表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

潜入。つまり高校生

馬鹿だから夏風邪引いてました。

 鳥の鳴く声と共に、ツクモのアラームで目が覚める。


 う~ん。身体が重いな…… 

 最近更に手合わせが厳しくなってきてるから疲れがとれないのか。

 

 時計に目をやると6:30と表示されている。

 また、こんな時間か。朝から何かやるんだろうな。

 大学生の特権、惰眠を貪ることもできない。


 仕方ない、起きるしかないしな。

 寝ぼけ眼をこすり、のそのそと身支度を始める。


 ……何か目線低くない?

 いつもより目線が低く感じる。身長ってこんな一晩で縮むんだろうか?

 しかも、服もダルダルだしな。


 気のせいだろ。そう思いながら、鏡見に目をやる。

 ——は? いやいやいや、あり得ないだろ。


 鏡に映っていたのは見慣れた男の姿ではなく、女の子の姿だった。


「何だこれ!? 声まで変わってんじゃん!」


 最近は並大抵の事じゃ、驚かない自信はあったけど、流石にこれはおかしいだろ。

 それよりまず、犯人に直接聞かなくては。


 急いでアメノの部屋へ行く。

 こんな事起こす、いや、起こせるのはあいつしかいないだろう。


「アメノ! お前! これなんだよ!」

「あっ、おはよ。気に入った? 可愛いでしょ」


 寝癖の付いた頭、少しはだけた服。これはなんともまぁ眼福ではある。

 しかし、今はそこじゃない。


「そうじゃなくて! 説明が欲しいの!」

「え~、まぁ仕方ないな」


 え~、じゃねぇわ。面倒くさがるな。

 自分の身体が起きたら女性とか、役得って思う人いそうだけど、結局自分の身体だからね。


「鬼の気配があるけど、鬼が紛れ込んで見つけられない場所があるんだよね。悪さする前に倒しちゃわないとって事で潜入して欲しいんだ」

「はぁ、で? 何でこの姿?」

「東高校にいそうなの、だからそのためにこれ着て通学してもらおうと」


 その手に持っていたのは、女子学生の服。

 何でもありかよこいつら、その前に確認しなければ。


「男の姿で良かったんじゃないの? 一々女にしなくて」

「ほら、お上が『見た目絶対おんなのこがいい』ってそうしちゃったんだから」

「てか、何で身体が女性に変わってるの?」

「時間を掛けてこつこつと術式編んだらできるの」


 日本の神様がそんなんでいいのか。

 もう身体を作り替えられるのは当たり前なのね。

 鬼を退治するまで、この姿のままなのかな……


「大学どうすんの? 流石に出席で単位落としたくないんだけど」

「その当たりは任せなさい」

「その前に俺じゃなくてお前が行けば良いじゃん」

「授業に出るぐらいならここで働いた方が楽しいから嫌」


 本当にただの駄々っ子でしか無いじゃん。

 鬼退治がお前の仕事の最重要項目だろ……

 

 説明が程ほどしかされていない気もする。

 しかし、どれだけ抗議しようとこの姿や、やるべき事は変わらないだろう。

 

「なぁ下着とかどうなってんの?」


 当たり前だが、男物の下着を現在着用しているし、女性用下着なんて持ってない。

 姿を変えられるなら、服も一緒に変えろって話しだけどな。


「買ってきた。付け方わかんないでしょ?」

「あぁ、まぁ」

「付けてあげるよ」


 そう言って、付けてくれた。

 すっごく馬鹿にされた気分。

 お前女性下着触った事無い童貞野郎って言われてる気がする。


「それにしても、肌すべすべだね」

「やめろ、気持ち悪い」

「それじゃ、あとこれを着て、これも持って行きなよ」


 制服を着用し、学生カバンを掛ける。

 うわ、スースする。短パンはかなきゃ。


「時間割とか、登校時間とか覚えてないんだけど」

「鈴と登校したら? 学年もクラスも一緒にしてるから」


 いろんな組織の上層に関係者いるって言ってたな。

 編入手続きとかは全部簡単に出来たんだろうな。

 妹と同じクラスか、まぁ知らないとこに独りより有り難い。


「後これも忘れないでね」


 学生証を渡される。

 名前は、渡辺 竜紀 とされていた。


「綱は退治が終わるまで竜紀って子になるから。竜紀は鈴の親戚設定だからいつも通り話しても違和感はないよ。後これも付けといて」


 そう言って、アーティストが耳に付けているような物のような物を渡された。

 何に使うんだろう?


