの両肩を掴みユサユサと激しく揺らす。
「結、いいかげんにしなさい!」
基本、怒ったことがない結母の口調がいつもより少し低くなっている。
(ああ、そうですね、私が完全に悪者でしょうね。この構図は……。)
結は慌てて「おかあさん、あのね。これはね」と経緯を説明しようとするが、結母は「ケイさん、ごめんなさいね」と言いながらケイを抱きしめ頭を優しく撫でている。
「だからね、お母さん。私の話を聞いて?」
結の言葉に耳を傾けない結母。
それは当然だ。
結母はケイのお母さんになってからまだ一日も経っていない。そのため、結のことよりケイのことが今は最優先になっているのである。
母の気持ちをしてはせっかく出来た息子から嫌われたくないと心理は当然のことである。
ということで結は幽霊のように存在を忘れられ……。
まあ、そもそも……結はアホは発言が多いため話を聞かれないことが多々発生しているのでこの光景は日常茶飯事とも言えなくもない。
「ケイさん、起き上がれる?」と結母がケイに尋ねると、ケイは顔を伏せたまま頷く。
「結、ケイさんと仲直りしなさい」
結母は眉を八の字にして呆れた表情で結を見る。
やっと存在を認知されました! よかった主人公!
「え? だから、私は何もしていないって」
認知はされましたが……結果こうなった経緯は話せていませんので、結のその言葉は母には残念ながら届かず。
結母はふぅと大きくため息をつき「ほら、仲直り」と結の顔をジッと見つめる。
ケイは顔を伏せたまま片手を差し出す。
「ケイさんは優しいわね。結も手を出して、握手して仲直りしなさい」




