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「あれ? 帰ってきたのに、誰もおかえりをいってくれないのかい?」
「ピーター、実はね」
ピーターは鈴から事情を聞くと少し考えてからテレビの前に立ち、大きく両手をたたく。そして三人の視線を一気に集める。
「今までは鈴と結のルールがあったかもしれない。それは守るべきかもしれないけど、僕らは新しい家族だ。だから新しい家族のルールがあってもいいと思う。そこで僕は父親特権を発動しようと思う! 先ずはケイ!」
ケイは返事をしないが、ピーターをじっと見ている。
「ケイにはこれをプレゼントする」
ピーターは紙袋から小さな箱を取り出し、ケイに渡そうとするがケイは受け取らない。ピーターは箱の中に入っていた香水の瓶を取り出し、ケイの頭の上に香水を振りかける。
「げほげほ、何するんだよ」
「この香り、覚えてないか?」
「……これってもしかして」
「そう。ケイがまだ小さかった時に気に入ってつけていた香水だよ。結との思い出の香りだろう」
「どうしたの、これ」
「香水事業も十周年! という理由で復刻させたんだ。気に入ったか?」
ピーターは得意げにウインクをしながらサムズアップをする。ケイはピーターから香水を受け取り自分に香水を振りかける。
「けほけほ。兄さん、香水の使い方、知ってる?」
ルカは鼻をつまみ、目を閉じ、顔の前で手を仰いでいる。
「もちろん、知っているよ。今回はこの使い方であっているんだ」
ケイはそういうと結の部屋へと走っていく。
ケイは結の部屋のドアを三回叩き、部屋へと入る。結は布団とかぶったまま反応はない。ケイはいつもの調子で結の布団をはぎ取り、毛布を抱きかかえている結の背中に頭を押し当てる。
「結、おはよう」
「……」
ケイは結のベッドにあがり、結の顔を覗き込む。すると結は閉じていた眼を開ける。
「この香り、知ってる」
結は起き上がり、ケイを引き寄せ、つけている香水の香りを嗅ぐ。
「ケーちゃんの香りがする」
少し寝ぼけている結は昔の記憶を思い出し、ケイをケーちゃんという女の子と勘違いしギュッと抱きしめる。
「ケーちゃん会いたかったよ、寂しかったよ」
「結、もしかして思い出して……」
ケイは結が昔の記憶を思い出し、ケーちゃんが自分だと認識してくれたと勘違いをし、結を強く抱きしめる。
「ん? なんかごついような、痛いような」
結は強く抱きしめられたことにより夢から覚める。
「人が寝ているところと襲うとはお兄様、セクハラですよ」
結は力の加減を忘れ、思い切りケイの顔にストレートパンチを決め込む。
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