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蛇沼影利は休めない

人は容姿だけではありません!

作者: ゴミ製作機

 月が綺麗に見える夜のこと。1人の青年が森を馬で走らせていた。服装やデザインはシンプルながらも素材は良い物を使っているのか、月の光を浴びてキラキラと光っている。しかし残念ながら、容姿は美しくなくずんぐりむっくりだ。そんな彼が向かっているのは、森の中心に立っている巨木【スネーク】だ。なぜ木なのに蛇の名前がついているのか?それはその木の周りにはたくさんの種類の蛇が居ついているからである。そのことから、その木の名前を【スネーク】と呼ぶようになった。馬を使い【スネーク】まで来た青年は、木に祈りを奉げ始めた。


『スネーク様、今日も欠かさず武術の鍛錬と勉学に励みました。どうか明日も僕をお守りください』


 祈りを奉げている彼は、この巨木が立っている国の第二王子なのだ。第二王子ともなれば、王位継承権が上位に来るため普通は護衛を従えている物だ。しかしこの王子は、メイドのしかも貴族の中の最底辺との間に王と一時の誤りで生まれたので扱いほかより酷い。父である王だけが優しく接してくれるがそれが何処まで本気か分からない。更に見た目も、第一王子であり兄のファーストや弟のサードに比べると酷く悪い。恐らく、第一王子のみに何かあったら無実でも関係無しに毒杯を飲ませられるだろう。


『今は亡き母がよく貴方のことを話していました。自分は辛い時、貴方に祈りを奉げることで気を楽にしたと…だから僕に困った時は相談するといいと教えてくださいました。厚かましいとは思いますが相談を聞いてほしいです。

 僕、セカンド・ナンバーは王立の学園に通学しています。兄も弟も同じく通っています、そんなある日のことです。学園に途中編入者がきました。普通はありえないのですが、噂では学園長の愛人の子供だそうです。彼女は学園に来てから全てをめちゃくちゃにしていきました。兄と弟には婚約者がいるのにベタベタとくっつき、婚約者から奪う勢いです。兄の仲間である宰相の息子や騎士団長の倅、大商人の息子にも同様のことをしています。もし、これが母が生前に話していた逆ハーというものを彼女は狙っているのでしょうか?だとしたら僕はどうすれば良いでしょうか?教えてください』


 木から返事は返ってこない。変わりに黒い蛇がセカンドの馬の近くに来た。セカンドは祈りが済むと馬に跨って城へと帰っていった。その黒い蛇が、馬の身体にくっついていると知らずに…

 【スネーク】に祈りを奉げてから、セカンドはいつもの武術の鍛錬と勉学のほかに兄の取り巻き達の婚約者のフォローにも力を入れた。最初は相手にされなかったが次第に変わっていき、彼女達に以前のような笑顔が戻って来た。

 そしてまた、森の中を馬で走り【スネーク】の下に祈りを奉げた。


『スネーク様、今日はいいことがありました。兄の取り巻きの婚約者たちに笑顔が戻ったのです。学園長の娘は相変わらず兄と弟、そして兄の取り巻きたちにくっつきまわっています。さらに、兄と弟は国庫をいたずらに使い例の彼女に貢いでいるそうです。このままでは国が傾いてしまうのではないのでしょうか?私はどうすればいいですか?』


やはり木から返事は無い。しかし、自分の思いを話したセカンドの顔は憑き物がとれた顔をしていた。


・・・・・

・・・・

・・・

・・


「アン・スランフ!君との婚約、いまこの場を持って破棄させて貰う!そして新たに彼女、トラント・ムクミと婚約を発表する!」


 学園の卒業式のあとのパーティでこの国の第一王子ファースト・ナンバーが国の名だたる貴族、他国からの来賓客の前で言い放った。その言葉に国王はため息をついた。

続いて弟のサードも婚約を破棄の申し出をし兄を支えると宣言、これは王位継承権を捨て臣下に下るという意味である。彼の母親(二番目の王妃)は気を失った。さらにファーストの取り巻き立ちも婚約破棄宣言を行った。これだけにあきたらずに


「今日はこの場に似つかわしくないものがいる。そうそれは罪人である!やつは国庫を私欲で使い、更には隣国に度々わが国の機密を漏らしすだけに飽き足らず、私の友人の婚約者達を惑わせたのだ。罪人の名前は、悲しくも我が弟セカンド・ナンバーだ。騎士よ!奴を拘束せよ!」


