16-7
「あ~今日も最低な一日だった」
「ん? なにがあったん?」
「また告られた」
「ああ、そういうことね」
「今回も“光優くんはいつも優しい笑顔で紳士的に接してくれて、好きになりました”だとよ」
「なんかさ、どうして表面的なことしかみないのかね? 人付き合いのため気を遣ってやってんのが理解できないのかね? バカばっかよな」
「俺さ、家庭の事情で女嫌いだし、女に気を遣えとか紳士に振舞えだとかマジクソくらえって思ってるのにな」
「もうさ、実際にクソ投げつけてやったらいいんじゃね」
「さすがにそこまで落ちてませんよ。人としては恥じないように生きていきたいんでね」
「あら、やっぱり紳士様じゃありませんの、光優様は♡」
マモは高い女性のような声を出し、乙女のように握った両手を胸にあて目をキラキラとさせてきたので、俺は枕を顔面にぶつけてやる。
「可愛くねえんだよ」
「いって。褒めてあげたのに、ひどくね」
「そうだ、マモ」
「なに?」
「抱きしめて」
「はあ? なんで男を抱きしめるなんて嫌だよ」
「告られた時さ、絞め殺す気かってくらいに抱きしめられて気持ちが悪いんだよ」
「俺は男を抱きしめる方が気持ちが悪くなりそうだ。やっぱプ二っフワっとしたのがないと……」
「ふふふ。俺は今日、結がポスターが欲しいがために大量購入したという香水を手に入れたのだ。そのもらった香水をつけプ二っフワっの代用としてビーズクッションを抱いている。これなら目を閉じたら女と抱き合ってる雰囲気になるだろ」
「まあご準備がいいようで……そこまでするなら仕方ないな。ほい、こいよ」
「マモ、愛してるぜ~」
「お前、余計な一言つけんなよ」
マモはそう言いながらも優しく抱きしめてくれる。マモは髪が長いから俺が女性を抱きしめているそんな感覚になってしまう。マモの髪はサラサラして少しくすぐったくて、首元からは甘酸っぱい柑橘系の香りがしてくる。
「あの……コウ?」
「なに?」
「長くないですか?」
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