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末席魔王。オーリス・ロイスは今日もサボりたい。  作者: 嘘つきな猫
第1章 堕落の始まり 編
1/97

面倒ってなんだろ

 初投稿なため、読みやすさなどを気にして書いてみましたが書き方もわからないままなのでご容赦ください。少しでも楽しんでもらえたら幸いです!


どうぞよろしくお願いします(*´ω`*)

 _____「これで魔王定例会議を終了する」


 中央に座る者が解散を指示すると座っていた他70名が立ち上がりそれぞれ動きだす。


 近くの相手と会話する者。

足早に部屋から出ていく者。

中央に座る者へ挨拶をしに行く者。


そしてそれ以外の者。

二人だけがその場を動かずにいた。


 1人は中央の席に座り、多くの相手に囲まれ会話の中心にいる人物。


 そして、もう1人は・・・。


 末席に腰掛け、机に突っ伏して居眠りをしている者。


 居眠りしている者に対しみな冷たい視線を向け、話しかけることもせず、当然起こそうともしない。

 それぞれ用が済むと1人、また1人と部屋から出て行った。


「はぁー・・・」


 最後に中央に座る人物が立ち上がり、居眠りする相手を見ることもなく部屋を出て行った。

 それと同時に眠っていた者が目を開け起き上がる。


「んがっ?!・・終ったのか?んーーーっ!よしっ!終ったみたいだし・・・帰るか」


 欠伸をしながらおもいっきり体を伸し思う。



 今日も平和で何よりと。

 


 椅子から立ち上がり、扉を出ると目の前には1人の女性が腕組みして立っていた。


「やっと出てきた。オーリスは最後まで何をしていたのかなっ!」

「真剣に話しに取組んで・・えぇー・・・・色々と政事について、考えていた。内製とか財現とか?・・・」


 オーリスは女性の横を腕組みし、悩んだ振りをしながら素通りしようとしたがすぐに後ろから右肩を掴まれ引き止められる。


 右肩がもげる。。。


「どこに行くのかな?政事?内製?財現ねぇー・・。政治でしょ!内製ってなに?!内政だから!財現?財源のことなんか任せっきりで考えた事無いでしょ!!」


「あっー・・・部下を信頼するのも上に立つ者としての役目かなと」


 少年は視線を右上にそらした瞬間、銀髪の女性は目を細め右手を振りぬく。


「パンッ」


 オーリスの目の前に回り込むと躊躇無くビンタした。


「オーリス。いい加減にしなさい!」


 女は相手を諭すように言ったが、オーリスの表情は何も変わらない。

 ただ静かに、そして申し訳なさそうに左頬をさするだけ。


「いつまでそんな態度でいるの?周りからあなたがなんて言われているか知ってる!?」


「さー。周りの評価に興味は無いから」


「堕落王よ!悔しくないの?!」

「堕落王かー。カッコいいとはいえないけど、それでも一応、王は王。それに事実だから反論のしようがない」


 女が再び鋭い視線をオーリスに向け、右目がピクリッと動いた。

 その姿をみるとオーリスは溜息一つして答える。


「・・・わかった。今度から気をつける」

 

 反省の言葉を聞くと女の目は優しい目に戻った。


「本当はオーリスが真面目で優しい事、私は知ってるからね!」

「そんな時があっただろうか・・・」

「ありました!何百年月日が流れてもそれは変わりませんっ!」

 

 向かい合う男女の会話はズレてなお成立していた。

 そんな廊下の真ん中で説教を受けるオーリスに近づく影。


「寝坊助坊主はやっと起きたのか」


 気配もなく突然後方から手を伸ばし、オーリスの頭をグシグシとなで回す男。


「お父様っ!もっときちんと叱って下さい。それではオーリスの為になりませんっ!」


「おっ。もうロイス家の若奥様気取りとは!お父さんは悲しぃー」

「ふざけないで下さい!」

 

