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Blue Bird ~fly into the future~ 完結版  作者: 心十音(ことね)
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BlueBird 第22話

未来予知で見た道を歩いていくと、だんだん人数が減り、昼間なのに薄暗くなってきた。

終いに僕らは同じ街の中とは思えない、不穏な空気が漂う場所へと迷い込む。


「何だか……不気味だアンね」


怖がるペロを見て、僕がそっと彼女を肩に乗せる。

足音を最小限にして、慎重に奥へと進むと、フェンスに囲まれた所でフェイが壁にもたれて座り込んでいた。

ペロが思わず名前を呼びそうになるが、僕は今はまだと伝え、なるべく彼の逃げ道を塞ぐようにゆっくりと近づく。

どうやら彼は、僕らの気配に気づいているようだが、特に動こうとはせず様子をうかがっている。



ある程度近づいた所でようやく僕らは姿を現し、彼女にも発言を許可した。


「もう逃げられないアンよ!」

「……」


反応が無い。ペロは僕の肩から飛び降りて、もう少し彼に近づく。

彼を追い詰める事が出来て、少し余裕気なようだ。


「白状するアン。どうして街のものを盗んでいるアン?」

「うるさい、よそ者が!」

「ひぃっ!?」


小柄な見た目に似合わないとてつもない声量に、ペロは思わずひき返し僕の背に隠れた。

僕も彼の声には驚いたが、少し心当たりがあった。

今度は僕がゆっくりと前進し、彼に近づく。

するとフェイは、まるで針を突き刺してくるかの如く僕を睨んできた。

体も強張らせ、力を入れ過ぎているのか、少し震えている。


僕は、彼の感覚に覚えがあった。



あの時、感じた。

かつて僕にあった人に対する強い恐怖心。

ふと、過去の事が脳裏に過る。

あの時のシュウヤは、今の僕と同じ立ち位置にいたんだね。



「ああ、同じなんだ……君も僕も」

「はあ?」


僕が近づくにつれ、フェイはますます歪んだ目つきで僕を睨む。

ペロは恐怖のあまり、この場から逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

それは、生き物として正しい判断だと思う。それに対し、今の僕は生き物として正しくない。

生き物らしくない。


解ってる。でも僕は一度、生き物じゃなくなりそうになった事があるから。

彼と同じように。


「知ってるよ。僕も君と同じような経験をした事があるんだ。だから、君の怖いという気持ちも、どうしたらいいのか分からなくて戸惑う気持ちも、僕には分かる」

「黙れ!」


すると、フェイは腰のベルトにかけていた銃を僕達に向けた。

ペロは小さな悲鳴をあげて、思わず逃げる体勢に入る。

一方で僕はまた正しくない事をしている。一歩も引かず、むしろさらに彼に近づこうと足を運んでいた。

近づくうちに、だんだん彼の目がはっきりと見えてくる。

光を失い、人を疑って止まない、この世界に希望なんて抱いていない、闇の黒にとても近い灰色の目だ。

目の色は違うけれど、僕も確かにそんな目をした事がある。

今となっては、昔の話だけど。


(こんな怖い目をしていたのに、シュウヤは僕に手をさしのばしてくれたんだね……)


今の自分がいるのは、彼のおかげだ。

僕は、彼みたいにはなれないけれど、あの時の喜びを知っている以上、行動せずにはいられなかった。

すると、フェイは僕に銃を向けたまま、「ハンッ」と鼻で嘲笑う。


「とんだ戯言だな。馬鹿馬鹿しい。そんなの、ただの偽善だ。俺は、そういう綺麗事を抜かす奴が一番嫌いなんだよ。そんな言葉を掛けられて、救われた奴は一人もいない」

「そんな事ないよ!」

「いや、そうさ。俺は知ってるんだ」

「え……?」


フェイは構えていた銃の先を、僕ではなく自分の胸に当てる。

ペロはどよめいた。これには、僕も声をあげずには言われない。


「やめろ!」

「フッ」



耳に焼けついてこびりつきそうな、嫌な音が放たれた。






……ところが、


「えっ……」


フェイは、むくりと立ち上がった。

確かに弾は彼の胸を貫いたはずなのに、体からは一滴も血が流れていない。

代わりに、髪色が美しい銀髪、或いは白髪に近い色へと染まっていく。


「これでもお前は、俺の気持ちが分かるのか? なあ、偽善者さんよ!」


フェイの目は、真紅の光を放っていた。


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