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そのおっさん、異世界で二周目プレイを満喫中 作者:月夜 涙(るい)

二章:おっさんは上り詰める

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第十三話:おっさんはレアドロップを手に入れる

 優秀な壁役の加入、そしてセレネ以外が星食蟲の迷宮は二度目ということだけあって一度目とは比べ物にならないぐらい順調に探索は続いた。
 そして今も……。

「【シールドバッシュ】!」

 セレネのスパイクが緑の外骨格を持った巨大芋虫を貫く。
 巨大な芋虫と言っても星食蟲ほどではない、せいぜい五メートルほど。ただ、特徴は星食蟲に酷似している。
 背中の模様はアゲハの幼虫のように目を思わせる外敵を威嚇する模様であり、大きな二つの宝石の眼が存在していた。
 こいつの名前は地食蟲。星食蟲の迷宮にしか存在しない上、出現率が極端に低いに希少な魔物だ。

 星食蟲と違って『倒したら強化版が出てくる』なんてことはないので安心して倒せる。
 ミニチュア星食蟲ということもあり、ルーナたちは警戒しているし、実際かなり強い。
 セレネは突進を受け止めた際、【城壁】を使っていたにもかかわらず、あまりの衝撃で利き腕にひびが入った。
 止めたあともティルの矢をはじき返し、ルーナのアサシンエッジも外殻に急所が覆われているため機能せず、俺の【爆熱炎掌】でようやく外殻を砕け、そこをセレネが【シールドバッシュ】でスパイクを叩き込むことでなんとか倒せた。
 地食蟲が事切れ、青い粒子になって消えていき赤い宝玉がごろんと転がる。それはこいつの眼だ。

「ユーヤ、変なドロップアイテム」
「うわぁ、綺麗な宝石だね」
「でも、あの巨大芋虫の眼だと思うと拾うのに勇気がいるわね」

 アイテム名は蟲紅玉ちゅうこうぎょく

「何を言ってる、蟲紅玉を素材に防具を作ると呪力上昇効果がある防具が作れる。魔法使いや僧侶が喉から手が出るほど欲しがる素材だぞ? もちろんクルセイダーもな。これを埋め込んだ籠手をオーダーメードで作ろう。セレネに使わせないとな」

 宝玉系のアイテムを素材にすると特殊効果持ちの防具が生まれる。
 とくに呪力アップなどの汎用性が高い効果がある素材は非常に高価かつ希少だ。
 さすがは隠しダンジョンのレアモンスターのドロップアイテム。
 たしか蟲宝紅玉はレアドロップ。ドロップ率は5%程度のはず。手に入れられたのはルーナの【ドロップ率上昇】の効果もあるだろう。

「そんな貴重なもの、売ってお金を山分けにしないでいいのかしら? 私だけ得して悪い気がするわ」

 セレネが遠慮がちに言った言葉に反応し、大げさに肩をすくめてみせる。

「そっちこそ何を言っているんだ。レアモンスターのレアドロップだぞ。また手に入る保証はない。そんな貴重なものを売るなんてありえないだろ。それにセレネが強くなるってことは俺たちが強くなるってことだ。それを引け目に感じることはない」
「ん。ルーナも同意。そもそも、セレネがいなかったらちょっとまずかった」
「うん、すっごくびっくりしたよ。いきなり現れて突進してきて、私の弓も魔術も全部弾くんだもん。しかも芋虫のくせに、怖いぐらいに速いし!」
「二人が言う通り、セレネが壁になってくれないとやばかったな」

 道幅が狭い直線をずっと進んでいたら、いきなり地食蟲は現れた。
 そして突進してきたのだ。
 体長は五メートルで横にも縦にもでかい。狭い直線なので躱すだけの横幅がない。
 そんな化け物が時速七十キロほどで突進してきて逃げることも不可能。
 悪夢のような光景だ。

 こういう相手の場合、俺は壁としては無力だ。受け流せない状況では技を活かせない。
 きっちりと受け止めてくれる正統派の壁がいる。
 レベル二十代であの突進を受け止められるのはセレネぐらいだろう。セレネが止めてくれたから仕留めることができた。
 セレネがいなければ、そのあとに使い物ならなくなるぐらいの消耗を覚悟して、切り札である【神剛力】と白い扉の併用をしないといけなかった。

「セレネ、よくその腕で【シールドバッシュ】を放てたな」
「無我夢中だったわ。戦いが終わるまで痛みを感じる余裕もなかったの」

 ……防御に特化したセレネですらあまりの衝撃で盾を持つ右腕にヒビが入っていた。
 それを【回復ヒール】で癒し始める。回復役がいるのはいい。
 こうして怪我しても戦力が立てなおせる。
 本来、利き腕や足の骨にひびが入ろうものなら、その時点でそいつは戦力外になるところだ。
回復ヒール】が終わったセレネがどこか照れくさそうに口を開く。

「頼られるっていいわね。いつもの狩りは私を守るレベルが高い騎士に引率されているだけだったの。こういうのは心地いいわ」
「冒険者のだいご味だ。頼り頼られる。それを知って初めて本物の冒険者になれる。ようこそ、俺たちの世界へ」
「こんなの知ったら、もうやめられないわね。これからもよろしく」