 恥ずかしそうに少女は頬を赤らめた。


「冗談だ。冗談。ディア。落ち着きなさい。女っていうのは、なんで好きな男の面倒を見たがるのかねー。アオスも結婚する前は・・・」


 男は遠くを見つめた。

 懐かしむかのように凄く遠くを見つめた。


「これは、これは第14席、アマド様。末席の私なんかに14席様の貴重な時間を使っていただき恐縮ですが、私も急ぎの用事がありますのでこれで失礼させていただきます」


 色々考え、すぐにオーリスはその場を立ち去ろうとした。


「そんな他人行儀な。お義父様でかまわないぞっ」


 男は豪快に笑いながらオーリスの背をバシッバシッ叩いている。


「・・・・」


 普通に痛い。か弱い人間なら上半身が弾け飛んでいる強さで叩かないで欲しい。


「あなたー。どこですか?」


 男の後から凍り付くように冷たい言葉が鋭く飛んできた。


 背中にゾクッとくる気配、オーリスとアマドはゆっくりと振り返りながら声が飛んできた方向に視線を向ける。


 その先にいた相手は、優雅に見る者を魅了する色気を振りまきながらも、一瞬の隙すら見せずに歩いてこちらに近づいてきた。


「オーリス・ロイス。元気でしたか?」

「はいっ!」


 オーリスは今年1番の声を張り、ハッキリと気合いの入った返事をする。


「何をそんなに緊張しているのですか?前のようにアオスお姉様と呼んでかまわないのよ?」


「いえっ!」

「あら、もーお姉様と呼ぶ歳でないと?」


 その場の空気がピシッと音を立てた気がした。


「そういうわけではありません!いつお会いしても美しく、可憐であります!誘われればいつでも、どこでもお供させていただきます!」


「あらまー。女性へ礼を尽くせる男性は好きですよ」


 アオスの機嫌がよくなったのか、口元を隠し笑っている。


「でも、私には大切な旦那がいるのでそういったことは娘で我慢しなさい」

「はっ・・・い?」

「それはそーと・・。あなたっ!私との約束を無視して何をしていたのかしら?」


 その場からゆっくり去ろうとしていたアマドの顔から一瞬で血の気が引く。


 オーリスは思う。

 やはりここは危険だと。


「いやぁー・・。つい・・!そう!そうだよ!いずれ娘の旦那になる相手とのコミュニケーションだよ。2人もそれなりの歳だ、いつ子供が出来てロイス家に嫁ぐか分からない!だからいつその日が来てもいいようにと思って。なっ?!なっ?!」


 すみませんが、こっちに話を振らないでもらいたい。


「あら、そのうち私に孫ができるのかしら?」

「お母様っ!子供はまだ先の話です・・・よね?」


 三者三様の顔でオーリスを見てきた。


 オーリスは何とも言えないような笑顔を返す事しか出来なかった。


 ただ、子供を作る予定も、嫁ももらう事についても考えた事すらありませんっ!


 なんて言える雰囲気ではない。


「結婚と子供の話まで。フッフッフッフ」


 アオスは満足そうに笑った。

 その笑い声は男二人の背筋を密かに凍らせる。


 こちらに笑みを向けているのは現第14席魔王のアマド・ハイロットの妻であり、ディアの母親。そしてオーリスの母親の姉に当たる、元アオス・ロイスこと。


現アオス・ハイロットである。

 

 小さい頃から自分の子供のように甘やかしてくれているのだが、正直苦手な相手の一人。


 そしてなにより、決して逆らってはいけない人物の1人。

 

 オーリスがまだ幼い頃、石につまずき怪我をしたことがあった。その時、何を思ったのか突然石にブチ切れたアオスは石ごときに最上位爆裂魔法を放ち、辺り一帯を消滅させた。


 それ以外にも、木が邪魔だといって森ごと消滅させたり、俺が溺れかけた湖を蒸発させ助けてくれたりと、やることなすこと加減が過ぎる。


 そしてそんな事をなにも躊躇せずに行える自信と実力の持ち主。


 そんな相手に逆らう理由は一生見つからないだろう。


 アマドも機嫌を直したアオスの様子を見てホッとしているが、なぜこの人はアオス・ロイスと結婚したのかいまだに不思議で仕方が無い。


 まさか・・・・脅された?!

 まさかー・・・あり得そうだから余計に怖い。


「なにか?」

「いえっ!」

「まー、冗談はさておき・・」


 再び冷たい言葉が耳の鼓膜を震え上がらせる。


「急ぎの用がありますので失礼します。ご挨拶は後日改めて。では!」


そう伝えると、オーリスはディアの静止を振り切り、アマドの必死にすがる右手を蹴り飛ばしてその場を去った。


 これ以上あの場にいたらこちらの身がもたない。 


14席様、頑張って!