パーティ会場の隅にいたセカンド目掛けて一斉に騎士たちが動き彼を拘束した。


「誤解です!僕はそんなことしていません、隣国にも行ってません!ましてや婚約者たちとそのような関係を築いたことはありません!」

「フン、夜中にこそこそと隣国へと通じる森へ駆けて行く貴様を何人もの人間が見ているのだ。婚約者達を惑わせたのも同様に証人もいる。あぁ、うるさい口だ。猿轡をして牢に放り込め」


セカンドを連れて行こうとしたとき、1匹の黒い蛇が会場に現れた。貴婦人は悲鳴を上げたが


【黙れ、人間共】


頭に直接響く声でその場にいた王以外、動くことは出来なかった。


「ス、スネーク様!どうしてここに?」

【俺の可愛いガキがピンチの時だ。助けに来たのだよ、ゼロ】

「ち、父上。なぜ、蛇と話しているのですか?」

「黙らんか、この方こそこの国の守り神【スネーク】様だぞ!」


貴族たちの顔には驚きの色が見えた。とうとう、王の頭がおかしくなったと思ったからだ。


【小僧、貴様そんなことも知らないのか?王家の紋章に蛇が入っているだろう。あれは俺だ】

「ふざけるな!そんな訳あるか。大方、この蛇もどこぞで誰かが操っているのだろう?茶番もいい加減にしろ!」

【これを見てもか?】


すると蛇は自分の尻尾を咥えた。すると光り始め、そこには黒装束の男が現れた。その男は、セカンドに近づくと騎士たちを払って助け出した。


【大丈夫か?セカンド】

「あ、あの本当にスネーク様で?」

【ほう、お前は知っていたようだな】

「母に教えてもらいました。真っ黒の蛇は神様だと…王家の紋章に彫られている蛇だと」

【キャーンズか、懐かしい。話をしたいが今はそれで頃ではないからな。お前の無実を証明しなくてはいけない】


そういうと彼は、紙の束を王に差し出した。それは宝石店や花屋などの請求書だった。しかも、宛名は全てファーストとサードだった。


(馬鹿な、アレは処分したはず何故だ?)

【馬鹿な君に教えよう。店では売り上げを明確にする為に、請求書の写しを最低1年は保管しているのだよ。彼らに頼んだら快く写しを貸してくれたよ】


そして次に言葉を上げたのは、取り巻き達の婚約者であった。


「私達からも言わせてください!セカンド様は、婚約者に相手にされない私達を悲しみから救ってくださったのです!」

【わかっただろう?セカンドは無実だ、国庫を私用に使ったには彼ら2人だ。つまり本当の罪人は彼らだ】


王子二人が連れて行かれ唖然とする会場。その中で声を上げたくともあげれない人物がいた。ほぼ空気だった、トラント・ムクミである。


(なんなのよ!こんなのシナリオにはないわ!悪役令嬢じゃなくて悪役王子がでる珍しいゲームだったから、ざまぁが無いと思って逆ハー狙っていたのに!逃げなきゃ)


頭では考えられるが行動できない。


【そして、この騒動の主犯格トラント・ムクミを捕まえよ】

(くそ!汚い手で触るな、なんでうまくいかないのよ~!)

「この度は弊社の『王道お姫様~2~』をお買い上げいただきありがとうございました。牢屋の中で続きを妄想してくださいね?」ボソ

(お前も転生者かぁ!!!)


 言葉を発することなく騎士に連行されるトラント。残されたのはファーストの取り巻き達だけだ。彼らも動けなかったが、拘束が緩んだのか動けるようになった。そしてこともあろうに、婚約者達に婚約破棄の破棄をさせてほしいと、みっともなく申し出たのだ。しかし、これに令嬢達は拒否。自分達以外に1度は婚約破棄された者を拾ってくれる者はいないぞ、と脅しをかけても同様だった。そこに王が会場全体に聞こえる声であることを発表した。


「本来、この場で言う事ではないのだろうがいおう。この度、お主らが一方的に婚約破棄をした場合はされた側に自由に婚約する権利がある、とこのお前達が誓った誓約書に書いてある。そして、彼女達はセカンドを選んだのだ」


