議論
「誰だお前は!?」
オーリスは席に座り議論していた偉そうな連中から大声で質問される。
「ファウスはいないな。失礼しましたー」
そんな聞き慣れた質問には答えない。
「ちょっと、もしかしてオーリスなのか?」
「もしかしなくても俺だよ」
「顔を隠していたので一瞬わからなかった。済まないが力を貸しては…」
「悪いけど、そー言う面倒な事はやってないので」
オーリスはジョルジュの頼みをきっぱりと断った。
「なんだその態度はっ!国王に対して礼を尽くさぬ態度!失礼だろうがっ!!」
「へー、それは失礼しました。けど、この国の次期女王を救ってやった俺にはそんな態度でいーんだな」
「馬鹿な事を言うなっ!お前とは我々とでは身分が違う!身分がっ!」
「身分ねー。なら偉いのに次期女王を助けられずに殺しかけた相手と偉くもないのにクラスタ王国の宝、この国の未来そのものだと言う女王を救って更には自国まで送り届けた者、どちらの相手に価値があると思う?」
「貴様っ!我々を侮辱するつもりかっ!」
オーリスの売り言葉に買い言葉に対し、席を立ち剣を握る者が何名かいた。
「ところでお前らが今、剣を向けるべき相手は他にいるんじゃないのか?こんな下らない話をしている間も誰かの大切な相手がどこかで死にかけているかも知れないと言うのに。お前らは大切な人を失った相手にも身分が違うのだよ!身分がっ!って言うのか?」
「兵士は守るのが仕事っ!それが愛国心と言うもの!」
「なら戦っていないお前の大切な人には愛国心はないというのか?」
「そんな反逆者は我々の中に1人もいないっ!だからこーして今後の対策を話し合っているのではないか!」
「なら、お前らの大切な相手を教えろよ。俺が全員戦場のど真ん中まで無事に連れて行ってやる。文字通り身を呈して相手を食い止めてもらい、その間にゆーっくりとお前らは今後の対策の話とやらを議論してはどーだ?国の為に皆んなが一丸となった方がお前らも少しはやる気がでるだろ?」
「それは…」
「各々の役割と言うものが…」
「我々は我々の仕事に専念する必要が…」
「どーしたんだ偉い人。早く愛国心とやらを見せろよ。国王の目の前で忠誠を示せる絶好の機会だぞー。誰か1人くらい、他の誰よりも国を1番に考え、思ってる奴はここにはいないのかー?」
オーリスの目を見る者は誰もいなかった。
「もー許してやってはくれないか?今はそれどころではないんだよ」
ジョルジュが止めた。
「まー人間なんてこんなもんだろ」
「オーリス。私だってミュゼを戦場に送り出したいとは思わない。いくら立場が大事とは言え最愛を失いたくないのだよ」
「なら、さっさと意見をまとめた方がいーぞ。じゃないともれなく皆様の大切な人があれやこれやと非人道的な扱いを受けたり、よくて真っ先に殺されるだけだからな。ちなみに俺の予想では持って3時間。相手側に隠し玉があれば今すぐにでも門は破られ街は火の海になるかもよ」
「何に!?それは本当かっ!?」
「さー。俺の予想が当たっても外れても、滅ぶのはお前らのこの国で俺には全く関係ないし。せーぜー国が乗っ取られないように頑張れよ」
そう言い残してオーリスは部屋を出た。
「ふぅー。悪役も疲れるわー。なんで魔王の俺が人間の為にこんな事までしなきゃないんだよ…。まっこれで少しは真面目に自分より、国を守る為に話し合うだろ。でも人間だからこれなー。無理なら別に滅ぶべくして滅んだって事でいーけど。それよりファウスはどこでなにしてんだよっ!」
その頃ファウスは戦場のど真ん中にいた。
「いーね、いーね!元気があっていーねっ!」
相手から奪った長く重い剣を両手に持ち、敵軍に1人突っ込んでいく。
「なんなんだっ!あれはっ!」
「こんな強さ化け物じゃないかっ!」
「所詮は1人、数だっ!数で押し切れぇー!!!」
