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そのおっさん、異世界で二周目プレイを満喫中 作者:月夜 涙(るい)

三章:おっさんは手を伸ばす

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第十一話:おっさんは温泉を楽しむ

 なんとか、【黄金のピラミッド】を踏破した。
 最後の関門であるスフィンクスの謎をとき、彼が守っていた宝物庫へと足を踏み入れる。
 初めて、ここにたどり着いたとき最後の問いを間違えて地下に叩き落とされたときは心が折れかけたものだ……。

「ユーヤ、お宝♪」
「これ、すっごいほうの宝箱だよね!」

 さきほどまで疲れ果て虚ろな目で、どんよろしていたルーナとティルのお子様二人組が途端に元気になった。

「ああ、レア比率が高い宝箱だ。これが再配置後必ず設置されるのが、【黄金のピラミッド】のすいごところだ。まずは首飾りから頂こう」

 首飾りはパーティ上限解放に必要なアイテムの片割れだ。
 なんとしても五人でパーティを組みたかった。
 経験値はパーティごとにしか分配されないし、パーティの人数が増えるたびに経験値が1.1倍になる特典がある。
 回復魔法や付与魔法はパーティ全体を対象とするものがあることも大きい。
 他にも様々な特典があり、三人と二人のパーティより五人のパーティのほうがずっと効率がいい。

 この街で挑む、ボスモンスター争奪戦で勝つためにも早めに五人パーティになり、五人での戦いに慣れておきたかった。
 なにせ、相手はクランぐるみで争奪戦に挑んでくる。妨害してくる連中を押しのけてボスモンスターのところへ真っ先にたどり着くのは骨が折れる。

 首飾りを手に取る。
 チェーンはさびており、首飾りには宝石を嵌めるくぼみがあった。
 魔法袋から、ミノタウロスを倒したときに手に入れた【絆の糸】を取り出す。

 銀色の糸は、自然にほつれて首飾りに絡みつく。
 すると、さびたチェーンは光り輝きや分からなシルクのような糸によって包まれた。
 そして、光がくぼみに満ちる。
 蒼い宝石が現れ、独特の紋章が宝石のなかに描かれた。
 その首飾りを俺は装備する。

「みんな、パーティを一度解除してくれ」

 ルーナたちが頷き、今の三人と二人のパーティを解除する。
 そして、俺から全員にパーティ申請。

「ん。ちゃんと五人でパーティ!」
「これでベストメンバーだね」
「この五人ならなんでもできる気がするわ」
「改めて、よろしくお願いします」

 五人のパーティが完成した。
 俺の胸に達成感がこみあげてくる。

「そういえば、大事なことが忘れていたな。パーティ名を考えないと。名を上げると指名クエストなんてものを頼まれるし、名前がないと不便だ」

 ある程度、名前が通って来ると指名クエストを依頼される。
 依頼主も緊急度の高い物や、難易度の高い物はクエストを達成してくれる冒険者が現れるのを待つのではなく信用できるパーティに指名する。
 指名料は美味しいし、他のパーティと奪い合いにならないのも魅力的だ。かつて、セレネの国に行ったときも指名クエストを受けてのことだった。
 そういうこともあり、パーティに名前があったほうが便利だ。

「ユーヤ兄さん、そんなこと急に言われても困るよ。思い付きでつけられないじゃん」
「ん。大事なパーティの名前。きちんと考えて決めたい」

 ティルとルーナがめずらしく正論を行ってくる。

「そう言えば、昔のユーヤおじさまのパーティ名は」

 慌てて俺はセレネの口を閉じる。

「むぐ、むぐむぐ」

 顔を赤くしながら、セレネが俺の腕の中で暴れる。

「その、あれだ、俺たちのパーティ名を決めるとき、変な先入観があるとダメだろ、だから、それは言わないほうがいい」

 あれは若気の至りだ。
 レナードと二人で、酒を飲みながらおかしなテンションで、名付けてしまった。
 ルーナたちに、あのパーティ名を知られたくない。

「わっ、わかったわ。わかったから放してユーヤおじさま」
「わかってくれればいい」

 それはそうと、名前で思い出した。

「使い魔の名前は決めたのか? 温泉につければもう生まれるぞ」
「ん。ばっちり」
「みんなでしっかり考えたよ!」
「ええ、いい名前ができたわ。でも、可愛い名前だから、かっこいい子だと考え直さないといけいないかもしれないわ」

 どうやら、余計な心配だったようだ。
 帰ってからの温泉が楽しみだ。

「なら、急いでもどろう。ルーナ、宝箱の開錠を頼む」
「任せて」

 ルーナが宝箱の開錠を始める。
 宝箱には罠が仕掛けられていることが多く【開錠】スキル持ち出ないと、罠で大ダメージを受けたあげく、宝が消滅する。
 通常宝箱ではなく、レア宝箱。何が出るのか楽しみだ。
 無事、開錠されて宝箱が開く。

