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やっとお化け屋敷の中に入り、乗り物に乗る。
兄さんは少し震えていて、俺の腕をガッチリと掴んで、手はカップル繋ぎのまま握力でも図っているんですかってくらいに強く握られている。
「ル、ルカ……やっぱり怖いよおおお」
「兄さん、怖いと思っているから怖いんだよ。よく考えて。こんな乗り物に乗っているんだよ? 誰も追っかけて来ないし、目の前で脅かしても来ない。というか出来ない。俺らは遠くからみているだけ。だから怖くないって」
「そ、そう言われると怖くないかも! ありがとう。ルカはいつも冷静で優しいね」と兄さんは俺の頭に自分の頭をくっつけスリスリしてくる。
「はいはい。わかったから。折角、お化け屋敷に入ったんだから楽しもう」
「うん、わかった」
「まったく……子供なんだから」
こんな怖がって子供みたいな兄さんははじめてで、そんな兄さんを見れて俺は嬉しくなった。可愛すぎる! わーって大きな声で叫びたいけど我慢我慢……。でもやっぱり顔が緩んでしまう、ニヤニヤしてしまう。どうせ暗闇だしみえていないか。
「ルカ、なんだか楽しそう」と一歩間違えれば唇にキスをしてしまいそうな距離に兄さんの顔があった。み、見られてたってこと……どうしようなんて言えば……。
「ルカがそんなにお化け屋敷が好きだったなんて知らなかったよ! ルカの新しい一面を発見! 頭にメモっておこう! ルカの好きなモノリストにメモメモ!」
どうやら兄さんは勘違いをしてくれたらしい。好都合だからいいか。俺がお化け屋敷が好きってわかったら一緒に行ってくれるようになるかも? そしたらまたこのシチュエーションに! うん。最高だ! 兄さんまたお化け屋敷行こうね!
結局、兄さんのことばかりが気になってお化け屋敷のお化けたちの記憶なんか全くないけれど楽しい時間を過ごせた! 幸せな時間だったな。また来れますように!
俺のこの想いが届くことがないのはわかっている。
それでもあなたを思い続けるよ。
ずっとずっと愛してるよ。




