第7話:宮警備隊
バスで移動しておよそ4時間。サファイアたちは、その国の中心にある大都市"ル・プロガリー"に到着した。
王宮はその都市の北部の高台に君臨している。
"ル・プロガリー"は海に面しており、王宮からは遠くまで広がる蒼い海の絶景が見られる。
王宮までは、さらに30分ほどかけてバスに乗って行かなければならない。
煉瓦造りの綺麗な建物が建ち並ぶ街の中を、バスは進んだ。
そして昼過ぎ頃、サファイアを乗せたバスは王宮に到着した。
『うっわー!!』
生徒たちは、目の前に広がる豪華で大きな石造りの門や、奥に微かに見える美しい庭園に目を輝かせた。
門は閉まっていて、数人の警備員がバスを点検しに近づいてきた。
バスに異常がない事が確認されると、監視カメラを通して警備員が門の開閉を操作する人に合図を送り、門を開かせた。
そしてバスはゆっくりと進んだ。
「ねぇ。あの警備員の人、女の人よ。カッコいいなぁ…私もなってみたいな…」
近くに座る生徒が話しているのを聞いて、サファイアはその警備員を見た。
金髪の肩まで掛かる髪を後頭部で1つくくりしていて、腰には手錠の様なモノが見える。
「ホントだ。カッコいいね、…でもどうしたらなれるんだろう?」
「知らなーい。…紲ちゃんなら知ってる?」
2人は紲に尋ねた。
「知ってるよ。でも、門の前にいた人たちはタダの警備員じゃないんだよ」
「え、何なの?」
その話を聞いていた生徒たちは興味津々だった。
隣に座っていたサファイアも耳を傾けていた。
「あの人たちは、宮警備隊と言って、王様とその親族を何より優先して保護する、王族のための特別な警備隊よ。
主精の妖精レベルが"STAR"以上、人間の妖力レベルが"ランクA"でないとなれないんだよ」
「妖力レベルって何?」
生徒同様にサファイアの頭上にもハテナが浮かぶ。
聞いたことのない単語だ。
「来年くらいに習う内容だよ。人間も妖精と同じで、レベル分けされてるの。ランクAは2番目に凄いランクなんだよ。つまり、妖精も人間もエリートでないと入れないの」
「へぇ…じゃあ、なるのは難しいのね」
「そうらしいよ」
なりたいと言っていた子は残念がった。
「てか、紲ちゃん物知りだね。流石だよ!」
「へへ…」
紲は微笑んだ。
バスが駐車場に停車すると、警備隊隊長の女性がバスの中に入ってきた。
「皆さん、こんにちは!」
『こんにちはー』
「これから王宮の中での注意を説明するので、よく聞いてくださいね!」
『はーい!』
宮警備隊の女性はとても明るい人で、生徒たちに分かりやすく注意事項を説明し始めた。
「…と言うわけで、これだけは守ってくださいね。
では、御ゆっくり王宮を御堪能ください」
3分位で大方の説明を終えると、警備隊の隊長は一礼をしてバスから降りていった。
生徒もバスから降り、各々の班に分かれて見学を始めた。
サファイアのいる班は、リーダーの紲が他のメンバーを率いて庭園に向かっていた。
サファイア・紲・レベ以外のメンバーは、ルイクとイクル。
この2人は普段から特に紲に媚びる様子がないため、班決めを進めるために紲によって選ばれたのだ。
2人が入ったことで、紲争奪戦は角が立たずに収まった。
この2人は双子で、いつも一緒に行動している。
ただ、10歳の男の子だけあって、やんちゃで落ち着きがなく、普段はいつも走り回っている。
だが、今日は大人しく紲たちの後についてきていた。
「今日は大人しいね」
レベは不思議がっていた。
「…先生たちに散々注意をうけてたみたい。あと、今は少し緊張してるって」
「へぇ…」
レベは納得した。
「でも、緊張が解けてはしゃぎだしたら大変ね。妖精に見てて貰わなくちゃ。さくら!」
紲は後ろからついてきている主精のさくらを呼んだ。
「はいな」
さくらは直ぐに紲の側に寄った。
「あの双子をしっかり見ててね」
「承知しました」
命令を受けたさくらは紲から離れて双子が見える範囲に移動した。
ルイクとイクルにも主精はいるが、2人と同じレベルで一緒になってはしゃぐ厄介な妖精だ。
さくらが監視役で最適だろう。
今回の校外学習では、普段通り妖精たちは主人と一緒に行動している。
ただアイビーだけは動き回って迷子になると厄介なので、サファイアのリュックの中だ。
こうして歩いているうちに、庭園の立派な入り口が見えてきた。
長く続く美しい緑のアーチのを通り抜けると、そこには植物園でも見られない様な草花や樹木等の貴重な種類が沢山存在していた。
他にも美しい鯉が泳ぐ大きな池や、それを囲むように並ぶ草花や彫刻が広がっている。
「うわーキレイ!」
レベは池に近づいて泳ぐ鯉を眺めた。
「俺たちも見に行こー!」
「おぅ!」
ルイクとイクルも池に鯉を見に近づいた。
紲は瞬時にさくらに目で合図を送る。
さくらは頷き、双子の後を追った。
それから紲とサファイアは草花の中を歩き回る事にした。
「流石は王宮よね。珍しい植物ばっかり…。来てよかった」
道々にある植物を見て、紲のテンションは最高潮に上がっていた。
「うん」
疲れ気味だったサファイアも、植物園に入ってからはリラックスしている。
「ここは落ち着きますね。きっと癒しの効果があるのでしょうね」
ナディーは垂れ下がる葉や花を優しく手でなぞり、微笑んだ。
「うん。落ち着く。それに、マイナスイオンを感じる…」
そのサファイアの発言に時が止まる。
「「マイナスイオン?」」
紲とナディーは揃ってサファイアに聞き返した。
「感じるでしょ?」
首を傾げるサファイア。
「…そうですね」
「ええ…」
ナディーも紲も微笑み、優しい眼差しでサファイアを見る。
「?」
サファイアはその2人の様子を不思議がった。