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Blue Bird ~fly into the future~ 完結版  作者: 心十音(ことね)
35/86

BlueBird 第35話 ~断章~


~心の幻影 知りたくないもの~



-----------


母さんがいなくなった。病気だったそうだ。

いつも暇さえあれば名前を呼んで、優しく頭をなでてくれる母さん。大好きな母さん。

そんな母さんがいなくなって、父だけになった。


それから暫くして、新しい母さんがやってきた。気付くと、小さな世界に引きこもっていた。

暗くて冷たい。

時々いい匂いと共にやってくる光に支えられながら、その世界で生きた。

ある日、いつものように光がやってきたと思うと、部屋から救われるようにして外へと飛び出していた。


「いきなさい」


頭にこびりつく、冷たく、寂しい声。

それが、新しい母さんとの最初で最後の会話だった。




行く当てなんて無かった。

暫く見なかったせいで、すっかり外の景色がどんなものだったか、この先の道がどうであったか忘れた世界に、不安しかなかった。

細くて、寂れた道を歩いて、誰かに声を掛けられた。

優しかったような、嬉しかったような。

けれど、それから全てが一変した。



怖くて恐くて、痛くて傷んで、辛くて苦しくて、狂って狂って……



さっきまで優しかったような声は、ガラガラと喉を鳴らして、高笑いしていた。

頭の奥まで残響して気持ち悪かった。

体の中にあるものを、全て吐いた。吐き出さざるを得なかった。

息も胃液も血液も全部、自分のものではなかった。居場所も無かった。

ただ残るのは、激しい頭痛と、骨まで響く強い衝撃と、痛みと恐怖。

自分はいないも同然だった。とても悲しく、寂しかった。怖かった。痛かった。



体が宙に舞った。一瞬、母さんのいる所に近づいたような気がした。

しかし一方で、ずっとポケットに入っていた母さんの形見が、別方向に飛ばされた。

母さんはここにいる。そう信じたくてずっと持っていた、母さんの形見。



それも遠くに飛んでいってしまって、本当に「僕」は一人になってしまったんだ。



もう駄目だと思った。

意識も視界も薄れて、深い闇に沈んでいく。






その時、ふと温かい声がしたような、気がする。

シュウヤ? いや、シュウヤはそんな罵声を放ったりしない。



言葉遣いこそ乱暴なものの、どこか優しく、温もりのある声だ。






そういえば、あの時、あの母さんの隣には誰かがいたっけ……

あの暗闇に光を射し込んで、本当の意味で部屋から救ってくれた「子」が……


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