第5話:夏祭り
嫌がらせが、美樹と話をした日から俄に無くなった。
小さな噂で、美樹が俺達に手を出すなと、嫉妬している男子に言ったとか……。
多分、噂は本当だろう。
美樹はサッカーが上手いし、性格がいいから、全方面的から人気である。
だから、顔がひろくそういう裏での手回しがきくのだ。
今度、自分の気持ちがはっきりしたらいろいろと、お礼を言いに行こう。
しかし今は、1時間後に迫る夏祭りについて考えなくてはならない。
あの日、美樹に呼び出されたあの日の帰り、俺は、加奈ちゃんにきちんと夏祭りまでに気持ちを整理して、告白の返事をすると、宣言したのだ。
しかし、未だ答えが出せていない。
そんな時、
「お待たせしました。」
浴衣姿の加奈ちゃんが来た。
ッ!……………。
「どうかしましたか?」
ハッ!思わず見とれていた。
「な、なんでもないよ。」
「…?そうですか?なら、行きましょ。」
そういって、俺の手を取り歩こうとしたが、急に何かを思い出したかのように立ち止まると、いきなり振り返る。
「そうだ、蓮くん。答えは、帰りでいいので今は、今までみたいに2人で楽しめるようにしましょうね。」
そういって、俺の手を引いたまま歩きだした。
………そうだよな。今は今を楽しんで、答えはまた後で考えよう。
「あっ、あのかき氷食べません?」
今まで2人でいろいろな所に行ったが、今日が一番はしゃいでいる気がした。
「そうだね。じゃあ食べ終わったら、あのお化け屋敷入らない?俺入ったことないんだ。」
「えっ……う、うん。」
?俺へんなこと言ったかな………。
加奈ちゃんの頬は、かき氷屋の隣の、りんご飴の如く真っ赤だった。
その後、金魚すくいに射的、型抜きに輪投げ、食べ歩きをし、時刻はもうすぐ22時になろうとしていた。
「もう、…祭りも終わりだね。」
「………そうだな。」
本当に今日は、楽しかった。
「ねぇ、蓮くん……その、そろそろ返事、くれない?」
!! 今まで考えてた事。加奈ちゃんへの、自分の気持ち。美樹に言われてすごい考えた。なかなか出なかった素直な気持ち。今日の祭でかたまったこの気持ち。でも、本当は最初から答えは決まっていたのかもしれない。その素直な気持ちを、今加奈ちゃんに言う覚悟を決めた。
「加奈ちゃん………お、俺は、加奈ちゃんのことが……す[ドーーンッ!!]」
大切な所で花火がなった。
それとほぼ同時に、………加奈ちゃんが倒れた!!
「か、加奈ちゃんっ!」
そして加奈ちゃんは、病院にはこばれた。