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Blue Bird ~fly into the future~ 完結版  作者: 心十音(ことね)
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BlueBird 第51話


その後、僕らは互いの世界で起きている出来事について情報交換する。

主にハルマからの質問攻めだったが、これにカノンが負けず劣らずファイルについての質問も彼らに投げかけた。

ファアルでは、料理や掃除など家事全般が魔法によって行われていたり、洞窟で見かけた結晶は魔法石と呼ばれ、人々はそれを身につける事で魔法の使用頻度をコントロールしていたり、ペロやヒノのような話す生き物がたくさん存在する事を知った。

彼らにとっては極々普通の事だが、僕らはそれがまるでおとぎ話のような内容ばかりで、驚きつつも面白く感じた。

一方ハルマは、僕らが話す極々当たり前の事を興味深く耳を傾け、時にはメモをとったりしていた。話の最後に、僕はふとポケットからポーチを取り出し、エミレス王国で使われている銀貨を彼にあげた。


「よかったらこれ、お土産に」

「ええっ、いいの!?」

「うん。多分君達が言ってる謎の物質って、金属の事だよ。まさかそっちの世界に無いとは思わなかった……」

「わ~い! 本当にありがとう、ツバサお兄ちゃん!」


沢山話をしたところで、ヒノがひと伸びして立ちあがり、そろそろお開きにしようと声をあげる。

お互い自分達の世界に戻って、やらなくてはならない事がある。

しかし、彼らとの出会いを通じて、知られざるファアルの実態や、未来使いの真相、さらに過去探しという未来使いに似た能力を知る事が出来た。

さらに、洞窟での強化魔法に限らず、ヒノはここで僕達に回復魔法を唱えてくれた。おかげで、幾度の戦闘による疲れが一気に取れる。


「本当にありがとう」

「そんなそんな……僕らはさっきまでツバサ兄ちゃんを敵だと思ってたんだから、これぐらいの事はしないと! ね、ヒノ?」

「お、おう。せやな!」


照れ臭いのか、勘違いした事が恥ずかしかったのか、ヒノはそそくさとハルマの肩に跳び乗り、ブツブツとお経のような呪文を唱え始めた。彼が呪文を唱えると、僕達の体は浮かびあがり、双方に現れた光のトンネルへと引き寄せられていく。

過去探し、ファアルの人と、ここでお別れ。


「本当にありがとう、ツバサ兄ちゃん!」

「そっちの世界は、あんたらに任せるで! こっちはわいらで何とかするけんな!」

「こちらこそ、色々教えてくれてありがとう」

「リアルはペロ達で何とかするアン!」

「うん! でもツバサ兄ちゃんは、ちゃんと会いたい人にも会えるようにね! それまでは絶対何があっても諦めちゃダメだよ。僕との約束!」

「ハルマ君……」


僕よりずっと幼いのに、何だかとても大人びて見える。

これが過去探しによって手にした経験なのだろうか。

だんだん輪郭が光で分からなくなる。白い光の中から僅かに見えるオレンジ色の光……。


「ツバサお兄ちゃん!」


また彼の声が聞こえた。

もうすっかり光に埋もれて見えなくなってしまったが、彼の声は確かに僕の耳へと届いた。


「もし世界が一つになったら、また会おうね! もっといっぱいリアルの事教えて! これも僕との約束だよ!」

「!」


世界が一つになったら……そんな大きな事を、彼はさらりと言い残して、消え去った。








 暫くして目を覚ますと、僕らは洞窟の出入り口前に倒れていた。今度こそ本当に出られたようだ。

結局声の主は、ハルマ達でシュウヤではなかったが、代わりに大きなものをこの洞窟で得た気がする。

ペロやカノンが、見慣れた場所に歓喜を言い合っている中、僕は彼らの言葉に頭を巡らせる。


あちらの世界は過去探しが、こちらの世界は未来使いが。

闇を払い、世界を救うという使命。その一方で、世界が一つになればまた会おうという約束。


(闇を払っても、世界が一つになる方法ってあるのかな……)


僕の中で、何となく闇に対する考え方が変わりそうな予感がした。







真っ暗だった頭上が明るくなり、僕らは久しぶりに空の旅をしている。

時は夕暮れ、赤色に染まった空の下で見る風景はとても幻想的で、青々としてた草木は黄金色に、僕らも少しオレンジ色に、特にカノンの目は綺麗な茜色に染まっていた。あまりじっと見ていたら、僕の顔も赤く染まってしまいそうだったので、なるべく外に視線を向ける。


「洞窟は抜け出せたけど……ここがどこか分かんないね」

「大丈夫だよ。ここからまた闇のある場所を探していけばいいんだ。早く影を片付けなくちゃね」

「ツバサ、第一目的はシュウヤを見つける事だよ。それにしても彼に関する情報は、まるで無しだね……」

「もしかしたら、ファアルの世界にいたりして?」

「それは無いと思うな……」


根拠は無いが、確信があった。

シュウヤは、そこまで遠くにはいない。かなり近づいている。

僕は心のどこかで、もうすぐこの旅が終わる事を予期していた。別に未来予知をした訳でもないのに、何となくそんな気がした。

次第に日が沈み、一番星が現れた。遅れて大空いっぱいに広がる満点の星は、僕が天体観測をしていた時よりもずっと星が近くで見えて美しかった。

もう暫くこの空を眺めていようかと思ったが、それはペロからの呼び掛けで一時中断される。


「ねえツバサ、今日はあそこの丘で休まない? ペロ、あんまり暗い所で飛ぶのは得意じゃないみたい」

「いいよ。いつもありがとな」

「なーに、ペロはツバサの希望だからね」


自身の意志を貫き通すペロの姿は、本当勇ましくて心強い。

やっぱり僕にとって、彼女は大切なパートナーだ。



 ペロが舞い降りた所は、岩山が点々とし草木が生い茂る、あまり人の足が運ばれていない場所だった。周りより少し盛り上がった丘からは、森林が一望出来、上を見ると星が視界を覆うようにして輝いている。

休むには、絶好の場所だと思った。カノンには野宿になって申し訳無い気がしたが、その心配はなかったらしく、再び洞窟にいた時と同じようなテンションで、「こんな素敵な所で寝れるなんて、素敵ね!」と言葉を繰り返すくらいだった。

だが、これだけ静かで穏やかな夜空を見ていると、皆揃って眠気が襲ってくる。僕らは、木陰になるべく固まり、上着を布団代わりに掛けて床につく。


「おやすみ」

「おやすみなさい」

「良い夢見るアン」


それから皆が深い眠りにつくまで、時間はかからなかった。



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