これにはセカンドが驚いた。兄や弟に比べると醜い自分が3人もの美しい令嬢と兄の婚約者が婚約をしたがっている。何故自分じゃないのか?醜い豚の何処がいいのか?そう喚く取り巻き達だがアンが令嬢の代表として言った。


「殿方は容姿ではありません。私達はそれをセカンド様で気がついたのです。私達をほったらかしにして、悲しんでいた時に言葉をかけてくださいましたのがセカンド様です。最初は確かに自分達とはつりあわない容姿だと思いました。しかし、話し彼の人柄に触れると私達は彼のことを認めるようになり次第にそれは、枯れた心を潤してくれたのです。彼となら支えあって生きていけると思い婚約破棄された場合、と前置きをして陛下にセカンド様との婚約を申し込んだのです。あなた方が私達を捨てるのは目に見えていたので…」


呆然とする取り巻き達


「ぼ、僕とで本当にいいんですか?」

「[勿論ですわ!]」


1つ、拍手が聞こえたかと思うと連鎖的に広がりそれは会場に広まった。


「貴族達の同意も得た!そして、第二王子セカンド・ナンバーを王大子とする!」


更に拍手は強くなった。


【よかったな。これでお前は王になる】

「なんだか信じられません。こないだまで嫌われ者だった自分がこんなことになるとは…」

【そうか、ならもっと信じられないことをプレゼントしよう】


なにか呪文を唱えたかと思うと、セカンドの周りに光の渦ができ飲み込んだ。光が消えるとそこにはファースト以上の美形の男が立っていた。


【お前の母、キャーンズに頼まれて偽りの姿になるように呪いをかけていたのだ。このことを知っているのはキャーンズと王だけだ】

「こ、これが自分…なぜ呪いを?」

【みてくれだけでなく心も美しくなってほしいというキャーンズの願いだ。では呪いを解いたさらばだ】

「さ、最後に1つだけ!母とはどんな関係だったのですか?」

【親友だ】


そして、男は消えた。後にこの話は『もっとも偉大な王の誕生』として、広く語り継がれることになる。人は容姿だけでなく心も綺麗でなくては幸せはつかめないという話でした。

登場人物~

スネーク

その正体は、蛇沼影利。神さま見習い研修としてまたもや異世界転移させられた。しかも今回は、蛇であり巨木である。解せぬ。童貞歴が遂に450年になったため、ある程度の自由が利くようになる。その時に、初代国王とキャーンズを救った。セカンドはキャーンズの頼みで救った。


セカンド・ナンバー

『王道お姫様~2~』の悪役令嬢ならぬ悪役王子の立ち居地にいた。醜い容姿に醜い心で、兄弟を殺そうとし、国庫を私利私欲で使い最後はヒロインと攻略対象と断罪される…というゲームの話のはずだった。しかし、幼い頃の母親(キャーンズ)の教えと父親の優しさそして、相談できる巨木のお陰でいい男になった。スネークが呪いを解いたといったが、人の心は顔に出るということである。


キャーンズ

『王道お姫様~1~』のヒロインであり、転移者である。イベントCGを手に入れるため、巨木に祈りを奉げるとスネークが出現し驚きつつもこの世界について質問をしていく。のちに攻略対象者である【ゼロ・ナンバー】を攻略しに、セカンドを産みゲームクリアとなり現実世界に戻される。現実世界に戻されるのは5年後と分かっていたので、もし自分と同じ存在が出て来たときのためにスネークにセカンドのことを頼んでいた。


ゼロ・ナンバー

『王道お姫様~1~』の攻略対象者である。キャーンズとは真実の愛で結ばれるはずだったが、そうは王家が許さなかった。彼女が帰郷後、セカンドを本当に愛していた。


トラント・ムクミ

『王道お姫様~2~』のヒロインであり転移者。逆ハーを狙うが失敗に終わる。


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名前はスネークを除き、数を元にしています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] さらーっと読めるところ良かったです。 [気になる点] ご令嬢達は「男は顔の美醜よりも心の美しさ」と思い至ったばかりなのに、その相手がイケメンになったら戸惑うのでは。 もちろんイケメンの方が…
[気になる点] わざわざ自分の容姿が醜くなるような呪いをかけるように頼んで消えた母親と呪いをかけたスネークに恨みごとひとつ言わないのはちょっとなぁ
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