第二話:情報収集
(さ~て、とりあえず情報収集から始めますか。叡智さん。まずここどこ?)
『ここは【死霊の森】といわれている不死族の巣窟です。マスターのいる位置はこの森の北。しかも外側なので弱い魔物しか住んでいません)
ちなみに、この森は外側から内側に進んでいくにつれて魔物がどんどん強くなっていく。
(ふ~ん、それはありがたいな。いきなり強いやつと対戦なんてこのステータスじゃ厳しそうだし。んで、この森には他にどんな魔物がいんの?)
『北側はスケルトンやファイタースケルトン。ジャイアントスケルトン。ソードスケルトン、ゴールドスケルトン、ナイトスケルトンなどが生息しています』
(ふ~ん。じゃあほかの地方は?)
『東には獣スケルトン、獣グール、血獣などが生息しています。西には魔法蝙蝠、魔法スケルトン、魔力喰などが生息しています。南にはゾンビ、グール、下級吸血鬼などが生息しています。中心地のははずれには魔眼族が、そして中心地にはこの森の不死族を従える【不死王】リッチが生息します』
(なるほどなるほど。ん?魔眼族って何?)
『生まれつき魔眼のスキルを所持して生まれる一族のことです』
(マジで⁉何その厨二心をくすぐるスキル!ぜひお会いしたい!)
少年……いやスケルトンは、前世では「クっ!右手の封印が!」や「右目がうずく!」みたいな痛いことはしていないが、もしそんなスキルがあったらな~と思う程度には憧れていた。
(まっ、それについては今は置いといて、魔物のことはもういいや。人間のことについて教えて)
『人間はこの世界で一番数が多い種族です。魔法が優れているわけでも寿命が長いわけでも、身体能力に優れているわけでもありませんが、数が多いのが特徴的です。他には、身体能力に優れている獣人や、魔法に優れて寿命が長いエルフ、パワーがあり手先が器用なドワーフなどがいます。これらを総称して亜人と呼びます』
(えっ!やっぱ獣人とかいるの⁉やった~会ったら絶対モフモフさせてもらう。なぜなら俺がたった今作った異世界でやりたいことランキングトップ3に入っているから!)
ちなみに1位は最強になる。2位はハーレムを創るである。一位以外が色々とひどい。
(参考になったよ。ありがとう叡智)
『…………』
(返事は無し……か。やっぱ寂しいな。さて、ステータスをもう一度確認しとくか。
ステータス
名前:なし 種族:スケルトン 年齢:0 性別:なし
Lv:1/10
HP:10/10 MP:92/100
物理攻撃力:15 物理防御力:20 敏捷性:5 器用:8
魔法攻撃力:0 魔法防御力:10
スキル
魔力操作Lv2 光耐性- 火耐性-
特殊スキル
《叡智》 《取得経験値10倍》 《強奪》
称号
異世界の転生者
(ん?なぜ魔力が減っている?困った時の叡智さ~ん)
『スケルトンは神経や筋肉がない分無意識に魔力を使用して動いています。つまり、動いているだけで魔力を消費します』
(えマジぃ⁉あっ!それで魔力多いの⁉えっ!どうにかなんないのコレ⁉)
『魔力は時間経過によって回復します。寝るとさらに回復が早まります』
(不死族って寝れるの?)
『不可能です』
(じゃ意味ねぇよ!寝ると回復が早まるなんてだけなん情報だよ!)
しかも、時間経過の回復は微々たるものである。スケルトンは気づいていなかったが、最初にステータスを見た時点でMPはすでに10減っていた。そして、それから20分は動いていないから、10分で1回復する計算である。
そのあともひとしきり不死族として生まれた理不尽を嘆きながら、落ち着いた後、スケルトンは1つの疑問を抱いた。
(そういえば不死族ってどんな利点があんの?人間の体より便利なことってなんかある?)
『まず、老衰しません。』
(マジか⁉よっしゃ!もしかして人類の永遠の夢、不老不死ですか⁉)
『不老ではありますが、不死ではありません。他には、物理攻撃で痛みを感じることがありません。食事、睡眠が必要ないので飢餓や睡眠不足で死ぬことはありません』
(おおっ!不死族がかなりいい種族に見えてきたぞ!)
『ただ、肉体が役に立たない分魔力を多く消費します。他にも、触覚、味覚がない、性による快感を得られないなど、複数のデメリットが存在します』
(なんですとぉおお⁉ということは、俺はこれからハーレム創っても結婚できないしぃ!ケモミミモフモフしても何も感じないと⁉そういう事か⁉)
『肯定』
(Noooooooooo!!!)
こうして、スケルトンのやりたいことランキング2位と3位は、永遠に叶わぬ夢となった。
(いや諦めんよぉおおおおおおお!進化して絶対肉体手に入れるから!絶対この夢は諦めないから!進化したら肉体手に入れられるよね?できるよね叡智さん?)
『……可能です』
(やっふぅううううう!俺は絶対に諦めない男だ!!心なしか叡智さんが呆れたような気がしたけど気のせいだよね?)
そのはずである。叡智に自我はない。質問に答え、不利な時に注意する。それだけが叡智の存在意義であり、それ以外何もできないのが叡智なのだから。だから、さっき答えるまでの妙な間は錯覚だろう。
(よし、それなりに情報は手に入れたから、魔力が回復するまで待って、全快したらレベリングだ!)
スケルトンは、今Lv1。最強へは、まだ遠い。