その目が見ているもの
約2ヶ月ぶりで申し訳ないです。
退屈で瀕死間近だったオーリスはたまらず領外に出た。
そしてすぐ問題が起きる。
「貴方は魔王オーリス・ロイスで間違いないですね?」
「そうだけど。何か用でも?」
何故か目の前にはフードを被った人間が立っている。
「貴方に恨みは無いけれどお命を頂きます。失礼…」
目の前から消えた錯覚するほどの速さで人間は動きオーリスの側面から剣を向ける。
その動きに躊躇や乱れはなく、それでいて何より静か。
この技量に達するまでどれほどの時間と努力を重ねてきたのか想像も出来ない。
「退屈しのぎに相手はしてやるけどそっちも命掛けろよ」
しかし、その動きはオーリスにははっきりと見えていた。
剣を弾かれ体勢を崩した人間に容赦なく追い討ちをかけるオーリス。
ただの拳が凶器と化す。
人間も負けじとオーリスの拳を剣で受け流しながら隙を突いて再び斬りかかる。
何度か接近戦での攻防を繰り返しようやくオーリスの肌に傷をつける。
「その剣が凄いのか、それとも腕がいいのか。はたまた両方なのか。所であんたの名前、まだ聞いて無かったけど」
「名乗るほどではありませんので」
「そっちは名前を知ってるのにこっちが知らないじゃフェアじゃなく無い?」
「それもそうかも知れませんね。なら死んだ時に名乗らせてもらいますよ」
人間の雰囲気が変化した。
この雰囲気は相手が覚悟を決めた時特有のモノ。
人間は剣を上段に構え全力でオーリスに正面から向かってくる。
「俺が言うのも何だけど自分の命は無駄にしない方がいい」
オーリスは相手の剣を左手で弾き、相手を仰け反らせ相手の胸部に拳をめり込ま…。
ムニュッ。
ムニュ?
ムニュ、ムニュ??
胸当てを破り人間の身体に拳が触れると何とも言えない感触が伝わって来た。
なので直ぐに拳を引いた。
「えっ!?男じゃないの!?」
「…」
「性別どうこうとかは全然気にして無いんですけど!てっきり35歳位のおっさん剣士だと思ってたもんで」
「私はまだ19歳だ!」
「えー…。だって酒焼してるよーな声してるし」
「色々理由があるんだよ!地声だ!馬鹿やろう!!」
オーリスの気分は一気に冷め切ってしまった。
人間相手に男だ女だは関係無いとは言え何故かファウスの影響もあってか種族が違えど女性には手を出せない。
出さなくは無いが、手を出すとその後の罪悪感が…。
まぁー尋常じゃない実力を持った女性達も多々いるが。
アオス姉様、フフルさん、カリーヌ、オベルにリアとか。
ロハスとディアは違う意味で怖い。
「マジか!?何?声変わりしちゃったの!?」
「コレは昔、親に…」
オーリスは察した。
どこの所属の親にもいるアレかと。
「つまりそれは怪我の後遺症って事ですよね?」
「それがどおした!貴様の命を狙っている事…に…変わりは…アレ!?この声は…」
オーリスから飛び出した光の輪が人間の頭上で光りを捧ぐ。
「罪深き人間に天上からの加護を授けよう」
光の輪が告げる。
「うるさい。早く戻って来い」
「ヘイヘイ…久々に出てきたってのに」
戸惑う相手にオーリスが答える。
「それのお陰で後遺症は治ったはずなので。どうですか?」
「あー、あー、あーー…。本当だ…私の声、こんな声だったんですね…」
「みたいですね。それじゃ」
オーリスはその場から逃げるように離れようとしたがそうは問屋が卸さない。
「声を治して頂き感謝してます」
おー。綺麗な声。
「お気になさらず」
「けれど魔王である以上は。ご理解下さい」
「ご理解って…」
「私の名はラーク・マティータ。エルアルディ聖王国から下された命により暗殺者の1人として失礼します」
マティータからの最大限のお礼をオーリスは受け取る。
「暗殺者の1人か…めんどくさ」
ラークと名乗る女性は両手持ちから右手の片手持ちに切り替え空いた左手でもう1本の短剣を握る。