 心の中でアマドにエールを送り、オーリスは近くの窓をぶち破って飛び降りた。そしてそのまま魔界大都市オルタラの空を飛びながら、ある人物を探す。


 しばらく中心街を探し続けやっと見つけ、その場に降りた。


 目の前には両手に花の男が1人。

実際には花ではなく、花のように綺麗な女性達がいた。


「おっ。オーリスがやっと帰ってきたか」

「悪い。待たせたな。ところでファウスは何をしてるんだ?」

「見ての通り待機中。待つのも臣下の役目だろ?」


 真面目な顔して隣の女の胸を揉むな。


「え~もう行ってしまうの~?」

「やだ~・・アンッ」

「・・・・・」


 オーリスは軽蔑と嫉妬の視線を送り黙って歩き出した。


「ちょっ!オーリス!・・・これ連絡先ね。いつでも連絡して」

「するする~」

「お泊まりOK?」

「OK!OK!」

「次の休み行くね~」


 美女二人と別れ先行したオーリスに近づく影が一つ。


「オーリス。待てって」


「・・・・・」


「後で紹介するよ?」


「・・・・・」


「巨乳な子どうだ?ww推定Iカップの」

「そんな話に乗ると思ったか・・・阿呆が」


「勿体ない。人生楽しまないと損だぞ。まー、お前にはディア様がいるからな」

「もう一度聞くけど、ファウス。お前は何しに来たんだ?」


「護衛というナンパだ!」

「給料分の仕事をしてくれ・・・」

「お前よりら働いているから問題無いだろ?」


 唇を噛み締め思う、言い返せないと。


 今月、何かしたかと言われたら今日の会議以外、何もしていない。その代わり、給料も貰っていない。


 給料は別にいい、給料を貰うために働くくらいなら、働かなくていいと正直思っている。


「身辺には十分気をつけろよ・・・。そのうち女に刺されるぞ。別に俺は、お前が死んでも構わないけどな」


 オーリスの隣を歩いてるいるこの男はファウス・ローレン。


 ロイス領の中の貴族でも4大貴族と言われている、ローレン家のご子息様。ファウスの父親とオーリスの父親が仲良かったせいで幼い頃からから一緒に遊んでいる悪友。


「あんな連中に殺されるようならお前の護衛には選ばれねーよ」


 実力は確かだが、女癖に難あり。

 見た目通りの女好きで、空気よりも軽い相手だが何故か憎めない。


 そんなファウスと魔国大都市オルタラをブラッと一歩きしながら、買い物を済ませる。


「えーっと。これとこれは買ったな。あと、あの土産も買わないと」


 オーリスは胸ポケットから取り出した1枚のメモを確認しながら店を回る。


 ファウスは誰かにあげる土産を買うついでに、美人な店員を手当たり次第にナンパする。


 そして別れ際に必ず、相手の胸をひと揉みした。


 毎回思うが、それは何の儀式だ。

 でもそんな事はどーでもいい。今は自分の仕事に集中しないと。


 買い物を済ませるとすぐにオルタラを出た。


 特に歩く意味もないので2人は空を飛ぶ。

 ファウスの女話を聞きながら無言で飛び続け、ようやく自分の領地に近づいたころでファウスが女性以外の話をしてきた。


「あれはどうする?」

「見えない」


「その面倒くさそうな表情・・」

「で?なんだ?」


「いや、わかるだろ?」

「さっぱり」


「領土の境界線ギリギリで人間と魔族が争っているようだけど、どうするんだ?」

「境界線ギリギリ。ギリギリ領土に入っていないからギリギリセーフだろ?」


「確かにギリギリだ・・・。あっ領土に何人か入ったぞっ!」

「まー、百人未満は誤差って事で切り捨てでいいだろ」


「普通にそこは駄目だと思うけどな…」

「・・・・やっぱ駄目か?」


「駄目かと聞き返すなっ!」

「なぜ、そんな面倒な事を言う?俺を働かせたいのか!?」


「いや一応、お前、魔王だから。領主だから。この状況に少しは危機感持てよ…。普通にあれは侵入者だぞ」

「そんな事をいちいち気にしていたらストレス三昧で長生き出来ないぞ」


「俺達は後平均で言えば900年は生きるから」

「・・・」


「いいか。今のお前は、魔王と言っても末席のドンケツのビリで一番の下っ端の屑でしょ?」

「おいっ!屑は関係ないだろ」


「おっと。本音がポロリ」


 こいつと会話しているだけで疲れてくる。


