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ヒナといると自然と結とも接することとなる。けどほとんど会話をしたことがなかった。そんなある日、ヒナが怪我をして早退していった。ヒナが心配でソワソワしていると結が声を掛けてくる。
「ハルくん。ヒナタちゃんが心配だね」
「うん」
俺は基本、会話が苦手だ。
「ねぇ、ハルくん。ヒナタちゃんが早く元気になるように折り紙で何か作らない」
「え、あ、うん」
結はそう言って折り紙で鶴やお花を作り、俺に手渡してくる。
「ヒナタちゃんに渡してくれる?」
「自分で渡さないの?」
「だって、ヒナタちゃんはハルくんのお家のお隣さんなんでしょ」
「そうだけど。自分で渡せばいいのに」
「んとね。ヒナタちゃんは私には泣いた顔をみせないんだ。きっとね、怪我しているところが痛くてもね、私の前では無理してニコニコするの。だからハルくんに渡してほしい」
結はヒナが自分の前では強がっていることを知っていた。そして俺の前ではそうではないことも理解していた。いつも笑ってアホの子と皆に言われる結はちゃんと周りを見て行動していた。それから結を見る目が変わっていった。
* * *
それから一年後、事件が起きる。
海外から来ていた大金持ちの四歳の美少女とたまたま一緒に遊んでいた結が誘拐された。
結が誘拐事件に巻き込まれ、戻って来た時には断片的な記憶がなくなっていた。それから結は生き人形の様に空っぽになっていた。瞳には光がなく、笑うことも言葉を喋ることもなかった。声を掛けても反応もしない。そんな結の周りには誰も近寄らなくなっていった。俺とヒナはそんな結に毎日会いにいっては、今日あった一日のことを話す。そんな日々を過ごした。
そんなことを続けていたら、声を掛けたらこっちを見るようになって、もっと声を掛けたら会話をするようになって、もっともっと話しかけたら笑うようになっていた。少しずつ当たり前だった日常を取り戻していった。
そんなある時。
記憶が戻っていない結はどこかに行った帰り自分の家がわからず迷子になってしまう。俺とヒナ、大人たちが結を探すが中々見つけられなかった。あっという間に日も暮れ夜になってしまう。俺は必死に結を探した。
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