表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Elfing  作者: ドライマンゴ
第1章:elfing
6/149

第6話:校外学習

沢山の車が行き交う国道で、とあるバスから愉快な歌が聞こえてきます。


『あるこー あるこー わたしはー元気♪』


今、サファイアのクラスはバスで移動中。


行き先は王宮。


今日は校外学習の日です。



「ねぇサファイア、今日はとっても楽しみね」


校外学習が本当に楽しみな紲は、満面の笑みで隣に座るサファイアに話しかけた。


「うん…」


しかしサファイアはあまりノリ気ではない。


サファイアの脳裏には、昨日の光景が浮かんでいた。



――昨日


校外学習を前日に控えた昨日のHRでは、明日の班決めをすることになっていた。


「皆さん、このクラスの明日の校外学習先は"王宮"に決まりました。これから明日一緒に行動する班を決めましょう。皆で仲良く、自由に決めてください」


教師のその言葉に、生徒たちのテンションは最高潮に達した。


そして各々、好きな子同士で集まり始めた。


そこで問題になるのが紲が入る班だ。


当然、紲の周りには男女問わず沢山の生徒が押し寄せる。


「紲ちゃん、同じ班になろう?」


「いや僕と!」


「私とよ!!」


遠足の浮かれた気分から、誰が紲と同じ班になるのかの争奪戦が幕を開けた。


そんな中、離れたところでサファイアはナディーとアイビーだけで固まって静かに席に座っていた。


「大変そうですね、紲さん」


そうナディーが話しかけると、「そうだね」とサファイアは遠い目で人混みの中にいる紲を見た。


「…サファイアはどなたと組むのですか?」


ふとナディーは尋ねた。


「別に。…どうせ、独りになるよ」


肘をつくサファイア。


「そうでしょうか?」


「?」


ナディーが意味深な笑みを浮かべたので、サファイアは不思議そうにナディーを見る。


しかしナディーは笑みを浮かべているだけだった。


するとその時、教師が班の条件を告げた。


「ひとつの班の人数は、5人にしてください」


その言葉には、辺りからブーイングが起こった。


「仕方ないよ。とりあえず、この中で5人で固まってみよう?」


紲の言葉で、集まっていた沢山の生徒は5人ずつに分かれた。


丁度5人に分かれる事ができたグループは、渋々紲から離れていく。


そして最後には、紲を含む女子が7人残った。


6人とも紲を強く崇拝する子達で、気が強い。


「えー、7人だよ…どうする?」


「私、分かれるのイヤー!」


すると紲は教師に尋ねた。


「先生、7人じゃダメですか?」


「駄目です」と即答する教師。


「じゃあ、6人はダメですか?」


「う〜ん、そうですね…6人なら…いいでしょう」


「ありがとうございます」


紲は笑みを浮かべて皆の所に戻った。


「紲ちゃん、どうするの?」


6人は心配そうに周りに押し寄せた。


「…私が抜けるから、人数は合うでしょ?」


そう紲が言うと、「えー紲ちゃんが抜けるの!?」「私、紲ちゃんとがいい!」「私も〜」と6人全員がグズッた。


しかしすぐに、「…アンタが抜けてよ!」と6人の中でも特に気の強そうな子が、その中では気の弱い子を爪弾きにし始めたのだ。


「そーよ、そーよ」


他の5人も同調する。


「え…!?」


急に友人から弾かれた子は驚いて助けを求める視線を送るが、誰も助け様とはしない。


所詮はこの程度の友達だったという事だ。


「皆だめよ、やめて!私が抜ければいい事なの…」


紲は止めさせようとするが、もう遅い。


その言葉は女子たちに届いていない。


孤立した子の目には涙が溜まっている。


「ちょっと!皆は友達でしょ?こんな事でケンカしないで」


様子を見ていた紲は珍しく大きな声を上げた。


すると6人は目を見開いて驚き紲を見た。


「ケンカ、したらだめよ。せっかくの遠足なんだから」


「…」


紲の言葉が届いたのか、6人は俯いた。


「…だって紲ちゃんと同じ班になりたいんだもん」


6人は口々に言う。


しかし紲は、「ありがとう、でもごめんね。私、別の子と班を組むわ」と言ってサファイアを見た。


「?」


呆れた様子で見ていたサファイアと目が合う。


それから紲はサファイアの元に向かって言った。


「サファイア、同じ班になろうよ!」


「へ!?」


目を見開き驚くサファイア。


「だめ?」


また上目遣いでサファイアを見る紲。


「な…何で?」


サファイアは思わず尋ねた。


「何でって…理由が必要?友達じゃない。私、サファイアと同じ班になりたいの」と正直に答える紲。


「いい?」


「うん…」


サファイアは頷いた。


すると紲は孤立した子を見て、「…レベも、一緒の班になろうよ!」と手を差しのべた。


「紲ちゃん…。いいの?」


その子は涙目になりながら、紲に尋ねた。


「もちろん。ね、サファイアもいいよね?」


「え?…う、うん」


サファイアが頷くと、紲はその子をサファイアとの輪に引き入れた。


「決まりね、レベ!」


「うん、ありがとう」


彼女はレベ。レベッカ・プリオ。


「あと2人ね」と紲は言う。


その後他のメンバーが決まらずまた騒ぎになったことは言うまでもない。



とまあ、こういう成り行きでサファイアは紲と同じ班になった。


女子3人と男子2人の班だ。


そんな昨日の出来事で、サファイアは十分疲れていた。


「サファイア?」


そんな事には気づいていない紲は、サファイアに何度も話をふる。


しかしサファイアは「うん」と頷くだけだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