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スタローン転生 ~怒りの異世界生活~  作者: アドキンス2号機
シーズン1:怒りの異世界転生
3/4

第2話【炎の契約】

 赤髪の少女、システリカを医者──つまりこの世界には病院があるわけなのだが、それはこちらの世界のような総合病院のような大きいものだった──に預けたあと、俺はこの街を出ることにした。

 理由は単純だ。いたいけな(とてもそうとは思えないが)少女とその忠実なる騎士たちを殴り倒したからだ。

 恐らくお尋ね者になることは避けられないだろう。

 もう少しこの街で情報収集したかったのだが、既に事は起き、もう手に負える段階ではない。つまりは仕方のないことなのだ。

 とりあえず大通りにある露店で周辺地域の地図と食料を買い、街を出る準備をする。

 地図を開いて初めてこの街が「マクレーン」という名であることを知った。多分、ダイ・ハードとは関係無い。

 マクレーンはその面積や、町民の服装からそこそこ大きな街であることが伺える。周囲を壁に囲まれていることから過去ないしは現在、なんらかの驚異に晒されていることがわかる。

 どうやら街の外に出るには少しばかり警戒が必要なようだ。

 金銭的な心配もあるし最低限の装備だけを揃えて街の外に出ることにしよう。


 マクレーンの外に通じる門まで行くと、そこには衛兵らしき集団が検問を敷いていた。

 やはり、この街はなんらかの驚異を抱えているのか。それともただ単に俺という犯罪者を探しているのか。

 見ると、どうやらこの門を通るには通行証が必要なようだ。

 困った。通行証なんて持ってない上に顔が知られていたらまず通ることなんて出来ない。

 どうしたもんかとまごついていると、背後から声をかけられる。

「やあ、如何にも悩ましげな顔をしてどうしたんだい?」

 見ると、馬車の御者台に乗った、ツインテールの少女がこちらに向かって手を振っている。

 年齢は10代後半といったところか、なんだか人懐っこい顔をした少女だ。

 まさか検問をどう突破しようかと考えているなどとは言えない。

 とりあえず「や、ちょっとね」と言って茶を濁すように肩をすくめる。

「そうかい。私には、あの検問を通行証無しでどう突破しようかと考えている顔に見えたんだがね」

 ……どうやら、人懐っこそうな雰囲気は顔だけのようだ。よく見ると、値踏みをするかのような目でこちらを見ている。

「何者だ?」

「これは失礼。私はニナ・レオンハート。18歳。ただのしがない商人さ」

 そう言ってニナは御者台を降り、こちらに向かって手を差し出した。

 その握手はこちらの素性を明かせというサインだろう。

「ユーキ・スタローン。俺も18歳だ」

 俺はニナの手を軽く握った。

 すると、ニナは目を見開いて驚きの表情を見せた。強く握りすぎたか?

「18歳? 見えないね」

「ああ、まあ……大人びてるだろ」

 そういえば今はスタローン顔だった。まあ当時のスタローンは瑞々しいので老け顔で押し通せるだろう。

「ところで、こちらの心を見透かしたような事を言って、何の用だ?」

「いやいや、そんな。見透かしたようだなんて。しかし、ちーっとばかしね。商人なんてやっていると、やっぱいるじゃないか。こうね、騙くらかそうとしたり、貶めいれようとしたり。そういう人。

 だもんでね、人を見極める目って言うのかね。そういうもんが育まれるもんなのだよ。実際、そうだろう? 君はあの検問を通れなくて困っているはずだ」

 ニナはポロポロと豆をこぼすように口を走らせる。

 お喋り好きというよりはこれも商人で培った技術なのだろう。

「そうだと言ったら、君はどうする?」

 するとニナはこの笑みを深める。この言葉を待っていたかのように。

「実は私、これから隣のザンダータウンへと商売に行かなくちゃならんのだがね。でもでも、最近はなんとも物騒な世の中じゃないですか。それで、如何にも筋骨隆々で強そうなあなたに護衛を頼みたいんですよ。実際、強いでしょアナタ? ああ、言わなくていいよ。言ったろ?商人は人を見る目があるって。じゃないと生き残れないって。無論、タダとは言わないよ。通行証無しで検問を通らせてあげるし、街についたら少しばかりのお礼もするよ。どうだい?」

 ニナは手を叩いて話を締めくくった。

 なるほど、悪くない話だ。まだこの肉体の力は未知数だが、スタローンなのだ。護衛が務まらないほどじゃないだろう。

 それに、俺はこの世界について早く知りたい。知って、俺はこの世界に生きる意味、転生させられた意味を知らなくちゃいけない気がする。

 それが、一度死を迎えた者の義務だ。

「いいだろう。手を組もう」

 そう言って今度は俺の方から手を差し出した。

 ニナは笑みを相変わらず崩さず、俺の手を握り返した。

「契約成立♪」

 その声は本当に嬉しそうで、恐らくこの展開はニナの予想通りなのだろう。あながち、人を見極める目ってのは油断ならないのかもしれない。

 こうして俺はニナと共に、俺が転生した街、マクレーンを後にした。

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