1/5
プロローグ
同性愛表現があります。
閲覧は自己責任でお願い致します。
錆びた鉄の臭いは嫌いだった。今は何も感じなくなった。自分の身の回りの物なんて何も気にしなくなっていくのは当たり前だからだ。
愛する人に拒まれた過去も、両親に売られた過去も、錆びた鉄の臭いで忘れてしまう。
奴等の飛び散る肉片や傷の合間から見える臓器や骨を見ても、もう吐き気は沸いてこない。
彼が今の俺を見たらどう思うか、両親は悲しむだろうかなんて考えには至らなくなった。
これが生まれ変わった自分の仕事だ。全うするのが当たり前だ。そう思い始めた。
過去の平穏な生活より、キメラとしてまた新たに人生をやり直している今の方が、どことなくだが自分は輝いている様な、そんな気がしてならない。
あの頃よりは役に立てている。それでいい。
俺を拒絶した彼のことなどもう忘れるべきなのかもしれない。
もう仕事の時間である。
早く行って全てを忘れて暴れてしまおう。