2‐6
「約束してください。もう二度と、キスはしないと」
結は人差し指を口にあて内緒のような仕草を見せ、ケイを上目遣いでじっと見つめる。
ケイは結の顔がおねだりするワンコ(最高に可愛い)のように見え、ハグしようとするが結の拳がそれを阻む。
ケイは頬をプックリと膨らませ「でも挨拶だよ? みんなするよ?」と子供が駄々を捏ねた様に言うが、結は大人な冷静な態度で返す。
「それは海外での話ですよね。日本にはそんな風習はありません」
「う~ん。挨拶を否定するの?」
ケイは首を傾げキョトンとし、本当はわかっているのにわからないフリをする。
「キスがなくても挨拶は出来ます」
結は無表情で淡々と話す。
ケイは目をウルウルさせて結を見つめながら「僕はキスがないと落ち着かないんだ」と少し悲しそうな声になる。
「そんなの知りません。どうでもいいです」
「結は僕が嫌いなの?」
ケイは涙をため、今にも泣きそうな表情をみせる。
先ほども言いましたがケイは『可愛いは正義』の考えを持っているので可愛くすれば良いと勘違いしているところがある。
しかも日本人は優しい人が多いと思っているところもあり、究極の選択をさせると気を遣ってくれることも理解していたりする。
『好き?』だと曖昧な答えを出す可能性が高いが
『嫌い?』だと慌てたり否定するというか、そんなことないとか言って誤魔化して気を遣う可能性が高かったりする。
そしてその効果はというと……
「ケイさんは嫌いじゃないですが、キスは好きな人とするのが日本という場所であり風習みたいなものです」
とケイの言動に流されそうな主人公がここに……。
「僕は結が大好きだよ? だからキスしていい?」
ケイは最高に可愛いと思っているおねだりするワンコ、目をウルウルのキラキラさせ上目遣いで見るというスキルを使って見せる。
ちなみにこのスキルは取得したばかりなので上手に表現できずに……結の目には最高に可愛いポーズではなく、泣いて縋るヤバい奴として映っている。
そのため結のケイを見る目はとても冷ややかである。
「好きというのはお互いがという意味です。だからダメです」
「結は僕が嫌いなんだね」
「だから……」
ケイは俯きながらベッドから降り、床で顔を伏せたまま体育座りをする。
「ケイさん? ケイさん? あ~もう!」
ケイは両肩を掴みユラユラと揺らされるが反応をせず、頑なに丸くなったままの体勢を取る。
「もう、どうしたらいいのよ」
結はどうしていいかわからず、ケイと少し距離を取った場所でケイ同様に床で顔を伏せたまま体育座りをする。




