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「いや、まさか。僕は父がデザイナーだからその関係でそういう場にいったことがあるだけだよ。僕は一般人だよ。ね、リアム」
「ああ、誤解を招くようなことを言ってしまったね。そうケイは一般人だけど現場に来ることがあったということだよ。一緒に仕事をしていた訳ではないよ」
リアムとケイはぎこちない笑顔を見せる。
キーンコーンカーンコーン。
授業のチャイムが鳴りお昼休みの時間となる。
リアムの席にはお昼ご飯を誘おうとする取り巻きたちに囲まれていたが、ケイの席にやってきて、机をバンと叩き、ケイに声をかける。
「ケイ、ランチタイムだ。学食というのを食べてみたいから連れて行ってよ」
「リアム、ごめん。今日はちょっと……」
今日は結が久しぶりに学校に登校したため、ケイは結とお昼を食べようとしていたのだ。ケイが結の席に視線を向けると結の姿が見当たらない。席を立ちあがりキョロキョロと教室を見渡しても結の姿はない。
「ケイ、結を知らない?」と守がケイに声をかける。
「僕も探しているんだけど」
「ケイ? 誰かを探しているの?」とリアム。
「えっとね」
「ケイくんは転校生とランチに行って来たら? 初めての場所で一人は寂しいものよ」と日和。
「ああ、そうだね。ありがとう」
「結のことは私たちに任せて」
「よろしくね」
ケイはリアムと一緒に学食へと向かう。
学食の見た目は現代風だがメニューが昔ながらというのもあり人が疎らで穴場スポットともいえる場所なのだが、リアムの噂を聞きつけた生徒たちで溢れかえっていた。それなりに空気を読んでか距離は保ってはいるが、熱い視線は送ってくるのでケイは羽織っていたパーカーのフードを深めに被る。
「ケイ、何がオススメかな?」
「僕もはじめてなんだよね。ここは無難に日替わりランチかな」
「OK! それにしよう」
ケイとリアムは学食の日替わりランチを頼んで二人席のある外のテラス席で食事をする。食事をはじめると取り巻きたちもいなくなっていった。
「ところで、結って誰?」
「結は僕の妹だよ。最近、父が再婚したんだよ」
「ピーターさんは恋多き男だね」
「僕からするとそういう感じじゃないけど、そう見えるよね」
「兄弟って何人だっけ?」
「姉のエマと弟のルカ、妹の結に四人になったね」
「一人っ子が三人も兄弟が増えるってどうなの?」
「そうだね、僕らはそれぞれの時間も大事って考え方だから一人っ子でも四人兄弟でもあまり変わらないかな」
「へぇ。じゃあ兄弟が五人でも問題ないってことだね」
「そうだね」
「ふーん。そっか」
「え? リアムはエスパーなの? 鈴ちゃんとピーターの間に子供が? 弟かな、妹かな? 楽しみ♪」
ケイは授業が終わったと同時に結に声をかける。昼休みに結を見失ってしまったのでいなくなる前にと行動に出たのである。
「結、一緒に帰ろう」
「うん」
(結の表情は暗いまま。家ではそれなりに目を合わせてくれるけど学校では下を向いたまま会話をするようになった。)
「結」と日和が声をかけてくる。
「また明日ね、日和」
結は日和の顔を見ることなく去っていく。ケイは日和に笑いかけるが日和は今にも泣きそうな表情で手を振っている。
(そういえば、リアムは?)
ケイはリアムを探すが見当たらない。
(僕も初日はオリエンテーションがあったからそれかな? いないから挨拶なしで帰ってもいいよね。)
ケイと結が家に着くと引越し業者が出入りしているのがみえる。
「これはどういうこと?」
「デジャブなんだけど」
「あ、でもよくみて! 荷物を入れているから家具を増やしたとか?」
「確かに業者は引越し屋さんだけどね」
「なんだか紛らわしいよね。いやあ、ビックリした」
「もしかしたら家族が増えたとか? なんてね」
ケイと結は会話をしながら玄関に入ると「おかえりなさい」という女性の声が聞こえ、ケイと結はハグとキスで出迎えられる。
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