表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

第6話:影の中の光

「あの、どちら様でしょうか………。」

病院に行った俺は、衝撃を受けた。

「あなた、誰ですか?」

「か、加奈ちゃん?」

「!私のこと知ってるんですか?………でも、私はあなたを知らないです。すみません、どちら様でしょうか?」

俺は思わず病室から駆け出した。

なんなんだ。何で俺の事を忘れているんだ!!

俺はあの日、加奈ちゃんに告白された海に向かった。

ザーーーー ザーーーー

あの日と何一つ変わらない海。

「………な、なんで…」

蓮くん。蓮くん!蓮くん!?蓮くん?蓮くん……

頭の中に、加奈ちゃんの声が聞こえたきがした。

しかし、振り向いたが………そこには、誰もいなかった。

自分は一体、何を失おうとしているのだろう。

砂を蹴って走り出す。足がもつれてひっくり返る。跳ね起きて、涙を流したまま走る。

「うああぁあぁあああぁあぁぁぁ!!!」

波打ち際に走り込んで、打ち寄せる水と全身で戦いながら真っ黒な沖を目指して走る。

気がついたら、波打ち際まで流されて、もがいていた。

ゆっくり立ち上がる。

俺がしっかりしなくちゃ。この先、決して楽な道のりではないが、俺が加奈ちゃんを助けなきゃ。だって俺は、加奈ちゃん、いや加奈が好きなんだから。



翌日俺は、加奈の親に話を聞いた。

しかし

「大丈夫、命に別状はない」と、いってはぐらかされた。

医者は、

「記憶の部分欠落で、ここ数年の記憶がなく、また、新しく物事を記憶することが出来ない状態です。幸い命に別状はないようですが、私生活は、厳しくなるでしょう。」とだけ答え、行ってしまった。

「新しく記憶が……できない?」

最初は、意味がわからなかった。しかし、加奈の病室に行ってその意味が明白になった。

「あの……どちら様でしょうか?」

病室に入って、初めて入った時と同じ言葉を聞いた。

「………加………奈……。」

「!私を知ってるんですか?………でも私は、あなたを知らないです。すみません、どちら様でしょうか?」

「お、俺は……あ、あなたのお手伝いをする者で、蓮といいます。」

その名前を聞いた加奈は、少し驚いた顔をした。

「すごい偶然ですね………その……私の好きな人の名前もレンっていうんです。あっすみません。関係ないですよね、私の好きな人の事なんか…。」

そういった加奈は、顔を真っ赤にしながら布団に潜った。

それは、自分だと言おうとしたが言えなかった。

今の加奈は、記憶を失っていて、そんな事を言ったら混乱するに決まっている。

では、どう言えば……

「あの………」

言葉を考えていると、加奈の方から声をかけてきた。

「これから、よろしくお願いします。………それとその、あなた、今恋をしていませんか?」

………

「どうしてそう思ったのですか?」

すると加奈はまた赤面して、申し訳なさそうな顔をした。

「すみません。その、あなたが、私みたいに苦しそうに感じたので。もしかしたらと思って。違いました?」

「いえ、間違ってはいません。」

そういうと加奈は、やっぱりという顔をして

「大変ですけど、お互い頑張りましょうね。」

と言った。病人だと思えないくらいの、素敵な笑顔をつくって。



そんな会話が数日続いた。新しい記憶が出来ないから。

はたから見れば、凄く残酷である。

実際、美樹や、周りの友人から何度か励ましの言葉をうけた。

俺は、毎日学校が終わると、つきっきりで看病した。

そのせいか、段々やつれていくの自分でもわかった。

しかし、加奈の記憶は相変わらずで、俺の名前は、なんとかあの夏祭りで捕った金魚に俺と自分の名前を付けて、忘れないよう何度も愛情を注ぐかのように呼んでいたから、名前は、忘れないよう最近なり始めた。

そして今、俺は一人で加奈が記憶をどうしたら取り戻すかを考えていた。

「………どうやったら記憶を戻すことができるんだよ……ボソッ」

「お前のせいで、佐々木さんが病院おくりになったんじゃねーか!」

!!加奈のことが好きだった輩が俺に、悪口をいった。

「〜〜〜っ!!」

俺は顔を机に押し付け、初めてみんなの前で泣いた。

「うっ、うぅぅっ。………。」

自分が情けない。あんなことを言われて言い返せず、人前で泣く自分が。

「みんな、やめなさいよ。別に蓮くんは、悪くないじゃない!!一番親しかった蓮くんが一番辛いのに、周りからも責めないでっ!!」

見るに見兼ねたのか、学級委員長が悪口を言った人に突っ掛かった。

「うるせーよ委員長!委員長には関係ねーだろ。」

「なっ!そんな言い方ないじゃない!!」

委員長がキレそうになったところで俺が止めた。

「ありがとう、委員長。」

ダッダッ!走り出す。

「あっ!まって蓮くん!」

背中の方でそう聞こえたが、構わず美樹に呼び出された記憶のある屋上へ向かった。

バンッ!

誰もいない。

当然である。

屋上など、生徒が昼食を食べる場所につかったり、放課後たまに部活でつかう程度で、普段は、人は来ない。

「……ふぅ」

近くに海があるので、潮風がほどよく気持ちいい。

バンッ!

反射的に振り向くと、……そこには、委員長がいた。

「ハァハァ……蓮くん、足速い。ハァ」

「ごめん、今ひと

「ごめんなさい!」。」

最後まで言えずに割り込まれた。

「なんで委員長が謝るの?」

「だって、私がもっとしっかりしてれば。」

申し訳なさそうにうつむいてそう言った。

「また今回みたいなのがあったら、私が守るから。」

「どうして、そこまで?」

「そんなのは!……好き…だから……。」

!!

一瞬、委員長が加奈にかぶって見えた。

それは、あの友達記念日の時、加奈が言った言葉。

涙がまた出てきた。

「あっ、ごめんなさい。いきなり、こんなこと。」

「いや、こっちこそごめん。いきなり泣いたりして。委員長、その好きって言ってくれるのは有り難いんだけど……」

その瞬間、委員長の顔が少し曇った気がした。

「いいの、私知ってたから、蓮くんが佐々木さんのこと……ただ、あんまり無理しないで。じゃあ先行くね。」

そういって委員長は、屋上からいなくなった。

「ごめん、委員長。」

………加奈……。

「おうっモテモテだな、蓮。」

屋上のドアの裏に、美樹がいた。

「おまっ聞いてたのか?」

「わるい。寝てたら、お前の声が聞こえちまって。」

本当に、不本意らしい。

「それより蓮、いい情報があるぜ。」

?いい情報?

「俺の姉が好きで、言い伝えとかいろいろ知ってんだ。そのなかに、願いが叶う月光ってのがあって、そこの海で月光が海に反射してひかる時があるらしい、そんでその光を見た人の願いが1つ叶うって言い伝えがあるみたいなんだ。」

願いが叶う月光………じゃあそれをみれば加奈の記憶は……。

「俺もそれだけだから、先戻ってるぜ。」

「美樹っ!」

「ん?」

美樹は、ドアノブに手を付けたまま振り返った。

「サンキュー。」

今までも、ずっと影で支えてくれて。

「ああっ!」

最高の親友だよ、お前は。

こうして、加奈の記憶を戻すかもしれない幻の月光捜しが始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