圧倒的やる気
手首と肩を回し、自分本来の体の動かし方を確認する2人。
「んーっ…だいぶ身体が鈍ってるなー」
「俺も最近、親父の稽古から逃げてたからな。こんなのと戦うなら真面目にやっとけばよかった」
「後悔先に立たずだな」
「確かに。後悔はよくない。だから俺は美しい者に時間を使いたい!」
「そーか。勝手にしてくれ」
オーリスは久しぶりにファウスに呆れた。
「ところでドラゴンと戦った経験はあるか?」
「そーだなー。カリーヌって覚えてるか?」
「あー、あのお前が作ったよくわからん街に住み着いてるドラゴンだろ?」
「そーそー。アイツと軽く戦った事があるくらいなら」
「それで勝ったのか?」
「傷つけないよーにしてたし、それに本気じゃなかったとはいえ軽く押さえつけられたな」
「マジかよっ!ドラゴン半端ねぇーな!こっちのはその倍だから…って、考えても何もかわらないか」
「そーそー。何事もやってみない事には結果はわからないって」
「いつも何もしない奴に言われたくないけどな」
「いやいや、ファウス君。最近思うんだよ」
「なんだよ気持ち悪い」
「よくよく考えたら最近の自分、働き過ぎなくらい色々頑張ってることに気づいたのさ」
「まぁー魔王だからそれ位は当然だろ?」
「遠征したり、魔王と戦ったり」
「まぁー、全部仕事の一環だしな」
「いやいやっ!俺頑張り過ぎじゃない!?」
「何言ってんだオーリス?全ては結果。結果の伴わない過程なんてクソの価値もない。って親父が言ってたぞ」
「お前の親父は厳しいなっ!俺の…もういいっ!」
「拗ねるなって!俺はお前が元末席のどーしよーもない屑魔王でも、死ぬまで一緒に馬鹿やる心友だから心配するなって!」
「なんか棘があるなー」
「そーか?」
「まぁーいぃ。俺はこの件が片付いたら休むっ!仕事なんてしないで起きたい時に起き、寝たい時に寝る。やりたい事をしたい時にして、やりたくない時は何もしない。そんな生活を俺はおくるって決めた!」
「そーか。まぁー頑張ってくれ。あっ!でも楽しそうな事する時と、美女に会う時は声かけろよ!」
「もーそろそろ夏だし。長期休暇もありだよな!」
「夢の長期休暇する前に、取り敢えずは目の前のあいつはやっとかないとな」
ドラゴンは咆哮し、長く太い尻尾を振り上げ2人に向けて叩きつける。
2人は左右に分かれてドラゴンの攻撃を避けた。
「どこ見てんだよっ!」
ファウスがドラゴンの胸元に潜り込み、肉が崩れ落ち露出している肋骨を手加減なく蹴り上げる。
するとその衝撃で肋骨にヒビが入り、一瞬ドラゴンの体が数センチ地面から浮いた。
「硬ってぇー!!なんだあの骨っ!?さすがに殴る蹴るで殺せないか」
「ならっ!」
オーリスは抜いた剣でドラゴンの首を切り落とす。
つもりだったが硬く鱗に覆われた皮膚に剣は通らなかった。
「マジかよっ…」
しかし、傷つけはできなかったがその衝撃だけはドラゴンに伝わり長い首が横倒しになるほど揺れた。
2人の攻撃でドラゴンは暴れだす。
「やばっ!テンション上がってキタァ!」
ファウスは叫び横っ腹に巨大な氷の塊を打ち込む。
「恨みはないけどストレス発散に使わせてもらうなっ!」
オーリスは顎を殴りあげ数本の牙が宙を舞う。
ドラゴンも負けずに炎を吐き出しオーリスとファウスに応戦するが息の合った2人の攻撃を止めることはできなかった。
「せーのっ!」
「いっせーのっ!」
「オーリスタイミング合わせろよっ!」
「いや、俺に合わせろよ。それにお前の掛け声だとタイミング取りづらいだろ!」
「はぁ!?普通は、せーの!だろ?」
テンションが上がりきり興奮状態の2人。
魔族の血がそうさせているのか珍しく些細な事で喧嘩した。
そんな隙だらけな2人をドラゴンは見逃さない。
血の涙を流す眼を見開き、魔法を使う。
大地が揺れ、空気が振動する。
口から吐き出された炎が段違いに強化され激しい渦となり、今までとは比べものにならない速度と、威力で2人目掛けて飛んでくる。
「向こうもヤバそうだけどこっちも…」
2人が気づいた時には直撃した後だった。
オーリスとファウスがドラゴンに挑んでいた頃。
「なぁんだっ!?あの2人は!?」
「クラスタ王国の人間?…いえっ!あれは魔族です!!」
「なんで魔族がクラスタの味方を。いや、我々の邪魔をしている!!」
「そこまではわかりませんが、明らかにドラゴンに攻撃を繰り返しています!!」
「くそがぁー!邪魔しおって!殺せっ!クラスタ王国共々ぶち殺してしまぇっ!」
「はっ!」
少し離れてドラゴンを操っている人間達に王からの命令が入る。
「全力を持ってあの魔族とクラスタ王国を滅ぼせとのこと!!」
フードを被った怪しげな集団は頷き、再び散った。
「はぁー。危なっ!」
「今のはマジでギリギリ…いや、アウトだったな」
よく見なくてもファウスの右腕が吹っ飛んでいたのが見えた。
「ファウスってよく腕なくすよな。呪われてるんじゃないか?」
「確かに。マジで呪われてんのかな…後でミュゼのネックレス触っとこ」
「俺は呪われているかと思ったけど違ったけどな」
「お前は呪われないだろ」