「何度も言っているがそれだと困るんだよ。これから頑張って俺達のためにもっと序列を上げてもらわないと。今後の領民全ての将来に関わってくるって親父が言ってた」


「まともな事言うと思ってら、お前の親父かよ!」


「色々な人に恩を売ったり、金を稼いで領土を発展させたり、他のとこよりも色々点数稼いでもらわないと。どうせ今回も末席からの昇進はなかったんだろ?」

「惜しくも、今回は見送りだったな」


「__だろうな。何もしていないのだから当然の結果だと思う」


 ファウスの言っていることは正論なので今回も反論はできない。


 ファウスに腹を立てながらふと下を見てオーリスは気が付く。

 知った顔がそこにいることに。


「ちょっと待て。この場合、他の魔王から横取りしたとか難癖付けられないか?つまり俺は何も出来ないのでは?!」


「嬉しそうに言うな。その件は大丈夫じゃないか?まー俺、魔王じゃ無いから関係ないし」


「なんだそれ!」

「仕事、仕事ー」


ファウスは急降下して群の中に突っ込む。


「アイツ、マジか!」


 オーリスもイヤイヤその後に続いた。

 


「この地は我が領地。侵略を許すなー」

「正義は我にあり!」


「ここに住む者は悪しき者の化身。滅ぼせー!」

「悪しき者を滅せ!それこそが神々の望み!」


「我ら人類に栄光あれー!」

「・・・・突―――撃―――!!!」


「撃てーーー!」


 他人の土地を侵略しにきて何が栄光あれだ。

 ここは境界線が近いので、出来ればもう少し離れて争ってもらいたい。

 

 向こうの少し離れた場所もなにやら騒がしいと思いよく見ると、その遠くの中心にファウスの影がチラリと見えた。


「やっぱりお前か・・・」


 そうだ!見なかったことにしよう。

 追いかけるのを途中でやめ、空中に静止し見下ろしながらこの場から上手く逃げる口実を考えていると下から大声が飛んできた。


「神のご加護を我らに与えたまえーーー」


 その言葉を聞きオーリスは思う、人間は滑稽な生き物だと。

 欲深く、卑しいくせに何かあればすぐに神に助けてと頼る。


 侵略者に加護を与える神がいるなら是非見てみたい気もするが、神なんて数千年前に滅ぼされているので見たくても存在しないんだけどな。


 存在しない相手に対して人間は。


「神が~」

「神より~」


 なんて事を言い、都合いいように使っている。神がいたとしたら多分真っ先に天罰が下るのはコイツらだろーなとオーリスは思う。


 そして他に頼る者がいないのかとも。


 お前達の王様はよほど使い物にならないよーだ。

 

 ・・・って、自分で言っていてなんだが俺も大概か。


 落ち込みながら、オーリスは状況をいまだ見守る。

 勢いのいい人間が数名いるせいか魔族側が押され気味になってきた。


「おー、押されているなんて珍しい」


 人間に数では負けるだろうが一個体での戦力差を考えれば負けるはずが無い。

 人間共もそれなりに学習し、戦力を揃えて来たと言うことだろうか?


 がんばれ、がんばれ。


 出来れば、俺の迷惑にならないところで頑張ってくれ。


 オーリスは色々考えた。

 確かに自分の領土内なら問答無用で殲滅しているところだが、ギリギリ領土には入っておらず、たまに列からそれた人間が多少境界線を越えている程度。


 勝手に手を出せば確実にこの争いを指揮している魔王から難癖を付けられるだろうが、今回は知ってる奴だし大丈夫なんだけど。


 でも、本来ならこちら側の魔王、つまり自分に境界線上での争いをする事についての許可と連絡があるべきだったはず。それが無いのなら先にルール違反しているのはあっちになるのか?


「考えれば考えるほど・・・面倒だ」


 オーリスは戦況を見ながらいまだに悩んでいる。

 なぜなら魔王達内での暗黙のルールと言う物があったりする。


 代表的なもので言うと・・・。


『他の魔王の争い事には無闇に首を突っ込まない』


 なんだそれ?と思う奴らもいるだろう。

 俺もいまだにそう思う。


 最初に言っておけば基本的に魔王は自信家で、周りの目を気にする、非常―にプライドが高い面倒な生き物なのだ。


 ※俺を除く。(他の魔王が問題事を解決してくれるのなら喜んで参加させるし、むしろ喜んで譲る)