「高校ってスマホの使用に厳しいらしくてね、でもツクモからの連絡は受け取らなきゃ駄目じゃん? だから、これで聴いて」

「でもこれも付けてたら、没収されるんじゃないの?」

「大丈夫、片耳が聞こえにくいから、補聴器の使用を許可してもらってる。って設定だから」


 自然に付けていられる方法にしたのか。

 医者にも関係者置いてんのか凄いな。


 アメノから、色々と説明を受けていたら、扉がノックされる。


「入ってきて良いよ」


 アメノがそう言うと扉が開き、鈴が入ってきた。

 流石にこの姿、しかも何も聞かされていないとびっくりするだろう。


「お兄ちゃん……?」


 やっぱり困惑するよな。わかるぞ妹よ。何度も兄が経験した状況だ。


「まぁ、この姿には——」

「めっちゃ可愛いじゃん! やった! お姉ちゃんが欲しかったし!」


 予想外のリアクション。

 受け入れ速いな。普通驚くだろ。


「アメノさん! 今日からおにい、いやお姉ちゃんと登校するんだよね?」

「そうだよ、色々世話してあげてね」

「やった! 任せて!」


 おい、待て待て。この反応知ってたな。


「アメノお前、鈴に先に教えてたな」

「だって、突然お兄ちゃんがお姉ちゃんに変わってたらびっくりしない?」

「先に身体が変わる本人の方がびっくりすると思わないかな!?」

「まぁ、今説明したし、いいじゃん」


 喜ぶ妹を横目に、アメノに問いただす。が返答は適当な物ばかり。

 よかねぇわ。でもこれ以上何言っても無意味なんだろうな。


「そろそろ、学校行かなきゃ、時間だよ」

「ほんとだ! 行ってきます!」

「……はぁ、行ってくるわ」


 ハイテンションな妹に引きずられ、家を出た。


 久々に高校まで歩く。それにしても坂道がキツいな。

 鍛えてるとは言え、荷物背負って歩くのはしんどい。


「なぁ、いつからこのこと知ってた?」

「4日前ぐらいにアメノさんから」


 結構しっかり、時間あったじゃん。

 説明期間を設ける事出来たよね。


「受け入れるの速くない?」

「さっきも言ったけど、お姉ちゃんが欲しかったの! しかも、こんな可愛いお姉ちゃんとか最高!」

「そーですか……」


 兄が姉に変わっても自分の欲が叶えば気にならないとか。

 素晴らしい精神してるな。


 そんな話をしていると、学校へと着く。


「まず、お姉ちゃんは職員室行ってね」

「まだ、教室じゃないんだ」


 アメノあいつ、このことすら説明無かったぞ。

 あれか、鈴に説明したとき後で同じ説明面倒だからって、全部押しつけたな。


 職員室へと出向き、説明を一通り受け、教室へと移動する。


「お前ら、まず今日は編入生の紹介するぞ。家の事情で期間限定でここに通うから、仲良くするように。じゃ、自己紹介して」


 そう言われて、教壇に立つ。

 クラスの全員の前に立って何か話しするの苦手なんだよな……

 でも仕方ない、これも鬼狩って金もらうためだ。


「はじめまして、今日からお世話になります、渡辺 竜紀です。よろしくお願いします」


 単調で、ありきたりな自己紹介をする。

 正直、お世話にはならないよな。


「席は、あそこで」


 空いている席を指さす。

 鈴の近くか、これは有り難い。何かあったら助けを求められる。

 言われたとおり着席する。


 ホームルームが終わると、机のまあ割に人が集まった。

 確かに高校で転校してくる人って珍しいしな。

 更に、女子となれば連絡先交換したくなる気持ちもわかる。

 だが、俺は男だぞ。男の考えなどお見通しだっての。


 適当にあしらい、1時間目が始まるまで堪え忍んだ。


(お姉ちゃん、教科書忘れたから見せて!)

(お前…… 置き勉しとけよ。あとお姉ちゃんは止めた方が良いかも)

(何で?)

(親戚で同級生の設定なんだから)

(そっか、なら学校では竜紀って呼ぶね!)


 まぁそう呼ばれた方が、自分の名前を間違えずに覚えられるって利点があるな。


 それにしても、高校の授業か。

 一般教養は、久々に受けるが、案外ついて行けるもんだな。

 1度受けてるってのもあるけど。


 何日かかるかわからないけど、頑張って高校生活を生き抜くか。


 こうして、鬼を退治するための女子高校生活が幕を開けた。


当分女子高生続けようかなって思ってます。すぐ鬼倒しても良いんですが、日常回とか書きたいなって思ってるので、お付き合い願います。評価又は、ブックマークをしてくれたら、やる気が出るので出来ればお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