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2 なんですか、それ

 ここで自己紹介しておこう。俺の名前は斉藤圭太。山田さんや佐藤さん、鈴木さんほど人数は多くないだろうが、まぁありきたりな名字で平凡な名前。見た目も平凡、通っているのも都内の上位校でも下位校でもない中堅どころの大学だ。つまり、どこをとっても「平凡」の一文字で済んでしまうような大学生。


 そんな俺がよりによってとんだハプニングに巻き込まれているのが今の状態。

 

 渋谷や新宿のような常に人が多い雑踏の中の出来事ではなかったとは言え、数えるのがめんどくさいくらいには人がいる。当然、人が空から降ってくるようなことがあれば、誰の目にも止まっていいはずだ。なのに誰の目にも止まらず、でも確実に今、自分たちの居場所を避けて人が後ろを通っていく。

 おかしい。

 などと思いつつ、目の前の美少女に目をやりながらどうすりゃいいんだよ、と途方に暮れていると、その少女はモゾモゾ動きはじめ、うっすらと目を開けた。

「おい、大丈夫か?」

 ぱっちりと目を開けた彼女はやはり紛うことなき美少女だった。いろいろヤバいこの状況。

「えーっと、ここはどこですか?」

 また見た目通りの可愛い声で無邪気に彼女は聞いてくる。しかし、空から降ってきたにしたってどこからかダイブしたんだろうから、この街のことを知らないわけがない。

「神奈川県横須賀市。知ってるだろ? とりあえず自衛隊と米軍の街」

「良かったー。神奈川県横須賀市なんですね。ちゃんとたどり着いたー」

 たどり着いた? たどり着いたって何だ。別に歩いてきたわけでもないし、電車やバスに乗ってえっちらおっちら来たわけでもない。空から降ってきてなんでたどり着いたなんだ?

「あの、斉藤圭太さんですよね?」

 は? 一瞬固まる。

「斉藤圭太さんじゃないんですか?」

「いや、斉藤圭太だけど」

「突然ですが、おめでとうございます! あなたは神様に選ばれてこの世で3つだけ好きなことを叶えることができるのです!」

「えーっと、変な宗教の人? そういうのはノーサンキューなんだけど」

「宗教ってなんですか? この世界のことよくわからないまま来ちゃったんで、いろいろわからないことが多いんですけど」

 この世界のことがわからない? この世界以外にどの世界があるっていうんだ。少なくとも俺の常識の中でこの世界以外に世界は存在しない。もしかしたらするのかも知れないけど、俺は寡聞にして知らない。

「この世界のことがわからないって、何? 地面に落ちたときに変なとこ打っちゃった? 病院行くか?」

「うーん、わからないものはわからないんです。私がいたのは神様がいて、天使様がいる世界でしたから、人間のいる世界のことはよくわからないんです」

 どうにも話が噛み合わない。

「わかった、じゃあそういうことにしておこう。で、その神様が何で俺のこと知ってるの?」

「それは神様ですから。すべてのことができ、すべてを知っているのは当たり前です」

 そういうもんなのか。全知全能の神とは言うが、パラドックスがあるんじゃなかったっけ。などとくだらないことが頭をよぎる。

「じゃあ、それもそういうことにしておこう。で、その神様が何で俺を選んで願いごとを叶えてくれるわけ?」

「理由は聞いてないというか、私程度のランクじゃ神様の姿を見ることもできないので何とも言えません」


 「お前のいる世界は神様のいる世界なんだろ? そこにランクなんてあるもんなのか。神様と天使の差くらいはわかるけど、それ以下っていうのもあるのか」


「あるんです。強いて言うなら見習い天使というか」


 天使に見習い制度があるのか。キリスト教はよく知らんけど、初めて聞いたぞそんな話。

「私のことはどうでもいいんです。神様に選ばれた理由ですよね? 最近、何かいいことしました?」

「いいことねぇ。年寄りに席を譲るとか、困った人に声をかけるくらいのことはしたことあるけど、最近はなんもしてないと思うな」

「きっと、それです! たまたまそういういいことをしてるのが神様の目に止まって、じゃあ褒美をやることにするか、ってなったんだと思います」

「いや、でもそんなことしてるの、別に俺だけじゃなくて日本中に掃いて捨てるほどいると思うぞ」

「そこは神様の気まぐれというか、神様だって若い子が好きだったり、物語的にこうしておくと面白いからですよ」

「面白いって、お前なぁ」

「とにかく、どんな非常識なお願いでも3つ確実に叶えることができます。さぁ、ここでババーンと願い事言っちゃいましょう」

 願いごとを3つ、何でも叶えてくれる。

 アラジンじゃないんだから、こんな話を言われても困るのだ。平凡な俺に。


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