「これなに?」

 ルーナが手にしたのは、涼やかな鈴だった。

「ほう、なかなかいいアイテムだな。【魔除けの鈴】。それを鳴らしている間は、魔物が近づくにくくなる。パーティが消耗しているときには役に立つ」
「やった! お宝!」

 便利だし、商人たちが街から街へ移動するときに欲しがるので高く売れる。
 たしか、俺の魔法袋にもあるし売ろう。

 魔物の素材程度なら手数料を払ってギルドに任せてもいいのだが……これほど高価な品だと直接売ったほうがいいだろう。
 ルーナやティルはまだオークションを知らなかったな。
 一度、オークションを経験させたほうがいいかもしれない。いい、経験になる。
 買う側として参加してもなかなか楽しい。

「さあ、みんな街へ帰ろう。冷たいエールと温泉が俺たちを待っている」
「ん!」
「冷たい飲み物!」

 お宝で浮かれていたが、みんな疲れ果てている。
 早く戻ろう。

 ◇

 宝物庫にあった【魔法の渦】でダンジョンの外に出る。
 空腹よりも、体のべたつきと汚れが我慢できないとルーナたちが言ったので酒場ではなく温泉に向かう。
 ギルド推薦の温泉だ。
 天然温泉はフレアガルドの名物だけあって盛況なようだ。
 受付にみんなで向かう。

「お客様、女性は左奥へ、男性は右奥へお願いします」

 ここでお別れだ。ここの他に混浴の温泉もあることはあり、ルーナたちと一緒に温泉を楽しみたい気持ちもあるが、それ以上に彼女たちの肌を他の男どもに見られることが我慢できないので、男女別の大衆浴場を選んだ。

「やだ。ルーナはユーヤと一緒がいい」

 頬を膨らませて、ルーナが俺の腕にくっついてくる。

「ルーナ、あんまり店員さんを困らせるな。少しの辛抱だ」
「そうだよ。ユーヤ兄さんについて行っちゃうとたくさんの人に裸見られちゃうじゃん」
「ユーヤと一緒にいられるなら見られてもいい」

 いつもなら、こうして懐かれるのは悪い気はしないが、少し困ってしまう。
 どうしたものか……。

「お客様、そういうことでしたら、一般浴場とは別に家族向けの貸し切り風呂のサービスがありますよ。お高くなりますが、お連れの方々と一緒に楽しめますし、五人なら広々と使えるので一般浴場よりもリラックスできますよ」

 店員の目が俺とフィルの装備を一瞬見ていた。
 おそらく、装備からして金を持っている冒険者と踏んで、高い貸し切り風呂を提案してきたのだろう。
 なかなかの商売上手だ。ルーナの目が輝く。

「ユーヤ、これなら一緒」
「だがな、ルーナとフィルはともかく、ティルとセレネが」

 オアシスでは下着姿を見せてもらったが、さすがに風呂で全裸はまずい。ティルとセレネも戸惑っている。

「でしたら、お客様! 当店では水着のレンタルや販売もしておりますよ。冒険者の方などでは、パーティの皆様で温泉を楽しみたいという需要があり、いろいろと用意しております!」

 テーブルの上に次々に色んなサイズと種類の水着を取り出す。
 ここまでやるのか。
 水着のレンタル料金も合わせると値段もけっこうするが、みんなと一緒に温泉を楽しめるのは魅力的だ。
 それに、使い魔の卵を温めるところは他の客に見られないほうがいい。

「ユーヤ兄さん、水着だったら全然問題ないよ! 可愛いの選んで悩殺しちゃう」
「私も構わないわ。……別にユーヤおじさまなら、水着でなくてもいいぐらいよ」
「ええ、みんなで楽しみましょう。そちらのほうがきっと楽しいです」

 ルーナ以外も同意してくれた。

「なら、貸し切りにしよう。俺は先に行っているからみんなは水着を選んでくれ。気に入ったらレンタルじゃなくて購入してもいい。水場のダンジョンもあるしな。水着があれば便利だ」

 男の水着なんてどうでもいいので、サイズだけ見て適当に選び浴場に向かう。
 女性陣は水着を選ぶために別室へと案内された。
 みんなの水着姿は楽しみだ。

 ◇

 家族用の貸し切り風呂はなかなかの広さがあった。
 十人ぐらいまでは楽しめそうだ。

 木の策で囲まれた露天風呂。
 湯船は石でできており情緒がある。
 独特の匂いがする。有効成分が多い天然温泉の証拠だ。
 聖火によって源泉が温められているため、魔術的な効果もある。

「悪いが先に楽しませてもらおう」

 このままだと風邪を引きそうだ。お湯をかぶってから湯船につかる。温泉が体に染みわたる。
 歳を重ねるごとに、温泉が好きになっていく。
 筋肉がほぐれ、疲労が抜けていくのを感じ取れる。

 そして、待ちかねたものが来た。
 お盆が流れてくる。盆の上にはジョッキがあり、冷たい果実酒がなみなみと注がれていた。
 この温泉は、こうして温泉につかりながら冷たい飲み物を楽しめる。
 一気に、流し込む。
 砂漠で渇き、温泉で熱く火照った体には最高のご褒美だ。

