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兄さんとデートみたいなのは……はじめてだな。俺らは兄弟なのに二人で出掛けたことなんて一度もなかった。それもそうか……俺らは本当の兄弟じゃないから……。
* * *
俺の父は有名な洋服のデザイナー兼プロデューサーのピーター・テイラーではない。ピーターのアシスタントをしていた男とモデルをやっていた女の子供が俺だ。モデルをはじめたばかりの十代の母が俺を身籠ったのを知った俺の父は俺と母を捨てどこかへ行ってしまった。
母はそれでも俺が物心が付くまでは一生懸命に愛情を注いで育ててくれた。しかし母は安定した仕事に就けず疲弊していった。母はまだ若く親にも勘当され、母は自分の命だけでも助かりたいと願い……ある日小さな俺を置き去りにした。そして保護された俺を引き取ってくれたのがピーターだった。
ピーターは自分のアシスタントのせいでと責任を感じていたらしく、俺を自分の子供として育ててくれることになった。テイラー家にはピーターと息子のケイとお手伝いさんが住んでいた。ケイの母親のことは何度か聞いてみたけれど話してくれることはなかった。
俺がテイラー家に入った時は、兄さんはいつも笑っていた。なんでこんなに笑うんだろうってくらいにいつもニコニコしていたのを覚えている。兄さんは昔から世話焼きで、ご飯を食べる時には自分は食べずに俺が食べるのをじっと見守って、お風呂に入る時はいつも一緒に入って頭や体を洗ってくれた。寝る時も俺が寝るまで傍にいてくれて、トイレに行く時もドアの前で待っていてくれる。外に出かけた時は必ず手を繋いでくれて、俺がやりたいことを何でも叶えてくれた。気遣いが出来るというより、心配性だったのかなと思っていた。
そんなある時、兄さんとサマーキャンプに行くことになった。けれど俺は風邪をひいてしまって留守番をすることになった。兄さんはサマーキャンプにはいかず残ると言ったがお手伝いさんが無理やり兄さんだけを連れて行ってしまう。少し寂しくなって兄さんのベッドで寝ようと兄さんの部屋に入ると、兄さんが使っているスマートフォンが置いてあり、連絡が取れないことに気付く。
お手伝いさんにそのことを言うと「大丈夫よ、ケイ様は楽しんでいますから。こんなものなくてもいいんですよ」と答える。なんで兄さんでもない人間がそんなことを言うんだと思った。けれど、ダドゥは忙しくて何日も帰ってこないし……兄さんが帰って来るまで大人しく待っていよう。そんなことを思っていたら事件が起きてしまう……。
俺はその時、大人が大嫌いになった。誰も信用しないと決めた。そもそも他人のくせになんでこの家にいるんだ。俺はあいつを許さない。そして兄さんが帰って来るまで部屋と窓にバリケードを作って何日も過ごすことになる。数日後、兄さんが帰ってきてドアのバリケードを破り部屋に入ってきた。俺は食わずのまま何日も過ごしたため衰弱し、そのまま病院へ運ばれていった。




