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3 願い事3つと言われても

 本当に困った。いや、実はそんなに困ることもないんだろう。この美少女がなんで空から降ってきて、突然願い事3つ叶えてやるっていうことがおかしい。疑ってかかったっていいはずだ。俺にはこの事態をスルーするという選択肢だってあるのだ。

「で、圭太さん、どんなお願いごとします?」

 つぶらな瞳を少女マンガのようにキラキラさせて俺に問うてくる。

「えーっと。そんじゃあ、俺用事あるからこの辺でさよならしていいかな」

 別に願い事なんてないし、スルーしてやろうという選択肢を選んでみた。

「えっ! いや、圭太さん、ちょっと待ってくださいよぉ。なんでさよならになっちゃうんですかぁ。どんな願い事でも3つ叶えられちゃうんですよ? こんなチャンスありませんよ?」

「だって、別に願い事ないもん」

「何かないんですか? 世界制服したいとか、一生お金に困らないとか、彼女が欲しいとか」

「最後だけやけにしょぼいな。でも、別に世界が欲しいわけじゃないし、そんなもんになったらいつ殺されてもおかしくなくなるだろ? そんなのまっぴらごめんだ。金は必要なだけあればいいし、大金持ちに憧れってないんだよ、俺」

「じゃ、彼女は?」

「まぁ、今のところは重要じゃないかな?」

 彼女は心底困った顔になった。

 困った顔も可愛いじゃないか、さすが美少女、なんて考えつつもそんな顔をされても俺だって困る。

「本当にないんですかぁ、お願いごと。だって3つも叶うんですよ? どんなことだって叶っちゃうんですよ? だって神様が叶えちゃうんだから間違いないんですよ?」

「そう言われたって、でっかい野望もないし、平凡な俺は平凡な生活を愛してるんだよ。だからそんな願い事は必要ない」

「そんなこと言わずに何とかお願いしてくださいよぉ」

「お前は何かの営業マンか」

「だって、お願いしてくれないと困っちゃうんですよ」

「別に困らないだろ。俺がダメなら誰か別のヤツを探して、願い事してもらえばいいじゃんか」

「それができたらこんなこと圭太さんに言わないですよぉ。神様が選んだのは圭太さんなんです。圭太さんのお願い以外は神様も願いを叶えてくれるわけじゃないんです」

「だからって、俺が願い事をお前にしないことに不都合はないだろ?」

「あるから言ってるんですっ。この世界で圭太さんの願い事担当になったのは私なんです。だから、圭太さんの願いを叶えないと神様に認めてもらえないんですよー」

「神様も意外に心が狭いな」

「なんてこと言うんですか。神様はそれはとってもとってもえらいんですよ? 認めてもらうのがどんなに素晴らしいことか知らないでしょ」

「うん、知らない」

「とにかくすごいんです。って、そんな話は別にいいんですよぉ。圭太さん願い事してくださいよぉ」

「そう言われたってなぁ……じゃあ、ひとつお願いしようか」

「なんですか? なんですか?」

「吉野屋の牛丼特盛りを卵付きで食いたい」

「……え?」

「いや、だから吉野屋の牛丼を特盛りで卵付きで食いたい」

「それが……願い事?」

「だって、何だって叶えてくれるんだろ? ちょうど腹減ってたし、何を食おうか考えてたからさ。金を払えば730円払わなきゃいけないから、そこを奢ってもらえるなら大きい」

「……」

「2つ目はそうだなぁ……2つ目の願い事をしたら3つ目もクリアになるとかでいいかな」

「……」

「これで3つ願い事言ったぞ? 神様だって牛丼くらいは奢ってくれるだろ?」

「……だーめーなーんですー! そんなのダメダメダメダメダメダメダメダメダメ! 絶対ダメ!!」

「なんでだよ。3つの願い事になってるじゃんか」

「そんなちっぽけな願い事じゃダーメーなーんですー! そんな程度だったら私だってちょっと頑張ればできちゃうんですー! もっとドカーンって願い事にしてくれないとダメなんですー! 圭太さんがそんなことばっかり言ってると……うっ……うっ……わ、私泣いちゃいますよ……うわーん! えーんえーんえーん」

 なんだか知らんが泣き出してしまった。さすがに絵として美少女を街中で泣かすのは問題ある……はずなんだけど、なんで誰も振り向いたり反応したりしないんだ?

 あー、もう! コイツは泣いちゃうし、何だかわからんけど誰も反応しないし、一体どうなってるんだよ、コレ。

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