相手は数にものを言わせてファウスを責め立てる。
しかし、ファウスが剣を一振りする度に相手の数が10数名減っていく。
「どけっ!どこだ化け物はっ!」
敵軍の後ろから大きな男が威勢良く出てきた。
「こんなチビが化け物扱いか。お前ら兵士共はこれだから使えないって言われんだよ。恥をしれっ!」
「ん?」
ファウスは手を止め大男を見た。
「おいっ!そこの若いの、威勢はいいが俺の前でもそんな態度でいられるか!?」
大男は笑いながらファウスに質問する。
しかし、ファウスは何も答えなかった。
「見てみろよみんなっ!俺を見てビビっちまったよーだぜっ!まぁー俺のように3等級にでもなればオーラ…で…相手を……」
「一応、待ってやったがさすがに長いっ!戦場で口数多い者から死ぬって習わなかったのか?」
ファウスは飛び出して男が笑っているところを、正面から剣を振り抜き首を刎ねた。
「ひぃぃぃー」
「まさか…3等級のディードがやられるなんて…」
ディードが一瞬で殺されたのを目の前でみた兵士達が一歩さがる。
今まで上官に従い命を捨てて攻めてきた相手兵士の勢いが止まった。
「次はー?やる気ないなら別の場所行くけど、どーすんだ?」
誰も返事は返さない。
正確には返さないのではなく、返さなかった。
恐怖で身体が震え、歯をガチガチ鳴らしながら立っているだけ。
「これ以上、お前らと戦っても何にも面白くなさそうだし。このは任せて他行くわ」
敵軍の熱が冷めたのを感じるとファウスは敵に背を向け別の場所に向かった。
そんなファウスの行動を知るよしもないオーリスはウロウロとファウスの姿を探したが、先に見つかったったのはミュゼ達だった。
「オーリス様っ!どこに行っていたのですか!?探したんですよっ!!」
なぜかオーリスは怒られた。
「それよりこの姿は?顔なんて隠してるし、きているものもちょっと不思議な感じだし」
「こんな姿なのにミュゼはよくわかったな」
「当然、わかりますよ?」
「そんな事より他国から責められているのに案外落ち着いているんだな」
「だってクラスタ王国ができてから数百年以上の歴史の中で幾多の国が攻めて来ましたが今まで1度もこの国への侵入を許した事がないからね!今回もきっと大丈夫です。それにすでに魔王がこの国に侵入してますし。しかもこの城内を堂々と歩いている異常に比べたらどーって事ないでしょ?だから心配する必要がないんです!」
「確かに言われたら異常事態だよな。なら、この国を守りに来たわけじゃないから俺には期待するなよ」
「もー。オーリス様は意地悪いうんだからー!」
「それでどこの国が攻めてきたんだ?ファウスに詳しく聞こうと思ったのに見つからなくて」
「ファウス様なら暇だから遊んでくると言って、元気よく馬に乗って外に出て行きましたよ?」
「まじ?あいつはまた勝手な事しやがって!死にはしないだろーからほっとくけど」
「私も詳しくはわからないのですが、遠くに見える旗の紋章を見る限り…あちら側はクラスタ王国の南部に位置するサルータ共和国で、あっちのほうはその隣国、ラバブ国ですね。全体は見えませんが最低でも2国が同時に攻めてきていると思います」
ミュゼはオーリスにスラスラと窓の外を指差しながら説明した。
「ミュゼはそんな事まで知ってるのか?」
「あっ!私を馬鹿にしてましたね!これでも次期国王候補ですからね!お勉強はちゃんとしてるんですよ!」
「ただのわがまま娘だと思ってた!」
「もー!…でも、なんで対立国のはずのサルータとラバブが同時に攻めてきたんだろ?たまたまなんて事はないと思うけど…」
ミュゼは不安そうに外を眺めた。
その時オーリスは全く違う事を考えながら戦争の行方を眺めた。
テストです。
来週はテスト。
嘘つきな猫です。