 俺が手を伸ばすと、セレネはその手をしっかりと握り握手をする。

「ルーナもする!」
「あっ、私も。パーティなんだからみんなでしないと」

 四人で手を合わせる。
 そしてみんなでぎゅっとした。
 どこか照れくさいが悪い気はしない。
 この勢いのまま出口まで一直線だ。

 ◇

「出口に到着! なの」
「今日は速かったね」

 お子様二人組が手を握り合って喜びのダンスをしている。
 妙に可愛らしい。

「仲間と一緒だと普通にクリアできるダンジョンだったのね。初めて来たときは真っ暗で手探りで、いくら進んでも、そもそも正しい道に進んでいるかわからなくて辛かったわ。だけど、今回はむしろ楽しかったの」

 セレネがきっちり手ごたえを得ているようだ。
 新しい戦闘スタイルが一戦ごとに研ぎ澄まされていく、そしてその力がパーティに必要だと確信していく。
 楽しくないはずがない。その喜びは俺も知っている。

「俺はしばらく作業をする。セレネ、ルーナ、ティル。戦闘を振り返って、今日の反省をして今後どうするべきか話し合ってくれ。その結果はあとで聞こう」

 俺がいろいろと口出すことは簡単だが、自分たちで考えたほうが身になるし、何よりそっちのほうが楽しい。
 なにより、こうしてきっちり意思疎通することでパーティは完成していく。
 美少女三人組はにぎやかに話し始めた。

 セレネが参加して良かったと改めて思う。
 一か月後にはフィルも追いついてくる
 五人になればもっと楽しくなるだろう。
 それまでになんとか、パーティの上限を増やすアイテムを手に入れないと……。

「まずは仕事だ」

 時計の針の位置をメモする。そして、前回のメモと比較し、二日で何時間何分進んだかを割り出す。
 よし一日にどれだけ針が進むかはわかった。
 なら、使い魔の卵が実るのは……。

「みんな、使い魔の卵が実る日が分かったぞ。五日後の午前零時ジャストだ。星図も前と変わっていないな。実る場所も確定した」

 話し合いをしていた三人の視線が俺に集まる。

「へえ、この星図と振り子時計で本当にいつどこに使い魔の卵がでるかわかっちゃうんだ」
「ユーヤってエスパー」
「ルーナ、ティル。この前、この星図と振り子については説明しただろ……」

 若干呆れのニュアンスを出しながら答える。
 セレネは初めてなので、改めて星図と振り子時計の仕掛けを説明した。

「そういうからくりだったのね。……使い魔の卵にそんな秘密があったなんて。これを利用したらいくつでも使い魔の卵がとれそうね」
「まあな。ただ、使い魔は同じパーティに複数いると喧嘩しだして弱い個体が逃げ出す。結局一匹しか残らない。一つあれば十分だ。それにいつまでもグリーンウッドにしがみ付くつもりもないしな」

 おそらく、この秘密で使い魔の卵を独占し、定期的にオークションに出せば一生遊んで暮らせる。
 それは冒険者として一つのゴールだが、楽しくない。
 俺は上を見たい。
 レベルがあがればもっと上のダンジョンに行きたいのだ。

「ユーヤおじさまのそういうところは好きよ」
「ルーナも賛成! ずっと同じダンジョンはいや」
「うんうん、私たちは世界で一番のパーティになるんだから同じダンジョンにはずっといれないね。強い魔物がいるところにどんどんいかないと」

 俺は嬉しくなって笑う。
 全員上を見てくれている。
 普通のパーティなら、一人ぐらいは安定と安全を求めるところだ。

 ……まあ、使い魔の卵独占が安全かというと実はそうでもないんだがな。絶対にいつか他の冒険者に目を付けられ命と情報を狙われる。

「よし、帰ろう。使い魔の卵の実る樹と日時はわかった。あとは確実に獲るだけだ。これだけアドバンテージがあって獲れなかったら恥ずかしいぞ」
「ルーナに任せて。ルーナは木登りが得意。たまたま同じ樹に目を付けた人がいても誰よりも早く卵をゲットする」
「期待してる。ルーナが一番身のこなしが軽いからな」

 そういえばキツネは木登り上手だったな。キツネ耳美少女のルーナが得意なのも納得だ。

「じゃあ、私はお手伝いかな。もし横取りされそうなら麻痺毒を塗った矢でえいっと」
「やめろ。それをやるとあとで死ぬほどもめる。そいつが大きなクランに潜っていたらクラン総出で報復してくるぞ」
「冗談だよ。冗談。本気にしないでよ。あははは」

 ティルが顔を背けて頬をかく。
 こいつは絶対本気だった。

「さあ、帰ろう。帰ったら飯を食ってルーナとセレネは訓練だ」
「ん。がんばる」
「今日もお願いするわ。ユーヤおじさま」

 ダンジョン探索以外にも手のかかる弟子が二人になって忙しい。
 だが、充実した忙しさだ。
 使い魔の卵争奪戦まで五日。徹底的にレベル上げをしながら二人を鍛え、備えるとしよう。
 星食蟲の迷宮をフル活用すれば、並みの冒険者なら三年かかるレベル20からレベル30までの道のりも一か月で終わるかもしれない。
 そうなれば、使い魔の卵を持って別の街に行くとしよう。
 
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