第六話:馬鹿は死んでも治らない
「ご飯できたぞ姉貴~」
「サンキュ~、だけど……姉貴じゃなくて姉さんって呼べっつったろうが!」
「痛だだだだ!!そう呼んで欲しいんだったらもっとお淑やかになりやがれ!」
「うるさい!弟のくせに!」
「力強くなった⁉ギブ!ギブ!あと胸当たってるから!気付いてる⁉」
「おおっ⁉姉の体に欲情するかこの変態め~」
「してない!いいから早くご飯にしよう姉さん」
「ったくぅ~。最初からそう呼べばいいのよこの愚弟」
それは、異世界で白骨三途が過ごした日常の風景だった。
(…………ん?なんだこれ?夢?)
ようやく気絶から回復したスケルトン。ちなみに、気絶から約三日ほどたっている。
(あれ?ここはどこ?私は誰?)
どうやら寝ぼけているようだ。まあ、私は誰?はさすがに冗談だろうが、ここがどこかわからないのは本当だろう。
(あぁ~そうだった。異世界転生して……そうだ称号!なんか不名誉なものをもらった気がするぞ!)
思い出すな否や、早速称号を確認するスケルトン。震える指でステータスの称号:お調子者の欄をタップする。
お調子者:調子に乗ると何かしらやらかす馬鹿。もっと落ち着きを持て。
「カラカラカラカラ!!!(余計なお世話だよ!!!)」
ステータスに馬鹿と書かれる。きっとこれからステータスを見るたびに俺は馬鹿なんだな~と思うことを想像すると、スケルトンは泣きたくなった。いや、涙腺は無いから涙は流せないが。
(俺一生この称号引っ提げて生きてくの⁉叡智さん⁉これ何とかならないの⁉)
『マスターの行動が改善されればその称号は消失します』
(マジか⁉ダメもとだったけど何とかなった!よし、俺はこれから落ち着きのある人間を目指すぜ!)
『不死族は人間にはなれません』
(細かいことはいいんだよ!)
しかし人間にはなれないのか。人化のスキルとかあるのかな?さすがに一生骨は嫌だ。ハーレム創れないし。スケルトンはそう思った。
……スケルトンは心のどこかでは期待していた。スケルトンは人型に近い魔物だから進化次第では人間に戻れるのでは?と……。
まあ、実際にそんな都合のいいことはなく、しかし、現実を突きつけられたらこの思考である。
元人間なら人間に戻りたいと思うのは当たり前である。しかし、動機が不純だとその当たり前の願いにここまで呆れられるものなのか。
……称号はお調子者よりも馬鹿のほうが似合っているかもしれない。
話は変わって、スケルトンは今まで疑問に思っていたことを口にした。
(そういえば俺、何で気絶したんだ?)
『マスターのMPが0になり、魔力枯渇の状態になったからです。魔力枯渇になれば不死族でも気絶します』
(なるほどなるほど。これから魔力枯渇には気を付けよう。あと、なんでお調子者なんて称号が付いたんだ?)
『魔力操作のLvが1上がって調子に乗って気絶するまで珍妙な踊りを踊り続けるというお調子者な行いをした結果だと推測します』
(ぐぬぬ、納得はできる……が、素直に頷きたくない。あと、わかっていても誰かに馬鹿って言われるのイラッと来る。)
……一応、馬鹿なのは自覚しているらしかった。まあ当然といえば当然だ。実は、前世でも結構馬鹿といわれていたので自覚はあった。
冬に寒中水泳に行って風邪をひいたり、特に大食いでもないのに、賞金に目がくらんで大食い選手権に参加して、複数の観客の前で吐いたり、まあ他にも色々あるが、あまり人の黒歴史を説明するのもいけないので、これでスケルトンの馬鹿な行動に関しての話は終了する。
『称号お調子者が消失しました』
(えっ!マジで⁉今の流れでなんで消失したのかはわからんがとりあえずやったぜ!)
思いがけない幸運にはしゃぐスケルトン。また変な踊りを踊ろうと思ったが、それでまた変な称号が贈られると困るので何とか抑える。しかし、それは無駄な努力だった。
『称号馬鹿を入手しました』
スケルトンの表情が死んだ。いや、もともと死んでるし、スケルトンに表情なんてないけど、肉体があれば確かにそうなっていただろう。
今度は先程みたいに震えず、スムーズな動き出称号を確認する。
称号馬鹿:もう救いようがないほどの馬鹿。いくら注意してもどうにもならない。
「カラカラカラカラカラカラカラカラ!!!(せめてもっとオブラートに包んで馬鹿って言ってくれぇえええええ!!!)」
親切心も何もない。ひどいステータスシステムである。
(この称号は絶対消す!もうホント!!マジで!!!)
『不可能です。説明の欄にも救いようがないと書いてあります』
(嘘だ!確かに前世から馬鹿だ馬鹿だと言われてきたけど、称号に乗るほどの馬鹿だなんて!!!)
『現実を直視することをお勧めします』
……馬鹿は死ぬまで治らないと言うが、スケルトンは死んでも治らなかったようだ。今回はそのことを身を持って体験したのだった(笑)。