表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ALIVE  作者: 彼方 千
ALIVE
2/2

いのちの温度

奇跡的だといえる。

そこは家から10分足らずの場所だった。

逆になぜ自分が迷子になったか不思議なものだ。


とにもかくにも早足で部屋へ駆け込む


「…」


久々にこんなに素早く動く。しかし病院なんて間に合うはずはないし、携帯は携帯をする意味を失っている。


「まずは…」


上着のままそっと子どもを下ろし、部屋の暖房をつける。さらに毛布に包みなおし、再度意識を確認する。


「…だめか」


先程より顔色はマシになったがこのままでは、凍傷をおこしかねない。


次に毛布のまま、風呂場へ連れていき40度と熱めに設定し、深めの桶に湯をためゆっくり足からお湯に浸ける。


ビクンっ!

反応がある

「!…よし」


そのままゆっくりマッサージするように腰まで入れる。


まずは足と腰に血流が回るようにする。


「おい。起きろ、死ぬな」

その間にも声をかけつづけた。


その時だ。


「…っい」

「起きたか」


「ひ…っあ…いたい!!いやっ!」


目は覚めた。

しかし、一安心にすぎない。冷えきった体に40度のお湯は皮膚に刺さる痛みなのだろう。


そのせいか必死に暴れる


「落ち着け。君の手足に血流を流している」


「やッ!っ!イタいイタぃごめんなさっ!おとーさっ…ごめんなさ…はなしっ!!」


「このままだと、手足が無くなるかもしれない。そうならないようにしてるだけだ」


我ながら子どもに分からない事をいうやつだと思うが仕方ない。


「あゔっっ!」

子どもはおさまる気配をみせず、マッサージしている手に噛み付く。

子どもとて本気を出せば、肉を食い破りかねない。


血が、滲む。


「…それでいい。そのまま耐えていろ」


血の滲む腕にチラリと目を向けるがすぐに少年の腕に視線を戻す。


俺に痛みは届かない。



「ふっ…ぅ…ゔ~…、」

しばらくそうして体に血を巡らせてやると凍傷の危険性は脱し、せいぜい凍瘡になるくらいになった。


しかし、子どもの怯えっぷりは最頂となっていた。

噛み付くのは止めたが、今度はガタガタ震えて身体を丸くしている。


俺もびしょびしょなり、この真冬ださすがに風邪をひく。


このままにしておくと、この子もまずい。

そう判断し、子どもに手を伸ばし

背中に触れた。


「…っ!」

「…俺がこわいか」


ビクリと震えた身体とは裏腹に言葉は逆に作用した。


「…怖くな…いで…っす」


…見え見えのウソをつかれても対応に困るものだな。


俺はそっとため息をつき、添えた左手でポンポンとゆっくり背を叩き、何事もなかったように答えた。


「怖くていい。痛みをあたえたんだ。恐怖の対象であって当然だ。」


「更に言えば知らない家の風呂場にいるんだ。だけどこうしなければ君は命を落としていたかもしれない…だから」


だから…なんだ

許せ?感謝しろ?

─…違う。


見なかった事にだって出来たはずだ。

なのに、できなかった。


見過ごしていたら、と思うと先程噛まれた痛くもない腕の傷が少し疼いた気がした。


「だから……あー…」


言葉が決まらない。


キュッ

「!」


「あり…あと…ござい…まっ…た」


噛まれた方の右腕に感触を感じる。

小さな手に包まれるのは親指一本。


身体の自由が効いてきたようだ。

ただ、それに安堵する。


「…ああ」


「…ぅ」

しかし次の瞬間、子どもの身体が大きく右に傾いた。


「!」


咄嗟に両手で支え、脈や他を観察するが、どうやら思っていた最悪のものとは違うようだ。


緊張の糸が解けた、のか


「すー…くぅー…」


寝息に、安心せざるおえない。


支えた身体をそっと持ち上げ、着ていた服を脱がし、タオルでふく。


「…」


はっきりとみえる“与えられた傷み”に無性に何かがこみ上げてくる。


なるべく無心ですぐさま着替えをすると、わかった事が1つある。



性別は少年のようだ─。


2話目です。

1話めは起伏が少なかったと思うので…


少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


ちなみに作者半寝です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