「両手剣とは珍しい」
ラークの姿が1人から2人、3人、4人と増えていく。
実際には増えていないが動きの速度と歩き方で残存を生んでいるようだ。
今確認できる人数は8人。
上下、左右、前後からの同時攻撃。
「お前は後ろを片付けろ」
「指図するな、猿如きが」
黒い霧が後方からの攻撃を防ぎ、白い雲が前方の攻撃全てを弾き返す。
「そっちが8人でこっちが2匹。文句はないよな」
「おい。2匹とはなんだ。お前さんを含めて3人だろ。サボるな」
「私1人で充分」
「しかし幻影ではなく現影か。分身すらもリアルな攻撃を仕掛けてくるとは中々面白い人間もまだいたとは」
雲が集まり形を成していくとそこには真っ白な猿が足組して空中に浮かび、オーリスの肩に黒い霧から生まれた黒猫が座る。
「呼んでもいないのに…これくらい俺1人で」
「馬鹿言うな。万が一があったらあの方に顔向け出来んだろ」
「俺は助けるのが仕事」
「この2匹出てきたら…やめといた方がいいよ。自分で言うのも何だけど、リアル化け物だから」
「化け物とは失礼な!冬雪と言う名前がある!」
「不愉快。私はアル」
「いやいや!自分の姿見てみろよ!空に浮かんでる真っ白な猿と!姿をコロコロ変える黒い霧?化け物でしょ!ねっ!そう思うでしょ!?」
ラークに同意を求めるオーリス。
「それは…」
「それは?」
そんな会話の中現影の6体が消え残りの1体が見当たらない。
「だから言ってるだろ。無理だって」
オーリスの首もとから剣が弾かれる音がした。
無色透明な姿でオーリスの隙を狙っていたがこの2匹の前ではやはり無駄だった。
「見え見えじゃよ。最初から」
「無駄」
アルの黒猫の尻尾がオーリスの首もとへの攻撃を防ぐ。
さらに冬雪の周りに浮かぶ雲が攻撃してきたラークの後ろから9人目の現影がラーク自らの背中を貫きオーリスの心臓を狙った攻撃を防ぐ。
「現影貫いて大丈夫なのか?」
「はぁー…。はぁー…。はぁー…」
明らかに大丈夫ではない。
オーリスから離れて身構えていたラークが突然吐血し、さらに胸元から血が垂れ流れてきた。
「原理は知らんが多分。現影からの反動だろうな。影の攻撃も本物それゆえ受けた攻撃は全て本体に返ってくる諸刃の刃」
「何ぜ、そこまで?」
「命が…掛かっている…」
血を流し過ぎた影響でラークは地面に倒れた。
「命が?意味わからんけど。借りは返しておく」
ラークはしばらく倒れていた。
そして起き上がると自分の現影が貫いた背中からの傷は綺麗に消え痕すら残っていなかった。
そしてオーリスと2匹の姿も無かった。
ラークはオーリス暗殺に失敗した。
それから何度も人間達に襲れそして全て返り討ちにした。
2匹が。
名乗りはしなかったが多分、エルアルディ聖王国から向けられた者達で間違いない。
そして今度は人間でなく目の前に現れたのは魔神と名乗る見たことがない相手。
「何?今日は厄日なの?」
「コレがファウスが言ってた末席魔王か」
「なんか久々に聞くなそのフレーズ。今は末席じゃないけど」
「そうかそうか!そうだった!それは失礼した!」
「魔神ってはるか前に神と一緒に自滅した種族?だったか?復活おめでとう!」
「中々生意気な魔王だったか。まだ手は出すなと言われたし顔だけ見て帰ろうと思ったがやめだ」
魔神なる相手はオーリスに近づき手を差し出す。
その手をオーリスは握ると腹部に蹴りを入れられた。
「手は出してないからな」
後回し、後回しになり申しありません。
嘘つきな猫はイメージ悪いのでMor Iになりました。
Twitterで投稿予定日更新してますのでよければ。
もうすぐ100話。
序列変動編は…おさまるだろうか…。
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