BlueBird 第27話
ようやくペロを暗闇から解放してやると、そこは貧しい集落の墓場だった。
ポツポツと生える草の傍に、小さな土の山が出来ており、中心には今にも折れてしまいそうな木の板が虚しく刺さっている。
墓と思われる土山の一部には、今にもしおれそうな白い花が供えられていた。
「なるほど……ツバサはこれを見て、ペロの目を隠したのかアン」
「うん。いきなり見たら、ショックが大きいかなと思って……」
「ふぅん……」
必死に言い訳を探し、なるべく不審に思われないよう普通に振る舞う。
果たして、彼女の腑に落ちているかは、その返答だけでは上手く読み取れなかった。
気づくと日は暮れ、不運にも雨が降ってきた。
僕らはやむなく、この集落の一軒で雨宿りさせてもらう事にする。
散乱した服や皿等の残骸から、ここ数日誰も帰ってきていないと分かる。
(だからと言って、勝手に使って良い訳じゃないけど……)
「家主が帰ってくるまで、少し片づけするアン?」
「……」
ここの家主が帰ってくるかどうか怪しいが……と思いつつも、僕達は部屋の整理を行った。
服は、破れている物や切り込みがある物も含めて全て畳み、皿も破片だけ一カ所にまとめて、綺麗に残されている物は棚へとしまった。
中には棚ごと倒れていたものもあったので、それはペロと協力して立て直し、雨が入って来ないよういくつかの窓や扉も閉めておいた。
全て閉めてしまうと、部屋中にカビの臭いが充満してしまうので、やめておいた。
ついでに僕は、こっそり上着を外に干しておいた。びしょびしょになるのは目に見えてるが、その代わりに袖についたものを洗い流してくれると思ったからだ。
ペロには、動いていたら暑くなったからと誤魔化しておく。
彼女は終始
「ふぅん」と、どっちつかずな返事をしてくる。
「一通り綺麗になったし、少し休ませてもらおっか」
「そうアンね」
ところが僕達は、日頃の疲れが溜まっていたのか、そのまま部屋の隅で寝てしまった。
次に目を覚ました時、僕は冷たい壁に体を寄せ合い、互いの温もりを感じながら一夜を過ごしていた事に酷く驚いた。
だが辺りを見渡すと、未だ家主は帰っておらず、雨も静かに降り続いている。
だが、雨音を聞いていると、だんだんそれとは別の音が近づいて来ている事に気づいた。
(……?)
ペロは、まだ寝ている。
僕は、何となく嫌な予感がして、再び黒い布で彼女の目を隠すと、一人部屋を後にした。