「うまいっ!」

 さっそく追加を頼む。
 足音が聞こえてきた。

「ユーヤ、遅くなった!」
「どう、可愛いでしょ」

 真っ先に現れたのはお子様二人組だ。ルーナはどこか子供っぽい全身を包む水着で可愛らしく、ティルは年齢不相応にビキニタイプのきわどい水着だ。ティルはフィルよりも大きいので、なかなか眼福だ。
 ……何を考えている。ティルはまだ十四、子供だ。

「ユーヤおじさまが、ティルに目を奪われているわね。……私も冒険したほうが良かったかしら」
「やめておいたほうがいいですよ。比べられて惨めになるだけですし」

 セレネとフィルがやってきた。
 二人ともワンピース型の水着を着ている。胸は大きくないがスタイルがいい二人なので絵になる。フィルは少し冒険して真ん中が露出しているタイプだ。

「ごほんっ、みんなそれぞれの魅力があると思う。さっそく温泉を楽しもう。気持ちいいぞ」
「ユーヤ、ティルを凝視して鼻を伸ばしたこと、ちゃんと気付いていますから……やっぱり、男の人は大きい胸がいいんですね」

 フィルの笑顔がちょっと怖い。男はそういう生き物だ。
 みんな、お湯を浴びて温泉に入って来る。

「ユーヤ!」

 ルーナが俺のところまで泳いできてちょこんと小さな体を俺の足の間にすべりこませてもたれかかってくる。今日は水着なのでいつもよりルーナの感触が伝わる。
 可愛いな。思わず後ろからぎゅっと抱きしめる。ルーナは抱き心地がいい。
 フィルも近づいてきた。隣に座り肩を預けてくる。体だけでなく心も満たされる。

「温泉、気持ちいい」
「これはいい物だね」

 温泉初体験のルーナとティルが気に入ってくれたようだ。
 次々にお盆がながれてくる。それぞれに注文を受け取り、思い思いの飲み物を楽しむ。

「お風呂に入りながら冷たいお酒なんて、こんな行儀悪いことはお城ではできたなかったわね」
「だが、悪くないだろう?」
「ええ、とっても素敵」

 セレネがまた一つ新しい楽しみを知った。
 こういうのは外に出ないと味わえないものだ。彼女が帰るまでにもっといろんなことを知ってほしいとも思う。

「ユーヤ、そろそろ今日のメインイベント!」

 ルーナが一度湯船から出て、更衣室に戻る。
 そして、大きな卵を抱えてやってきた。
 この温泉は疲れを取るためでもあるが、一番の目的は使い魔の孵化だ。魔力を帯びたお湯につけ続けることで卵が孵る。ルーナは卵を抱えたまま温泉に浸かる。

 そして、みんなで卵の様子を観察する。
 のぼせそうになれば外で涼み、またお風呂に入りながら卵を見続けた。
 涼むための椅子が用意されているのもありがたい。
 なかなか生まれないので、途中からは交代で見ている。お湯の中で生まれたらいきなりおぼれてしまうので目が離せない。

「卵の動きが大きくなりました!」

 フィルの声が響く。今はフィルが卵を見る番だった。
 全員が卵の元に向かっていく。
 卵が湯船の底で大きく跳ねている。卵にひびが入った。フィルが湯船から卵を取り出し地面に置く。

「みんな、生まれるぞ」

 俺がそう言うと、誰かの息を飲む声が聞こえた。
 そして、卵が割れた。
 中から出てきたのは……。

「ユーヤ、これ、可愛い」
「うわぁ、ふわふわだ」
「この子は竜かしら?」

 ふわふわの薄青の体毛に包まれた竜だった。
 小さな羽でぱたぱたと飛ぶとルーナの頭の上にぺたんと着地する。

「キュイ、キュイ!」

 そして、元気よく鳴き声を上げた。

「ほう、フェアリー・ドラゴンか。優秀な使い魔だ」

 竜種は強力だ。フェアリー・ドラゴンも小さいが例外ではない。一発でこいつを引き当てるとは驚いた。
 きっと、ルーナたちの心と魔力で育ったからこそ、あたりを引けたのだろう。
 さっそく、この子には次の冒険では活躍してもらおう。
 使い魔がいることで、より冒険の効率があがる。

「この子ふわふわ」
「小っちゃくてかわいいね」
「人なつっこいわ。つぶらな赤い目が素敵ね」

 ルーナ、ティル、セレネの三人がさっそくフェアリー・ドラゴンを可愛がる。

「ルーナちゃん、ティル、セレネちゃん。みんなで考えた名前で呼んであげてください」

 フィルの言葉にルーナたちは頷き、フェアリー・ドラゴンの名前を呼ぶ。
 そして、フェアリー・ドラゴンがその名前を気に入ったのか、元気よく鳴き声をあげた。
 
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