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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

赤郵便

作者: howari

郵便車って何で赤いのか知ってますか?

ピンポーン!



「郵便でーす!」


モニターを確認すると、いつもの郵便屋さんとは違う様だ。新人さんだろうか。

私は「はーい!」と返事をして、印鑑を持って玄関のドアを開けた。



「郵便です」

小さな段ボールを渡され、印鑑を押す。


「4月からこの辺りを回る事になりました。赤井です。よろしくお願いします」

ニカッと笑い、会釈をする。きびきびしていて爽やかな好青年に見えた。


「あ、そうですか。よろしくお願いします」

「あと、これも」

一枚の手紙を渡され、宛名を見ると遠距離恋愛中の彼からだった。  


「彼氏からですか?」

「え?」

「失礼しました!」

郵便屋の彼はそそくさと赤い郵便車へと戻って行った。


変な郵便屋さんだな、と思いながら私は段ボールを机へ置き、先に彼の手紙の封を開けた。




〝みきへ


元気にしてる?俺は元気に仕事頑張ってるよ。まだ今はだめだけど、落ち着いたら会いに来てくれる?こっちは凄い都会だよ。高層ビルやスカイツリーなんて高すぎてびっくりするぞ。夜景もキレイだからみきに見せたいな。また手紙書くからみきも頑張って。好きだよ。


          健太より〟




「私もまた手紙書くね。好きだよ」


今時珍しいかもしれないが、彼とずっと文通をしている。LINEもしてるけど、自分の気持ちを正直に書ける手紙は好きだ。彼も私も文字を書く事が好きだから文通は続いている。返事を書いてまた返事が届く、その待っている時間も好きだ。毎日のワクワクとドキドキ。



「さぁ、早速返事を書こう!」


私は引き出しからすみれ色の便箋セットを取り出した。



数日後、彼から手紙が届く。



今回はおかしかった。



一度封が切られた様な痕跡。中に入っていたのは髪の毛とパソコンで打たれた紙。

宛名は間違いなく彼だ。


 


〝みきへ


髪の毛を送り合うと幸せになれるんだって!だからみきの髪の毛も送って欲しい。僕たち2人は幸せになるんだから。また手紙書くよ。愛してるよ。


         健太より〟



髪の毛を送り合う?

幸せになれる?

確かに健太は昔からおまじないとかが好きだった。あと、いつもは俺と言ってるのに僕になっている。変換間違いだろうか。仕事でパソコンを使っているから、パソコンで書く様に変えたのだろうか。 

少し心配になりながらも、私は髪の毛を抜いて手紙と一緒に入れて送った。





ピンポーン!


「郵便でーす!」

この前の郵便屋さんがモニターに映っていた。


私はドアを開け、頼んでいた服の段ボールと手紙をまた受け取った。

アパートの横にはまた赤い郵便車が停まっている。郵便屋さんはその車を指差しながら話出した。



「郵便の車って何で赤いのか知っていますか?」


「え?し、知りません」


「血の色だそうですよ」


「えぇ?血?」


「人間に血は必要でしょう?郵便も人間にとって必要不可欠である様に、と赤くしたそうですよ」


「へぇ……そうなんですね」


血の様に赤い郵便車。なんか不気味な感じがして身震いが起きた。




今回の手紙も封が開けられた痕跡がある。

封を開けてみる。中身はまたパソコンで打たれた紙と……剥がされた爪が一枚。



「きゃあぁ!」



切った爪ではない、剥がされたと思われる親指の爪一枚。

誰の?彼の?




〝みきへ


髪の毛ありがとう。毎日大事にしているよ。今度は爪を送ってみたんだけどどうかな?大事にしてくれる?僕もみきの爪が欲しいから、送ってくれるかな?楽しみにしてるよ。


          健太より〟



私の爪が欲しい?

健太どうしちゃったのかな?

仕事が忙しいのか、最近LINEもくれない。

精神的におかしくなっちゃったのかな?


私は急いで彼に電話を掛けたが、出てはくれなかった。

鼓動が早くなる。

彼が心配で夜も眠れなくなってしまった。




結局返事は書かず、心配で何度も電話をしてみるが出てくれない。

どうしちゃったんだろう。

自殺……とか考えてないよね?

日に日にマイナスな考えへと沈んでいった。



ピンポーン!



「大丈夫ですか?顔色悪いですよ?」


郵便屋さんがまた私に段ボールを渡す。その宛名を見てびっくりする。

彼からだ。手紙以外の郵便なんて珍しい。


私が印鑑を押そうとすると郵便屋さんが口を開く。




「今すぐ開けましょうか?」


「え?」


郵便屋さんはポケットからカッターナイフを取り出し、私が抱えている段ボールの封を一直線に切った。




「今日は何が届きました?」



恐る恐る中身を確認する。





「きゃあぁぁぁ〜!!!」




思わず段ボールを床へと落とし、しゃがみ込んでしまった。




ゴロリ……私の足元へと肌色の何かが転がる。




人の手首。




「今日は手紙じゃなくて手首でしたか。誰のか分かりますか?」



私は涙目でその手首を見つめる。

手の甲には大きなホクロ。

手を繋ぐ度に「可愛いね!」って私が触っていたホクロ。

大好きな彼の……手首だ。



呼吸が出来なくて、脳に酸素が行き渡らない。苦しくて目眩がする。





「君が悪いんだからね。彼氏なんかとラブラブな文通してるから。僕がいるのに。あの日からずっと君が好きで、好きで、好きで頭がおかしくなりそうなんだ。だから邪魔者は消してあげたよ」



 


「け、健太……」


私は泣き叫ぶ力すらなく、立ち上がれずにいた。この男は私の手首を掴み、赤い郵便車の方へと引きずって行った。



 


「そんなに会いたいならここに居るよ」



郵便車の後ろを開けると、山積みにされた段ボールが数個ある。

段ボールの角からは赤い液体が滲み出ているものもある。




私は切り裂かれた健太の遺体と共に、赤い郵便車に乗せられた。




「さぁ、これで君は僕のものだね。2人で何処へ行こうか?楽しみだね!あははは!」




血の様に赤い郵便車は走り出す。






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