「魔王の座を狙う相手とか、俺をライバル視してる相手とかから」
「ないない。お前が魔王降りたら多分俺がなるし。それに元末席を誰が敵視すんだよ。もしされていたとしてもその相手、志し低過ぎだろ」
「確かに」
喧嘩の事なんて忘れ再び雑談する2人をドラゴンが襲う。
再度、魔法で強化された炎を吐き出そうと口を開き狙いを定める。
「何度もくらわないって!」
ファウスが大きく空いた口横を残った左腕で殴り飛ばしドラゴンはそのまま倒れた。
2人がドラゴンをボコボコにした結果。
ボロボロだった鱗や皮膚はさらにボロボロに、爪は剥げ、牙は抜かれ、羽は引きちぎられ見るも無残な姿になり圧倒的な力を見せつけたが、それでもドラゴンは動きを止めずオーリスとファウスに襲いかかってきてくる。
「このドラゴンどーなってんだ!?こんだけやられたら普通死んでるだろ!」
「確かに言われて見たらそーだけど。実際、もともと体が崩れかかって瀕死っぽいけど、まだ死にそうにな感じじゃないな」
ぶち殺す気で攻撃を繰り返すが見た目とは違い、そんなに効いているようには見えなかった。
ドラゴンに集中して周りを一切気にしていなかった2人が、ようやく周りの気配に気がついた。
周りと言ってもそれはオーリス達からはかなり遠くに離れている人間の気配。
しかし、怪しげな動きと、統率のとれた集団だからこそオーリスに気づかれてしまった。
「ファウス。向こうに認識阻害魔法つかっている怪しい集団がいるけどこのドラゴンと関わりあると思うか?」
「確かに言われてみるといるな。どーかな。距離的に離れ過ぎじゃないか?人間があんなとこからドラゴンを操れるとは思えないけど。気になるなら消してこよーか?」
「万が一ってこともあるし。クラスタ王国の人間なら殺すなよ!」
「はいはい」
「ところで腕はいつ治すんだ?」
「あー。忘れてた」
ファウスは自分の腕を再生させ、1人その場から離れ集団の元に猛スピードでむかう。
人間の集団もファウスの存在に気づき移動しようとしたがそれはできなかった。
「逃げれると思ったか」
その声を聞いた人間が後ろを振り向くと3人の仲間の首が跳び、1人は首を掴まれ持ち上げられていた。
「時間の無駄は嫌いだ。お前はどこの誰だ。3秒以内に答えろ」
フードを深く被る相手が腰を抜かして地面に倒れた。
「悪い。一応確認させてくれ。女はいないよな?それと、どー見てもクラスタ王国の人間じゃなさそうだから勢いで殺したけど…違うよな?」
「放して…くれ…」
「質問に答えたら考えてやる」
「女はいない。それに我々はクラスタ王国の人間じゃない」
「そーか。男でよかった。約束通り放してやる」
ファウスはそう言って首をへし折り手を放した。
「で、残ったのはお前だけだけど、ドラゴンと関係あるの?」
「王に命令されて…」
「へぇー。人間がドラゴンをねー」
話を聞くとファウスは男の首を即刎ねた。
「悪いけど俺たちの情報が伝わったら困るし、お前らのせいで死んだ相手や死にたくても死ねない相手もいたんだから恨むなよ」
人間を片付けるとオーリスの元に戻る。
「オーリスの思った通りあいつらが関係してた」
「俺もそう聞かされたとこだ」
「誰に?」
「アプタルトに」
「いやっ。だから誰!?」
「目の前のコイツだよ」
オーリスはボロボロになったドラゴンを指差した。
「えっ?」
「ようやく…私は…死ねる…の…か?」
「アプタルトって言うのか。人間から色々聞いてきたけど、オーリスも聞いたみたいだし話す必要はなさそうだな」
「アプタルトから色々聞いた。中途半端な蘇生や、腐った体の痛み。死にたくても死ねない体」
オーリスの顔が曇る。
「まぁー。怖い顔するなって!人間は片付けてきたからこれでアプタルトもゆっくり眠りにつけるはず!」
オーリスの肩を叩いて、背中を押す。
「???」
「何変な顔したんだよ。さっさとそいつを楽にしてやれよ。ドラゴンも、魔王に殺されたなら納得して死ねるだろ?」
「あり…がとう」
「きにするな!もし美人な女な生まれ変わったら恩返しせにくてくれよっ!」
オーリスは剣を抜き魔力を込める。
魔力に反応した剣は光のオーラを纏い白く輝いた。
「俺は元末席魔王。オーリス・ロイス。ゆっくり眠りにつけ」
飛び上がり眼を閉じたカリーヌの頭部から真っ二つに胴体ごと切断し、アプタルトは動かなくなり身体は溶けていった。
ファウスへアプタルトに手を合わせた。
「何してんだ?」
「こーゆー時はこーするんだよっ!」
ファウスに言われるまま、オーリスも手を合わせ空を見た。
そしてファウスに告げる。
「ちょっとこの戦争に興味がでたから積極的に関わる事にするな」
「お前がやる気出したなら当然俺もやるからな!」
アプタルトが天に召されたこの時すでに、クラスタ王国は侵略されている真っ最中だった。
再試が確定し、明日もテストがある。
嘘つきな猫です。
暑さも嫌だがテストもあるとは、、、。
それでもなんとか20万字まできましたー!
俺頑張った!
それもこれも読んでくれた方々がいたからだとつくづく思います。
今後とも宜しくー(笑)




