15-3
結が行きそうな場所……どこだろう? と走っていると黄色い髪と緑色の目をした男の子が目の前に現れ、道案内をするかのように指をさした。
その時、なんとなくその子が結の居場所を知っていると感じた。
「ユイの居場所を知っているの?」と聞くと、男の子は大きく頷く。その子は一言も喋らず結がいる公園まで案内が終わると、深々と一礼をして走っていなくなっていった。
公園は小さな公園で木々に囲われ中心には遊具がいくつか置いてあるそんなところだった。入口から見渡しても誰もいない。公園の中央にあるクジラの動物型の遊具の中に隠れていないだろうかと思い、覗くが人の気配はない。公園で一番明るいトイレの中をみても見当たらない……まさか真っ暗の草むらの中に? と思い奥へと進むと泣いている声が聞こえてくる。
「ユイ! こんなところにいたんだね、探したよ。さあ、一緒に帰ろう」と結に手を伸ばす。
「ハルくん?」
「ユイ?」
結は小さく蹲ったまま動こうとしない。
「もう夜だよ? 早く帰ろう?」と結の手を掴む。結の手は氷のように冷たくなっていた。
「どうしたの? 寒くて動けないの?」と聞くと結は横に首を振る。
「じゃあ、どうして帰らないの?」と聞くと結がやっと話し出す。
「あのね、ここでケーちゃんを待ってるの」
「ケーちゃん?」
その子が誰かわからないけど、結と一緒に攫われた女の子だとその時思った。
「あのね、ケーちゃんはね。お月さまみたいな髪色でね、お目めがクロバーのような緑色しててね……私と同じ四歳だって。家族はお父さんしかいないんだって」
後にこのケーちゃんという子が結の兄になったケイだと知ることになる。このことを知っているのは俺だけで誰にも言っていない。そして結は記憶がまだ戻らず、そのケーちゃんという人物が兄のケイということに気付いていない。
転校してきた日、ケイと名乗り結に接する態度を見て何かに気が付いた。ケイも結のように常に笑っている。けどケイが時々ふと見せる結をみる視線が……悲しげで壊れ物を扱うかのように接していたから……あの時の人物だと確信した。
「うん。ケーちゃんとお約束したの。また明日も明後日も一緒に遊ぼうって」
「もう夜だよ。帰っちゃたんじゃないかな。もう遅いし、明日また来よう?」
「……」
「結のお母さんもヒナも皆心配しているよ。だから帰ろう」
「……うん。わかった。帰る。ハルくん、明日ここに一緒に来てくれる?」
「うん。一緒に行くよ」
結は小指を出して指切りを求めて来た。俺たちは指切りをしてから結がまた迷子にならないようにと手を繋いで家に向かう。結の家に着くと結のお母さんは泣きながら結に抱き着き、結はその間も俺の手をずっと握ったまま放さなかった。結の手は冷たく震えていた。もしかしたら攫われてしまった時の記憶を思い出してしまったのかもしれないと思い、結をぎゅっと強く抱きしめた。そして「結、もう大丈夫だよ」と言うと結は小さく頷き、手を放した。
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