18-6
◇結
(聞こえてくるのはみんなの笑い声。
楽しそうに笑顔ではしゃぐみんなの顔が真っ黒に見えてくる。
海の様子はいつもと違って透き通った青。その中心は真っ白に輝いている。
その光に触れることが出来ればみんなの顔が普通に見えるようになるかな?)
結はみんながいる場所に戻る。すると、みんなは視線はイルカに釘付けになっている。
(日和の横にはいつも陽くんがいて、星の横にはいつも守がいて、マモの横には光優がいる。これは私がいない時のみんなの立ち位置。日和と陽くんの間に入る隙間なんてなくて、日和やマモの間にも入る隙間はない。マモと光優の間にも入る隙間なんか見当たらない。私がこの輪に入ればみんな気を遣って輪に入れてくれるけど、いつも私の隣にいてくれる人はいないのを本当は知っている。ちょっとだけみんなが羨ましいんだ。私にも誰か隣にいてくれたらいいのにな……。)
「あ、姫! あそこにイルカたちが泳いでいるよ!」
「あのね、結の髪色みたいなイルカさんがいるんだよ」
守はイルカがいる方を指さしながら結の声を掛け、星は手すりに乗り出しながら大はしゃぎしている。
(マモと星の声がするのに表情だけ見えない……これは夢なのかな。)
「結? 調子悪い? あ、寒い? かけるもの持ってくるから待っていてね」と日和は上着を取りに向かう。
(日和の声? 寒い? いや、むしろ暑いくらいかも。そうだな、海の中に入りたいくらい暑いかも。なんだろう? 今なら海に入っても泳げそうな気がするかも。)
結は海を覗き込み、手を伸ばす。
バシャン。結はそのまま海に落ちて行く。
(わぁ冷たくて気持ちがいい。このフワフワというかフヨフヨした感じも心地よい。海が怖いだなんてやっぱ嘘。私を優しく包んでくれ、少し感じる重みが安らぎを感じる。ずっとこのままここにいたいな。)
結はゆっくりと海の中へと沈んでいく。
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