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第11話:幸せの裏側

最後のせんこう花火は、今までで一番綺麗に大きく輝いていた。

「綺麗〜。でもこれじゃあ勝負つかないね。」

「ああ、そうだな。」

そう、最後の二つの花火は、先端がくっつき一つになってしまったのだ。

「もぉー、蓮君がくっつけちゃうからだよ?これじゃあ勝負できないじゃん。」

「なっ!だって仕方ないだろ。それに、急かしたのは加奈の方じゃないか。」

「あわわ、線香が落ちる、落ちる。」

花火を見ると凄く揺れ、今にも落ちそうだった。

「おわ、落ちる、落ちる、落ちる〜。」

慌てて揺れを止めようとすると、逆に揺れて線香が落ちてしまった。

『あ〜。落ちちゃった。』

二人が声をハモらせる。

それに反応して二人の視線が互いを捕らえ合う。

『ぷっ、あははは…』

二人は妙に可笑しくなって笑った。

「あははっ可笑しい。別になんでもない事なのにね。」

「ああ、そうだな。でもせっかく二人で頑張ってた作業なのにな。」

「………なんか二人の作業って言うと、結婚式のウェディングケーキみたいだね……。」

「なっ!おま、何言って!」

「あはは、冗談だよ。そんなに動揺しなくても…」

加奈が悪戯っぽく笑う。

「〜っ!そんな冗談いう奴には、お姫様抱っこしてやらない。」

「あ〜、ごめんなさい、ごめんなさい。許して下さい。」

………限りなく棒読みだった。

「なんで、棒読みなんだよ。」

「あはっ!」

「笑ってごまかすなっ。」

「お姫様抱っこしてぇ〜。」

加奈には、敵わない。

それに、その笑顔はヒキョーです。

「わかった、わかった。じゃあ病院に戻るか。

……お姫様抱っこしながら。」

「わぁーーい。」

「なんでそこで棒読み?」

「あはっ。」

「だから笑ってごまかすなっ!!」

そんな事を言いながら、加奈を抱っこした。

「こんなんでいいか?加奈。」

「あれ?何で私こんな所に?」

「っ!!か、加奈?」

「あれ?えっと、レンさんでしたよね?何で私はこんな所にいるんですか?」

加奈はまた記憶が無くなっている様子だった。

「あ、えっと……。」

「?」

加奈は、不安げにこちらを見る。

だめだ、どんなに辛くても加奈と生きるって決めたんだから……。

「えっと、さ、散歩です…はい。」

「お姫様抱っこでですか?」

うっ、鋭いところをつかれた。

「こ、これはえっと…その…なんだ?その、あれです…えっと……。」

駄目だ。いい答えが浮かんでこない。

そうやって俺がウジウジ悩んでいると、

「だめだめ。そんなんじゃ私の看病は任せられないなぁ〜。」

「えっ?」

「もっとテキパキ対応しないと。」

「あのー加奈さん?」

「ん?なぁに?」

「記憶戻ってるんですか?」

「うん。記憶戻ってる時は、大体一日中戻ってるよ。」

「じゃあ、今までのは芝居?」

「うん。」

なんですとーーー!!

これは心の中だけで叫んだ。

「じゃあ、本当に病院に帰るぞ。」

「うん。」

そうして病院へ向かった。



病院へ向かって歩いていると、手の中の加奈が話しかけてきた。

「ねぇ、お願いがあるんだけど。」

「またお願いか?さっき最後とか言ってなかったか?」

「むぅー。じゃあこれが最後。」

「最後が何個あるのやら。」

「もぉー、いいでしょ!…それでね、お願い、聞いてくれる?」

「ん〜まあ一応言ってみろよ。」

「うん。」

気のせいか、加奈の頬が少し赤かった。

「……あの、ね……〜〜したいなぁ〜なんて。」

「ん?なんだって?」

「だから、……」

ズキンッ。

そう聞こえるかのように、加奈の顔が歪んだ。

「おいっ!加奈!大丈夫かっ!!」

「〜〜」

加奈は無言で答えない。

しかし、みるみる加奈の顔色は悪くなった。

「まってろ、今病院に連れてくからな。」

そういって俺は、病院へ走った。

「ご、めん、ね……。」

今にも消え入りそうな声で加奈がいった。

「無理に喋るな。」

「ご、めん、ね……。」

「なに謝ってんだよ。」

「今、まで、病気の…事で、迷…惑…かけ、たし……それ…に、…わた、し……もう、だ…め……みたい、なの……。」

「何言ってんだ!諦めるじゃねーよ!

それに、迷惑だなんて思ったことねーよ!」

「あり、が、とう……でも、も、う……おわ…りなん、だ。……だか、ら……最後、に……お願い、き、いて……。」

「なんだ?」

「とま、って…もらえ、る……。」

俺は、足をとめて加奈をみた。

その瞬間、

「っん!」

俺の唇が加奈の唇によって塞がれた。

加奈が弱った力で俺の肩を掴み、必死で俺の唇に自分の唇を押し当ててきた。

時が止まったように思えた。

互いの唇が重なり合うだけで、病気のこと、急いでたことが忘れられた。

唇が離れ、また時が動き出す。

「れ、ん…くん、と…キ、スする…こと、……これ、が、最後の、…お…願い、だ、った。

あり、がと、う……し、ぬま、えに、かなえ……られ、た。」

「おいっ!加奈!!」

「だ、駄目だ……よ、ない、たら……」

「か、加奈!加奈!」

「い、ままで、……あり、がと、う。…だい、…す、き…だ…よ………。」

加奈は眠るようにいきを引き取った。

「か、加奈?加奈!加奈!おい!起きろよ加奈!か、加奈……加奈ーーーっ!!」

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