表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒翼のキメラ  作者: 也八
3/5

始まり2

チケットを見せ言われるがまま進んでいくと、街があった。俺の住んでいた街とは全く違う雰囲気だ。どうやらアジア系の人々が住んでいるらしく、先程から自分達とは全く違う人種の俺を、物珍しそうに見詰めていた。

「貴方がヴァルター=エメリッヒさんで、間違いないのかな? 」

後ろから声がしたので振り返ると一人の少年がいた。綺麗な黒髪に、それが映える白い肌、所謂美少年と呼ばれる部類だろうか、どこか儚げで電子書類で見た大和撫子なんて呼ばれそうなそんな少年が俺を見詰めていた。

「・・・綺麗だな。」

「・・・えっ」

無意識で溢した言葉がどうやら聞こえていたらしい。彼は少しだけ動揺したようだ。

「すまない、ヴァルター=エメリッヒは俺であっている。君はこのチケットに関係があるのか? 」

先程俺の名前を呼んでいるから関係があるのだろうと思いチケットを見せてみた。すると彼は一瞬寂しそうな表情をしたが、また笑顔を作って関係者であることを告げた。

彼が目的地まで案内してくれるらしいので着いていくことにした。今の俺にはこの綺麗な少年しか頼れる人はいないのだから。

「そういえば、僕の紹介まだしてなかったよね? 僕は安条楸です。長い間になるか短い間になるか分からないけど、取り合えずよろしくね? 」

「・・・ああ、よろしく。」

気になることは山ほどあるが、目的地に着けば分かるだろうという軽い気持ちで、俺は彼の後を追った。彼の背中は何だか物悲しく見えた。

「あの、さ。」

彼が突然口を開いた。

「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから寄り道しない? 」

彼の目元が滲んでいる。何故かは分からないが、何かから怯えているように見えた。

「どこに行くんだ? 」

無意識に彼に答えている自分がいた。このままでは彼が消えてしまいそうなのを本能で察したようなそんな気がした。たかが十数分前に出会っただけの相手だというのに。


行き着いた先は広場のような場所だった。

「ここはね、海だった場所なんだって。でもほら、科学が発達しすぎて今じゃ科学が政権を決めるなんてそんな時代でしょ?だから綺麗だった海がどんどん汚れてきちゃって、人に害を及ぼす可能性があるってことで埋めちゃったんだって。今は何も建ってないけど、あと一年もしたら娯楽施設が建つって噂があるみたい。」

「・・・海。」

僕も綺麗な頃なんて見たことないんだけど、そう言うと彼は寂しそうに笑った。海を思わせる物は何一つなかったが、彼が言っているのであれば多分間違いはないのだろう。

「安条。」

「ひさって呼んで? ヴァルターさんは特別だから。」

「そうか、じゃあ俺のことも好きなように呼んでくれ。」

じゃあヴァルって呼ぶねと言うと、彼は嬉しそうに微笑んだ。出会ってから一番綺麗な笑顔だった。

「ひさ、そろそろ行こうか? 遅くなるのは相手に悪いし、何よりひさの帰りが遅いと心配するんじゃないか? 」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