そんな事を言えばファウス含め領土内貴族の圧力が厳しくなるのでハッキリとは言わないが内心はそう思っている。


 こちら側の常識で言えば、普通は誰かに助けられたなんて周りに知られたら、他の魔王達から白い目で見られ軽蔑されるついでに弱者というレッテルを貼られ、序列はガタ落ち。


 助けるという行為はもっとも屈辱的な行為となってしまうわけで、そこが悩みの種でもある。


 屈辱を受けるのならいっそ、戦いの中で死んだ方がマシだと考える奴も少なくない。

 そんな事で死なれてもこっちは責任を取れないと言うのになんて理不尽な。


 それにそんな下らない事を火種に、序列を取り戻そうと魔王同士が争うこともよくあったので生きていられても面倒事に巻き込まれる。

 

 首を突っ込んだ方が明らかに面倒事になる確率が高いが、今回は違う。

 わかってはいるが、そーゆーていで俺は現状を見守っている、以上。


 魔王同士の争いとなれば当然、被害は甚大。

 王同士の戦いだからまー、当然と言えば当然。


 巻き込まれたら・・・うん。諦めてくれとしかいいようがない。

 

 それを踏まえてオーリスは動かない。


「死に晒せぁー!」


 拳を前方に向けるとその腕には胴体を貫通した人間が3人ほどぶら下がっていた。

ファウスの目は生き生きしていた。


 当然、武器なんて使わない。

 生身で殴り、抉り、吹き飛ばし、地面を赤黒く染めながら殲滅する。

 武器を使わず、自分の肉体のみで戦うことに対してプライドを持っている奴らは多い。

 だからといって武器がないわけでもない。


 使わない者、使う者・・・半々ぐらいだろう。


 しかし、ファウス級にもなると生身以上の攻撃が可能となると武器はそう簡単に見つかる物でもないし、ファウスはどちらかと言えば肉体派だ。


「ちょろちょろ動くな!人間ども!」


 ファウスは腰にあるものを使ったあと、しばらくして両手を天にかざして叫ぶ。


「ボルト・レイン」


 広範囲に落雷が落ち、人間たちが焼け焦げ破裂していく。雷魔法の1つ。

 人間達は頭上に盾を構え身動き出来ずに死んでいく。

 鉄の立て1枚で防げる代物ではないが、目立ちすぎ・・。


「誰だ!アイツは!」


 人間側がファウスの存在に気が付いた。


 ほーら、見つかった。

 あれだけ目立てば見つからないわけがない。

 俺は関係ないからな。


「魔王様~。殺りましたよ~」


 ファウスは上空のオーリスに手を振る。


「こっちに手を振るな!」


「空の上に人影?誰だ・・・。どこかで見たような?」

「あれは・・・魔王?最弱の魔王じゃないのか?」


「あの方は・・あの方はオーリス様では?」


 人間側にも魔王軍側にもバレたじゃねーか!


「魔王が現れたぞぉー!勇者様方を呼べ――」


 威勢と悲鳴が交差し広がって行く。

 逃げようにも人間と魔王側の両方に気付かれてしまった。


 それに多分、ファウスが手を振ったのは故意であり、自分の責任を押しつけてきやがったに違いない!


 アイツはそういう奴だ。

 その間に数人の威勢のいい人間が周りとは段違いの早さでファウスに向かっていくのが見えた。


「・・・・」


 速度を落とさずにファウスの首めがけて剣を振り抜く人間がいたが、首が飛んだのはその人間のほうだった。


次に巨大な斧をファウスの頭部に振り下ろした人間は腕が飛び、頭が弾けた。


 正直、ファウスと対等に戦える相手がいるなら見てみたい。

 そんな事を思った矢先、遠距離から三名による同時魔法攻撃をファウスが受ける。避けなかったのか、避けられなかったのかはわからないが、見事ファウスを直撃した。


「やるじゃないか!人間!」


 人間の素早い連携に親指を立てたオーリス。


「なんだろ・・。スッキリした気分だ」


 土煙が消えるとファウスの姿が現れた。

 魔法を片手で防いだようだが、見事に右腕は焼け飛んでいた。


 助けに入ろうかと思ったが、その程度ならファウスの敵じゃないと思い、加勢はしなかった。

 面倒だったなんて理由ではない、自分の部下であり友の実力を信じての行動であると、言っておこう。

 

 思った通り、すぐに新しい腕が生え魔法が飛んで来た方向目掛けて魔法をぶっ放し、三名は爆発に巻き込まれ跡形もなく消えた。

 最後の人間は見事な剣技を見せ、魔法操り、ファウスといい勝負、とまではいかなかったが十分健闘はしていた。


 人間側が逃げるのを確認するとその相手もファウスから離れて後方に下がった。

 多少苦戦しているように見えたがあのまま戦闘が続けば当然勝ったのはファウスだろう。


 ファウスの活躍もあり?知り合いの魔王軍は勢いを取り戻し、めでたく人間共を退けた。


 よし、俺も逃げよう。


 ファウスは満足したのかこちらに戻ってきた今が好機!

