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それからエマ母は二度と家に帰って来ることはなかった。
そして、俺たち家族はダドゥとエマ姉と兄さんと俺の四人になった。兄さんが笑わなくなった原因であるエマ母がいなくなっても兄さんはモデルの仕事を続けた。そして無口無表情のまま変わることはなかった。
それでも俺は兄さんが大好きのままだった。
* * *
それからまた数年たって。エレメンタリースクールで恋の話で盛り上がっていた時の話。
「おれは、同じクラスのソフィアが好きだな。すげえ美人だし、お洒落だし」
「わかるけど、高飛車すぎるんだよな。ぼくは隣のクラスのアメリアが好きだな。笑顔が可愛いんだわ」
「オレはシャーロットかな。静かで大人っぽい感じがいいんだよ」
「やっぱ、イザベラじゃない? おっぱいが大きいのがいいでしょ」
「わかるわー大事よな、それ」
クラスの男子たちは勉強より女子のことで頭がいっぱいになっていた。毎日のように女子の話やデートの話ばかり。俺は兄さんが好きだったから、女の子に興味を持つことはなかった。でも協調性というものを大事にしろと、エマ姉に言われて仕方なくくだらない雑談会に混ざっている。
「なあ、ルカは誰が好き?」
「はいはーい! おれが当ててやる。エイヴァじゃね? 御淑やかで優しそうだし。それにいつもルカのことみてるし」
「それってルカが好きじゃなくて、好かれてるんじゃね?」
「確かにな! じゃあ、リサは? 男子一番人気の女子!」
「えーあんな男を取っ替え引っ替えする女を好きになるとは思えないな」
「うーん。じゃあルナとか? いつも本を読んでる眼鏡っ子!」
俺は混ざりはするが会話をするとまでは言っていない。ということで目線は向くし合わせるが特に何も言うことがないので無言のままでいる。すると。
「わかった! エマさんじゃない? やっぱ持つべきは美人の大人女子!」
「あーおれもあんなお姉さんほしい! 毎日ギュって抱きしめてほしい!」
「ぼくも幼稚で我儘な同級生や下級生ではなく大人の余裕で優しくされたい!」
クラスメートたちがエマ姉のことをそう思っているのかと思うと吐き気がした。他にもやること話すことあるだろう、本当にくだらない。
「じゃ! そろそろ帰るね」と俺がその場から逃げ出そうとしたら俺の肩を掴み、帰るのを止める奴がいた。
「ルカ、まだ皆で話してんじゃん。帰んなよ」
俺を止めた奴、それは目立ち互いの仕切りやで俺のことを嫌っている、あいつだった。
「で? 誰が好きなわけ? 誰にも言わないからさ、教えろよ」
この質問に答えたらすぐにSNSでバラすんだろうなと思った。そういう奴だから。現にスマートフォンをこちらに向けているのが何よりの証拠だ。動画でも拡散される気なんだろう。




