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Elfing  作者: ドライマンゴ
第1章:elfing
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第2話:授業~妖力~

静まり返る教室。


そこへ、担任の教師が教室に入ってきた。


「おはようございます、皆さん」


教師は笑みを浮かべ、挨拶をした。


「「「おはようございます、先生」」」


生徒たちは声を合わせて挨拶を返した。


サファイアのクラスの担任は、明るく真面目な性格で人柄も良く、分け隔て無く誰とでも仲良く接する事で、同僚の教師や他クラスからの評判もいい。


クラスでも人気者だ。


唯一サファイアに普通に接してくれる大人でもある。


そんな教師だが、クラスでの生徒たちのサファイアへの扱いに気付いてはいない。


サファイアに告げ口する気は毛頭ないし、生徒達も教師の前ではいい子ちゃんに早変わりする。


なので、これからも気付く事は無いだろうとサファイアは思う。


そんな事を考えながら教師を見ていたサファイアは、いつもと違う教師の装備を不思議に思った。


「?」


いつもなら教科書や何やらで両手が塞がっているのに、今日は出席簿と筆箱以外の持ち物は見当たらなかった。


教師が教卓に着くと、


「起立…礼!」


学級委員長の紲の授業始まりの挨拶で、授業は始まった。


しかし教師は何をするわけでもなく、生徒たちを見渡した。


しばらくして、話を始めた。


「…皆さんは学園に入学して既に3年が経ちました。中等部への進級テストは3ヶ月後ですね。この3年間で、主精とはより強い絆が結ばれていることでしょう。

なので今日からは妖精との力である"妖力(ようりょく)"を、皆さんに教えようと思います」


「先生。俺、妖力なんて持ってませーん」


教師の話が終わると直ぐに、調子にのった男子生徒が手を挙げて発言した。


そんな生徒にも教師は真面目に答える。


「いいえ。妖精と契約を交わした時点で私たち人間には新しい力…妖力が宿ります。使ってない、気付いていないだけで皆さんの中に確実にあります」


言い終えると教師は、ポケットの中から掌サイズの小石を取り出した。


「クイル」


そして教師は自身の主精を呼び出す。


クイルは直ぐに教師の側に現れた。


「しっかりと見ていてくださいね」


と言うと、石に意識を集中させた。


すると小石は教師の掌からスッと宙に浮いた。


「「「おお〜!」」」


普段どこでも目にするような妖力の行使だったが、生徒たちはそれが自分も使えるのだと思うと感動せずにはいられなかった。


「これを皆さんにやってもらいます」


教師は石を掌に下ろし、教卓に置いた。


「今のは妖精と契約をしている大人はよく使用するので、お家でも見ることができる力だと思います」


サファイアは身の回りに人間の大人がいないのであまり見ることはないが、両親のいる一般的な家ではよく見ることなのであろう。


教師は更に説明を続けた。


「これは妖精と力を合わせて安定した妖力を作り、皆さんがその力をコントロールして初めて使える技です。"elfing"をするどころか生活するにあたって最も重要な技ですので、進級テストまでに、絶対に身に付けましょう!」


教室中に教師の熱意が痛いくらいに伝わった。


そんな中、「先生、妖力は簡単に身に付く事ができるんですか?」と女子生徒が手を挙げて、質問した。


「コントロールが得意でない人はこれは困難な技になるでしょう。ですが全ては繋がり…重要なのは絆です。妖精との絆が深ければ深いほど、早く身に付くことでしょう」


そう教師は丁寧に説明した。


「そのコントロールはelfingのどのような時に役立つんですか?」


すると今度は紲が質問した。


「妖力のコントロールはelfingの試合中は何の抗力も発揮できません。戦うのは妖精であって人間ではないからです。

しかしコントロールできるようになる事で妖力が向上すると、人間のランクが上がります。その事により妖精の使用できる技の威力が増し、より闘いが容易になるでしょう。

この技を全員が成功させて、皆で進級しましょう!」


「「「はいっ!」」」


教師に負けず劣らず、生徒たちもやる気満々だった。


「それでは、中庭から掌サイズの石をひとつ拾ってきてください。10分後、教室に集合です」


教師がそう言うと生徒たちは一斉に立ち上がり、教室から出ていった。


サファイアも立ち上がり教室から出ようとする。すると、


「あ、サファイア!」


教師は出ていこうとしたサファイアを呼び止めた。


「…何ですか?」


サファイアは足を止め教室に残り、教師を見上げた。


「妖力をコントロールする事ができたら、もしかするとその創精も人間の言葉を発する事が可能になるかもしれませんよ」


教師のその言葉に、サファイアは足元を跳び跳ねるアイビーを見た。


「ビー?」


アイビーは自分の話をされていることに気付き、サファイアの顔を見た。


「…そうですか」


「そうなれば、サファイアもきっと皆に認めてもらえますよ」


「!?」


教師が最後に発したその言葉に、サファイアはドキリとした。


そして教師を怪訝そうに見る。


しかし教師は微笑むとサファイアの頭を撫で、「さぁ、石を取りに行ってきなさい」と中庭に行くことを促した。


「…はい」


サファイアは返事をするとアイビーを抱き抱え、軽くお辞儀をして教室を出た。


教室には教師が独り残った。



廊下に出てしばらく歩いたところでサファイアは立ち止まった。


「先生、気付いてるのかな?」


サファイアは気にしている様で、目線を教室の方に向けている。


「その様な口振りでしたね…」


ナディーも同じ様に目線を向けた。


「うん、驚いた。それにしてもアイビーが言葉を話す…か。想像したことないよ」


サファイアは目線をナディーに戻した。


「…そうですね」


ナディーもサファイアを見る。


「先生は私に期待しているみたいだけど…できるかな?」


「きっとサファイアならできますよ」


優しいナディーの声は、サファイアの不安を安心に替える。


「頑張りましょう、サファイア」とナディー。


「ビー!」


アイビーも応援してくれている様だ。


「…ん、やってみるよ」


それからサファイアは走って中庭に向かった。


ナディーは微笑み、サファイアの後について行った。

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