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そして、次の日もその次の日も例の公園に行ったがケーちゃんは現れることはなかった。誘拐にあった場所に戻る訳がないだろうし、そもそももう日本にはいないんじゃないかと思った。
「ケーちゃん来ないね」
「うん」
結は滑り台の上に登って大きな声で「ケーちゃんの嘘つき」と叫ぶ。叫んだ拍子に足を崩しスライディングするような態勢で滑り台から滑り落ちてきて顔で見事な着地をする。
「結、大丈夫?」
結はむくッと立ち上がり砂だらけの顔で「だいじょーぶ」と笑顔を見せる。
ふと、滑り台のところに光るものが見え、それを拾ってみる。光っているものは玩具の指輪で何でこんなところに落ちているんだろうとみていると、結がその指輪を奪い取っていく。
「ダメ! これは私の宝物なの!」
「え? 結の?」
「そう、ポッケに入れといたのが落ちちゃったの。ごめんね、拾ってくれたのに。ありがとう」
「俺こそ、知らなくてごめん。宝物って? 誕生日プレゼントとか?」
「ううん。違うよ。ケーちゃんからもらったの」
「へえ、可愛い指輪だね」
結がもらった指輪は玩具の指輪。指のサイズに合わせて調整できるタイプのものでシルバーのリングに赤の石がついていた。
「うん」と結はケーちゃんからもらったという指輪を嬉しそうに指にはめて「これはね、ケーちゃんとお約束した時にもらったの。ケーちゃんがね、結が寂しくないようにずっと傍にいるからね! って言ってくれたんだ。それにね、ケーちゃんは私が大好きなんだって。大好きな人には指輪をあげるんだよって言ってたの」と言った。
子供の頃はよく意味が分からなかったけど、今ならわかる。その指輪に込めた想いと意味が。そして今もケイは結が好きだということが。
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