17-3
「まあ! ピーターじゃない! お久しぶりね」と母はワントーン高い声を出す。
「やあ! マリン。久しぶりだね、元気だったかい」
「ピーターに会えなかったから元気じゃなかったわ」
「じゃあ、今は元気になったということかな」
「もちろんよ、ピーター。あなたがいるだけで世界が眩しく見えるわ」
「あはは。マリンは煽てるのが上手いね。ところでそこの黒髪の女の子がエマちゃんかな」
「あら、忘れてたわ。紹介するわ。この子が私の自慢の娘、エマよ。勉強も家事も出来るとっても良い子なの」
ママ、私にそんなこといったことないのに……それは本当に思っていること? それとも外面のよさを出したいってこと? と私は母を冷ややかな目で見ていると。ピーターが私の頭を優しく撫でてくれる。そこまで私の顔はひどかったのかな?
「エマちゃん、はじめまして。僕はピーター・テイラー。このマリンが着ている服のデザインをする仕事をしているんだ。よろしくね」
ピーターはニコッと微笑みながら握手を求めてくる。
「はじめまして。エマです」と言って私はピーターと握手をする。
「そうだ! マリン。ちょうど新作の子供服を持ってきたところなんだけど、エマちゃんに着せていいかな?」
「もちろんよ! エマ、よかったわね」
「エマちゃん、もしよければ僕がデザインしたお洋服を着てくれないかな?」
「えっと……私でよければ」
「じゃあ決まりだね! トニー。この子に合う服を選んで着せてあげてくれるかい」
「わかったよ、ピーター」
私はそのまま別室に連れていかれピーターのデザインした洋服を着せられた。ピーターのつくる服は着る人によって個性がわかれる服で、男性にも女性にも着ることが出来る服だった。私が渡された服は真っ白なパーカーとサルエルパンツ。パーカーは片手だげ袖が切られて肌が見えるデザインで袖と袖とをベルトで繋げているもので、サルエルパンツは日本の着物でつくられており、一見おじさんが身につけそうな渋い柄のものだった。そして和柄の刺繍が入った黒いブーツを履く。
着替えてピーターのもとへ行くと、両手を握って大喜びされた。
「僕の服をここまで着こなせるなんて、エマ! 君はすごいよ!」
ピーターは太陽のような眩しい笑顔をみせた。そして私をぎゅっと抱きしめてくれた。はじめて褒められた。心の底から嬉しくなって顔が熱くなった。
「ねえ、エマ! よければこの服を着てモデルさんをやってもらえないかな?」
私は褒められて、私の存在を認めてくれたことが本当に嬉しくて大きな声で答えた。
「私にやらせてください!」
そしてその服だけでなく色んな服を着て少しメイクをしてもらって撮影をした。写真を撮ることもなければ撮られることもなかった。けど皆が私に注目して私に期待の眼差しを向けている。もっともっと私を見て! そんな気持ちで踊るように色んなポーズをした。そして飛びたくても飛べなかった鳥が今、羽ばたいて飛んでいった。そんな解放感に包まれた。
私はこのために生まれて来たんだ!
そんな気持ちになるくらい楽しい時間だった。撮影が終わるとたくさんの人に褒められた。それが本当に嬉しかった。
お読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!




