表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Blue Bird ~fly into the future~ 完結版  作者: 心十音(ことね)
47/86

BlueBird 第47話


少し休んだところで、また歩き始める。暫く暗闇の道が続いたが、だんだん薄光が見えてきて大きな空間へと辿り着く。

空から今にも降ってきそうな巨大な岩、そこからも結晶が岩を取り囲むようにして生えている。まるで巨人が上る階段のような高低差ある紫色の土床からも、結晶が大小様々な大きさで生えていた。


「クリスタルがいっぱーい!」


地下水が溜まった水溜まりの上を、白いブーツにも関わらず跳びはねてはしゃぐカノン。

その隣にある結晶は、もし口があれば、彼女なんて一呑みしてしまいそうな大きさだった。

僕は自分で勝手に想像した事なのに、思わず不安になる。


「さっきの影の件もあるから、結晶には触っちゃダメだよ」

「はーい」

「それにしても、どれも異様な程光ってるアンね……不思議アン」

「でもいいんじゃない? 神秘的で綺麗だし、力がみなぎってきそう!」

(そんなお気楽な……)


 するとカノンの前にある結晶が、一瞬だけ白い光を放った。さらに、今度は地面が大きく揺れる。


「地震アン!?」

「!?」


ペロは飛行し、僕はカノンを連れて風で空中に留まる。上から岩が降りかかって来ないか心配したが、その必要はなかった。幸い上から降ってきたのは、小さな砂粒程度だった。


揺れがおさまる頃に、今度は激しい地響きが洞窟全体に伝わる。そして、結晶が再び光ったと思うと、突然地中からドリルのような手を持つモグラの影が、飛び出してきた。


「カノン!?」

「私、触ってないよ!?」


 するとカノンの背中からピンクの蝶の羽が生え、僕の風無しで宙に浮いた。


「下から来るなら今度は上から!」


素早く弓矢を構える彼女にペロも便乗して、空からピンクの矢と光弾が放たれる。

しかし、いずれも影が地中へ潜ると外れ、さらには攻撃がモグラに命中しても、真っ黒な鎧によって防がれてしまった。


「どうしよ……これじゃ歯が立たないよ!」

「うぐ……どうにか影の住みかを捉えて……痛っ!」


ペロが旋回していると、再び見えない壁にぶつかり通せん坊されてる事に気づく。恐らくここにいる影全員を一掃しなければ、抜けられない構造になっているのだろう。


「どうしよ……ツバサ君、何か方法無い?」

「何かって言われても……」


地中に潜る上に鎧をまとった相手となると、得意の風も活かせない。上から攻撃をするにしても、モグラ叩きに付き合わされるだけだ。


ここから外へ抜ける事も出来ない。


それなら……


「カノン、ペロ、もう少し高い所に移動して」

「アゥ!? ツバサ、まさかこの短時間で作戦でも思いついたのかアン!?」

「一応……!」


ペロとカノンは言われた通り、さらに上昇してその場に留まる僕と距離を置く。カノンは近くにあった背の高い岩に着地すると、もしもの事があった時に迎撃出来るよう再度弓矢を構えた。

二人の居場所を把握すると、僕はモグラが地中にいるタイミングを図って、あえて地面に着地した。


「ツバサ!?」


ペロの声を耳にせず、僕はすぐさま剣を地面に突き立てる。そして目を閉じ、頭の中でとある景色をイメージした。



 水平線が見える広大な海……しかし突然荒れ狂い、僕とペロを島へと連れ去ったあの激しい波を……。



「水よ!」


すると、剣先から大量の水が放出され、辺りは一瞬で水浸しとなる。それでも剣からはどんどん水が溢れ出し、僕の膝よりも高くにまで水嵩が増した。

僕は半身が水につく直前で空中へと一時退避し、剣の持ち手部分に爪先で立つ。そこから剣を無理矢理寝かせてその上に乗り、再び水上へと降り立った。まるでサーフィンのような構えになったところで、地中にも水が侵入したのだろう、水中からモグラの影が顔を出す。重い鎧を捨て身軽になったところで、ドリルを回転させながら襲いかかってくる。


「いっけええええ!」


僕は、荒れ狂う波の上で次々に影を蹴散らす。風の力も駆使してバランスを保ちつつ、剣から噴き出す水を影に浴びせながら、影から光の粒子へと変えていった。

さらに、鎧が外れた事で攻撃可能となったので、剣にって空中へ弾き飛ばされたモグラを、頭上で待ち構えていたカノンとペロが倒していく。


だんだん顔を出す影が減ってきたところで、僕は水上にいながら突風を放つ。すると、竜巻が水中に放たれ、徐々に僕の足元を軸とした巨大な渦潮が発生した。激しい波に、隠れていた影が次々顔を出し、渦潮に呑まれて身動きがとれなくなる。

渦潮が完全に出来上がると、僕は突風を使って空中に浮かぶ。剣をその場でクルクル振り回すと、先からパチパチ弾ける音と共に電気が発生した。


(ハヤテのようには、いかないだろうけど……!)


僕は電気を起こした剣を、渦潮の中心へと投げ込む。すると、水のある地面全体に電気が一気に流れ出し、水と影が一瞬にして蒸発した。


 

無事影を一掃し、ホッと一息吐く僕に、空中からカノンとペロが抱きついてきた。


「ツバサ君、凄ーい! こんなのすぐに思いつかないよ!」

「カノン……苦し……!」

「ツバサ、今回はファインプレーだアン。流石だアン」

「ありがとう……ありがたいけど、苦しい! 苦しいから二人共!」


両方から……主にカノンが僕にほぼほぼ密着してきたので、僕は目のやり場に困りつつ、何とか息が詰まらないようにするので必死だった。

彼女達の対応……という名の応戦をしていると、いつの間にか囲っていた壁が消えた。さらに、彼女達から視線をそらしていると奥へ進めそうな通路を見つける。

その通路自体は真っ暗であったが、突き当たりに小さな光が見える。

出口か、それとも例の光る空間か……


「ほら、二人共行くよ」

「うん! ツバサ君がいれば、怖いもの無しね!」

「お褒めに預かり光栄の至りだよ」


これで多少は大人しくなってくれると良かったのだが、寧ろ彼女の自由ぶりはエスカレートして、僕から離れたと思ったらいつの間にか例の通路を駆け抜けていた。

待ってと言っても、待ってはくれないだろう。苦笑いを溢しつつ、僕はペロと一緒に彼女の後を追う。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