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◆守
結は俺や他の人間が結をどう思っているかを理解していない。鈍感といってしまえばそうなのだが、その鈍感さがただ鈍感だけならいいが……鈍感すぎて迷惑を被っているとなると話は別である。結は俺が星を好きだと思っている。それは事実だけど真実ではない。俺の一番好きは結であって、二番目に好きなのが星である。
理想と現実は違うと思っていて、理想的な相手が結。だから俺は彼女のことを姫と呼んでいる。それくらい尊い存在だからだ。一番好きは理想であって一生添い遂げたいと思う相手ではなくずっと好きでい続けたい、ココロの中の一番と言う意味である。
それに対して二番目に好きの星は好きより放っておけない、俺が傍にいたいと思う女性で好きという気持ちでは一番には敵わない。俺は好きが二人いる。本当にクソ野郎だって思う。理想の人と口にした人がずっと隣にいてほしいか考えると、現実はやっぱ理想通りにはいかなくて……いつの間にか隣にいる人が現実だったりする。
俺は結が好きだけど添い遂げたいわけじゃない。親友という特等席にいたいだけなんだ。
* * *
俺は幼等部から星と同じ私立の学校に通っていた。星が中等部に上がらず地元の公立中学校に行くというから俺も一緒に通うことにした。まあ結果はわかりきっていたけれど……。
独りぼっちの星に結が声を掛けた。それから星と結とおまけの日和が三人で行動するようになっていた。俺の入る隙間がなくなった……だから大好きで守ってきた星を取られたと思い込んだ俺は結が嫌いになった。結はいつも笑顔を絶やさない、いつも星の隣で笑っているあの女が許せない。そんなことを思っていた。そんなある時……。
「マモくん?」と結が声を掛けて来た。
「ああ? 喋ったこともないのに気安く呼ばないでもらえる?」
俺はすげえいかつい顔で結を見上げたのを今でも覚えている。最悪の第一印象。
「ごめんなさい。朱音くん」
「で? 何の用?」
「星がここ二日お休みだから具合どうかなって気になっちゃって」
「なんで俺に聞くの?」
「朱音くんが星とお隣同士のお家で仲良しって聞いてたから、知ってるかなと思って」
いつも笑顔の結が明らかに作り笑いをしているのがわかった。きっとそうなるくらい俺の顔が怖くて話にくい状況を作っていたんだろうなと思う。
「連絡先知らないの? 友達なんでしょ?」と俺は嫌みっぽく言ってみる。
「連絡はしたんだけど、大丈夫。元気って。でも無理する子だから気になって……」
結は泣きそうな顔をしながらも一生懸命に笑顔を作ろうとしていた。
そんなに星との付き合いが長くないのに星が無理する奴って理解しているんだなと少し感心した。
けど余計に腹が立った。だから俺は……
「へえ。なんか薄っぺらい友情だな。それホントに友達なわけ?」と笑いながら言った。
「友達と思っているのは私だけかもしれないね」そう返ってきた。逆上して怒るのかなって思った。けど結は涙を流しながらも笑顔を作ろうとしていた。俺は少し怖くなった。なんで此奴は笑おうとするんだ。その時は結の笑顔を絶やさない意味に気付くことはなかった。