 ファウスは情事を一発終えたかようなスッキリとした顔でこちらに手を振る。


「いや~。最後の奴はいい腕だった。多分全力じゃないと思うが・・・スッキリッ!」


 目を輝かせて親指を立てるな。


「おつかれ。ずいぶん派手にやったな」

「久々に暴れられたわ。でもやっぱり体がだいぶ訛っていたな」

「そーか、、、」

「おっ!そろそろ・・・来ました」


「オーちゃん~!ありがと~」


 ファウスはその声を聞くとすぐに空を飛びながら片膝を折り姿勢を低くした。


「オーちゃんの知り合いさんでしたか~。助かりました~」

「やっぱりお前の軍だったか」


「酷いです。ちゃんとー、オベル・ガウスって名前があります~」

「・・・・・」


「魔王様余りすぎた事は。知り合いだとは言え、相手は第57席魔王様ですので」


「あっ!最近49席に上がりました~。私、頑張りました~。オーちゃん褒めて?」

「誰が褒めるか!上下関係?上等だぁ!かかってこいや!!」


 嫉妬ではない。ただの逆切れだ。


 突然、何を思ったのかオベルがオーリスに両手を広げて物凄い勢いで抱き着きにいった。


「ゴギッ」


 なんか変な音が首の付け根と腰からした。


 オーちゃん・・もとい、オーリスとオベルが共に地面に落下するのをファウスはかろうじて目で捉える事が出来た。


「痛っ・・・。たまに外に出てみればこれか。最悪だな・・・」

「そんなに抱きしめないで下さい~。もー。プンップンです~。でも~私の純潔がそんなに欲しいと言うのなら~?」


俺の股間に股を擦り付けていないでどけよ。


「お前の純潔なんて興味はないからさっさと降りろ。と言うか、魔王に純潔とかあるのか?」

「私、乙女ですし~」


 目の前にある、五月蠅いオッパイを鷲掴みにしオベルを引き剥がす。


「ファウス。帰えるぞ」

「いいのか?」


「いつものことだから無視しとけ。オベル。お前の軍をほっといていいのか?」

「戻らないといけないの~。オーちゃんにもお手伝いして欲しいの~」


 谷間を寄せてオーリスに激しくアピールをするオベルを見ようともせず、オーリスはその場を飛び立った。


「・・・・・・」

「主の非礼を代わってお詫びいたします。それでは私もこれで失礼します」


「後で~お礼を兼ねて遊びに行きます~」


 来るな、迷惑だとはさすがにそこまでは言わなかったが、悟ってくれ。

 一応相手は49席で俺は末席の72席。俺の方が下だしな。


 上下関係か・・・。


 考えるだけで面倒だ。

 だから考えるのは止めよう。


「ところで、あの攻撃は防げなかったのか?」

「あのとは?」

「お前の腕を吹っ飛ばした、あれ」

「あー、アレな。威力的にはたいしたことないんだけどな」


 ファウスは少し考えて答える。


「・・・何というか。・・・正直、気付けなかった」

「___気づけない?・・・どこか調子でも悪いのか?」


 オーリスはファウスの頭に目線を向ける。


「いや、頭の中身に問題はねーよ。俺も考えてみたが・・理由はわからん!」


 特に怪我もなく無事なら問題無い。

 死んでも問題は無い。


「ん?」


 そんなこんなでやっと自分の領地に無事到着した。


「これは癒し所のサキちゃんの力が必要だわ・・・」


そう言ってファウスは連絡用の道具を取り出しどこかに連絡する。


「ピピピ・・・ガチャッ・・。至急、癒しが欲しい」

「もー、久々の連絡なのに突然それ?今日は仕事休みだからなぁ・・・。お家に来る?」


「泊まりOK?」

「OKだけど今日は危ないよ~。責任取ってよ~笑」

「OKOK。カモンッカモンッ」


オーリスはファウスの会話を盗み聞きし、やはりあのまま死ねばよかったのにと思った。


「どうかしたかオーリス?」



「____お前の頭がどうかしてるんだよ」


 誤字脱字等は気を付けてみましたが、注意点、感想等があればぜひコメントをよろしくお願いします。


 今後のオーリスはどこに向かって、さぼるのかを期待してもらえたらうれしいです。

 

 初投稿を読んでいただきありがとうございました!!

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